82−5.ハマスはイスラエルに「必要」な存在だった...
ワシは「ハマスはイスラエルが作った」空気のようにそう思っていたが、どこでインプットしたのか思い出せない。(;´Д`A
ふと、有名な話だったのでは?と思い検索したら出てきた。3271文字
ハマスはイスラエルに「必要」な存在だった...パレスチナ「75年間の歴史」で、紛争を基礎から理解する
ニューズウィーク日本版
イスラエルがハマスを「誕生させた」思惑
70年代前半にはイスラエルの占領に対する激しい抵抗運動が続いた。これに対し、後にイスラエル首相となるアリエル・シャロン南部方面軍司令官は建物の密集したガザをブルドーザーで破壊して回り、数百人のパレスチナ人を殺害し、難民キャンプを拠点にしていた過激派のパレスチナ・ゲリラを粉砕した。
イスラエルはムスリム(イスラム教徒)の宗教的アイデンティティーをパレスチナ人のナショナリズム以下の脅威とみて、イスラム組織ムスリム同胞団のガザ支部を支援した。87年末に始まった第1次インティファーダまでに、ムスリム同胞団がPLO(パレスチナ解放機構)の主流派ファタハに対抗するハマス(正式名イスラム抵抗運動)を創設できたのも、この政策のおかげだった。
イスラエルがハマスの誕生に一役買ったと聞くと、驚くかも知れない。しかし、今回のハマスの攻撃以前にベンヤミン・ネタニヤフ首相らが公然と述べていた言葉を知れば、それほど意外には感じられなくなるだろう。それは、
◉「真の敵と見なすべきはハマスよりパレスチナ自治政府である」
◉「自治政府はパレスチナ人ナショナリズムを強く抱いている」
◉「イスラエルと別にパレスチナ国家を樹立することを目指している」
それに対し、
⭕️「ハマスは、自治政府の政治的立場を脅かす存在として有益だ」いう趣旨の発言だ。
1993年9月でのオスロ合意は、イスラエルがそれまでの戦略を転換したものと言えた。この合意は、イスラエル軍が占領地のヨルダン川西岸とガザ地区から撤退し、パレスチナ側が暫定的な自治を始めるものとした。
その際、イスラエル政府は、受動的に見えていたムスリム同胞団ではなく、野心的なPLOのリーダーたちを自治政府の担い手として承認し、頼りにすることにした。イスラエル政府としては、PLOに自治を認めれば、パレスチナ大衆の反イスラエル感情を抑え込んでくれると期待していた。
オスロ合意の後、1995年11月にはオスロ合意に署名したイスラエルのイツハク・ラビン首相(当時)が和平反対派により暗殺され、
2000年に第2次インティファーダが始まって暴力が爆発的に増加した。
これにより、交渉を通じてヨルダン川西岸とガザにパレスチナ国家を建設し、オスロ合意で話された「2国家共存」を実現できる可能性は完全に消えた。
監獄の「看守」と「囚人組織」
2002年には、イスラエル軍がヨルダン川西岸ラマラに侵攻して自治政府議長府を包囲し、アラファトを軟禁状態に置いた(アラファトは04年に、移送先のフランスで死去)。
イスラエル政府は2005年、貧困にあえぎ、イスラエルに敵意を抱くガザの膨大な数のパレスチナ人を支配下に置くことの負担を取り除くために、ガザから軍の部隊と8500人の入植者を引き揚げた。この措置には、ガザとヨルダン川西岸を切り離すという狙いもあった。
2006年1月に実施されたパレスチナの総選挙でハマスが勝利すると、(中略)ハマスはファタハの部隊を破ってガザを制圧し、同地区での政治的優位を確かなものにした。
それを受けて、イスラエルはガザを封鎖し、イスラエルとの間での人やモノの出入りを厳しく制約した。
ガザは監獄になった。ここで暮らす人たちは、食料、水、電気、交易、郵便、漁業へのアクセス、医療、外界との接触など全てを”イスラエルに依存せざるを得なくなった”。
イスラエル政府は、ハマスを監獄の囚人組織のように扱い始めた。そしてこの監獄ガザの囚人たち──裁判も経ずに、全員が終身刑を宣告されているに等しい者たち──に、イスラエルに害を及ぼすことを防ぐために、ハマスに一定の役割を期待するようになった。
このような関係は、イスラエルがガザに繰り返し攻撃を加えることにより強化されてきた。イスラエルは、08~09年に23日間、12年に8日間、14年に50日間、21年に11日間軍事行動を行い、08年から今年9月までの間に合計で6400人以上のパレスチナ人を殺害した。
その一方で、このような対ハマスの軍事行動 ──「芝刈り」とイスラエル側は呼ぶ── の間の時期には、イスラエル政府とハマスはそれなりに協力し合い、人道上の惨事を回避し、ハマス幹部に給料を支払い、イスラム聖戦と過激派組織「イスラム国」(IS)を抑え込んできた。
刑務所ではたいてい、看守は刑務所の管理に役立つ囚人組織と手を組むものだ。
自国領土だからできたこと
イスラエルの首相らがパレスチナ自治政府よりハマスに好意的な発言を述べていることから、最近のネタニヤフ政権がガザ統治について、過去のどの政権よりもハマスに依存していることが分かる。
「鉄のドーム」による対ミサイル防衛と、多額の予算を投じた地下防護壁によって、ハマスがロケット弾を発射したり、トンネルを掘ってイスラエルを攻撃したりする力をほぼ奪ったネタニヤフは、ハマスを「手なずけた」というイメージを作り上げた。
イスラエル紙ハーレツによると、ネタニヤフは19年3月の国会議員の会合で、
⭕️「パレスチナ国家の樹立を阻止したい者は、ハマスの強化やハマスへの送金を支持しなければならない」と述べた。
⭕️「これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させるという我々の戦略の一部だ」と述べた。
現実を見れば、ガザはイスラエルの問題だ。それはガザがイスラエルの一部だからだ。大半の政府やメディアはこの戦いを国家間の戦争だと言うが、そうではない。
この攻撃に対するイスラエルの最初の対応は、ガザへの電気、食料、医薬品、水などの供給を遮断するというものだった。どんな国も他国にそのようなことはできないが、自らが取り囲んで支配している領域に対してはできる。
イスラエルにガザは必要か
ガザを「超過密なイスラエルの監獄」とする見方をとっぴだと決め付ける前に、イスラエルの実際の刑務所がどうなっているかを考えてみよう。
収容者の大半がパレスチナ人である刑務所では、看守ではなくパレスチナの囚人組織が仕切っている。イスラエルの刑事司法制度に詳しい人なら、これが事実だと知っている。ハマスが内政を支配するガザ地区として知られる約365平方キロの監獄も、同様にイスラエル国内にある。
終わりなきパレスチナ紛争の歴史
イアン・ラスティック(ペンシルベニア大学名誉教授〔中東政治〕)
⭕️元記事と違い、分かりやすかったと思った人はなげ銭ください。
おわり
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