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ジャック=イヴ・クストー、 ルイ・マル監督『沈黙の世界』色彩豊かな海洋ドキュメンタリー


<作品情報>

1956年カンヌ映画祭でグラン・プリを獲得した、テクニカラー色彩による長篇記録映画である。この作品の監督ジャック・イヴ・クーストーはフランスの海軍大佐だが深海の魅力にとりつかれ一九四二年、工学技師エミール・ガニヤンの協力でアクアラング(潜水肺)を発明。海中の短篇映画にも手を染め、「漂流物」、「潜水手帖」の二作で夫々カンヌ映画祭の賞を得ている。彼の作品では前に「魚の散歩」が我国に紹介されたが、長篇ではこの作が初めて。製作に当り、クーストー他十四名の一行はカリプソ号に乗り地中海、紅海、印度洋、ペルシャ湾と航海を続け、撮影フィルムは延一方二千米。七十五米の深さまで撮影するのに成功している。監督はクーストーとルイ・マルの共同、撮影はエドモン・セシャン、水中撮影はクーストー、マル、フレデリック・デュマ、アルベエル・ファルコの協力。音楽はイヴ・ボードリエ。日本語版解説はNHKの河原武雄アナ。

1956年製作/フランス
原題:Le Monde du Silence
配給:東和
劇場公開日:1956年8月24日

<作品評価>

40点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆

<短評>

おいしい水
最初は当時こんな道具だったんだ、とかこれどうやって撮影したんだろうとかワクワクするけどだんだん飽きてきます。
作為があからさまで、もうちょっと上手くできなかったのかなと思います。
海洋ドキュメンタリーなら最近だと『オクトパスの神秘』は好きかどうかは置いといてすごくナチュラルで優しかったです。演出が上手いのだとヤコペッティの『世界残酷物語』とか一連のはやらせって分かってても面白いです。
本作はナチュラルで美しいものでも、やらせでも過剰で逆に面白いものでもないのです。
今の倫理観だとカメの扱いや終盤の大きな魚を閉じ込めるのとかいかがなものかと思うシーンが多すぎます。
クジラがスクリューに巻き込まれてケガしたのは仕方ないことで、そこにサメが集まってくるのは自然の摂理。そこに人の手が加わるべきではないと思います。
あまりにも恣意的で不自然な作品です。同年出品されていた黒澤明『生きものの記録』やサタジット・レイ『大地のうた』より優れているとはどうしても思えません。

吉原
1956年に撮られたということを考えると、「どうやって撮影したんだ?」と驚くような映像の連続でそれなりには楽しめます。
一応、作品にドラマ性を持たせるために嘘くさい展開を用意していますが、現在の倫理観と照らし合わせるとタブー視されてしまうのではと思ってしまいます…
船のスクリューが当たって、安楽死させるしかなかった鯨に群がるサメの大群に対して人間が攻撃を与えるのは明らかに不自然なシーンだし、大食いクエ?のユリシーズに対して蹴りをいれる行為も今となっては如何なものかと思う人が多いと思います。
1956年に撮られたということが良い方にも悪い方にも取ることが出来る稀有な作品でした。2024年現在の海洋ドキュメンタリーの方が現代人の思考にも合った内容を提供してくれるでしょうが、本作も資料として一見の価値はあると思います。

<おわりに>

 現代の倫理観からするとどうか…というのはありますが、資料として一見の価値がある作品です。

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