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ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』異例のヒットとなった話題作!


<作品情報>

カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色アクションエンタテインメント。奇想天外な設定で話題を呼んだ「スイス・アーミー・マン」の監督コンビのダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が手がけた。

経営するコインランドリーは破産寸前で、ボケているのに頑固な父親と、いつまでも反抗期が終わらない娘、優しいだけで頼りにならない夫に囲まれ、頭の痛い問題だらけのエヴリン。いっぱいっぱいの日々を送る彼女の前に、突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」という夫のウェイモンドが現れる。混乱するエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚きの使命を背負わせるウェイモンド。そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、ワケも分からずマルチバース(並行世界)に飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。

エヴリン役は「シャン・チー テン・リングスの伝説」「グリーン・デスティニー」で知られるミシェル・ヨー。1980年代に子役として「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「グーニーズ」などに出演して人気を博し、本作で20年ぶりにハリウッドの劇場公開映画に復帰を果たしたキー・ホイ・クァンが、夫のウェイモンドを演じて話題に。悪役ディアドラ役は「ハロウィン」シリーズのジェイミー・リー・カーティスが務めた。第95回アカデミー賞では同年度最多の10部門11ノミネートを果たし、作品、監督、脚本、主演女優、助演男優、助演女優、編集の7部門を受賞した。

2022年製作/139分/G/アメリカ
原題:Everything Everywhere All at Once
配給:ギャガ
劇場公開日:2023年3月3日

<作品評価>

90点(100点満点)
オススメ度 ★★★★★

<短評>

上村
ダニエルズやってくれた!ストーリーやジャケットだけだとおよそアカデミー賞受けするとは思わなかったです。でも中身は家族の話、しかも今の時代にようやく語られる意義がある!こりゃヒットしますわ。
まずは圧倒的な映像の力に魅了されます。マルチバースの一つ一つを華やかに作り込み、大胆な衣装とアクションが躍動する。映画に求めるものが全てあります。
全てを諦めたイヴリンは強さに居所を求める。しかしそれだけではいけなかったのです。優しさと寛容さ、これを見逃していました。すぐ側にいた夫が持っていたものなのにそれを蔑ろにしてきたのです。
イヴリンは本当の自分を取り戻しました。普通ならここで終わりそうなのにそうなりません。もう一歩あるのがスゴいです。
それで父との確執は解消しました。しかし娘との確執は解決しません。
優しさと寛容さを持っても他人に押し付けるだけではいけない。それではただの自己満足です。あえて一歩引いて娘をしっかり一人の大人として見る。そうすることで娘を取り戻すのです。あり得た自分、あの時こうしていれば、その後悔も全て自分の中にあります。
あらゆる可能性が自分にはあるのです。人生というものをこんなにも楽しく教えてくれた映画がこれまであったでしょうか。
アジア人、同性愛、フェチと全てを受け入れ包みます。今の時代を象徴する一作が誕生したと言っても過言ではないでしょう。

吉原
マルチバースを救うのは、夫や娘との関係やコインランドリー経営に問題を抱える中国系女性。MCUやDCEUなどのアメコミ映画で盛んに取り上げられているマルチバースという設定をA24が題材にしたと聞けば、興味を惹かれるのは至極当然。
アメコミ映画の中のマルチバースは基本、過去の映画に登場したキャラをサプライズとして登場させるために存在していますが、本作はマルチバースの自分を呼び出すことによって、多次元宇宙全体を救うという使い方をされており、物語の中で有効的にマルチバースが登場します。
死体に溜まった腐敗ガスでジェットスキーをする「スイス・アーミー・マン」のダニエルズというだけあって奇想天外で、時に下品なシーンも登場しますが、SFアクション映画としても、また家族映画としても素晴らしい一作となっています。
正直、エンタメ作品である本作が作品賞を受賞したと聞いたときは驚きでしたが、エンタメに留まることなく、現代らしく多様なファクターを詰め込んだ作風が受け入れられたのではないかなと思います。

<おわりに>

 A24作品として異例のヒットとなったアカデミー受賞作です。様々なジャンルを横断する演出手腕に感服です。

<私たちについて>

 映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


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