記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

【劇場版ウルトラマンブレーザー大怪獣首都激突!】感想/終わらない物語

数日前、劇場版ウルトラマンブレーザーを観てきました!
TV本編よりスケールアップしたブレーザーとアースガロンの激闘!
めっちゃ強い怪獣! 派手に壊れる名所建造物!!

タイトル通りのウルトラ大怪獣映画といった趣で、とても楽しかったです。この記事では、そんな劇場版ブレーザーの感想をさっくりと書いていきます。ネタバレも含みますから、まだ観てない方は観てからね!!


ウルトラヒーローズEXPO2024で展示されていたゴンギルガンと議事堂


大迫力の怪獣戦

まず全編通して、怪獣特撮としての満足度が高かったですね!
序盤のズグガン/タガヌラー戦からして、ガンガンに火力を出していくアースガロンと小型怪獣を素早く始末する地上部隊、「なんだこれは感」のある登場をするブレーザーさんと続き、最後は同時に大技を撃って2体の怪獣を撃破!! 一連の流れがとても楽しくて、盛り上がりました。

物陰にひっそり隠れて登場するブレーザーさんのシーンは、『ウルトラマンブレーザー』というキャラクターの強みでもありますよね。予想外の行動でこちらを驚かせ楽しませてくれるんだけど、それはブレーザーさんが本気で怪獣退治に向き合った結果出てくる作戦だったり行動だったりする。愉快なシーンなんだけど、「ふざけて」はいない。絵面が本当に面白くなってるけど、ブレーザーは真面目。

テレビ本編だと「敵怪獣の撃破」という面ではブレーザーさんに譲りがちだったアースガロンが、今回は初っ端からブレーザーさんと同時撃破を見せつけてくれるのも嬉しかった。本編だと上層部の意向と現場隊員の意識のズレが描かれもしたけど、今の彼らは背中を預け合える対等な相棒なのだ、というのを改めてハッキリ示してくれたように思えます。ブレーザーさんのあのポーズを一緒にやろうとして倒れちゃうアー君も可愛かった……

ダムノー星人に関して

登場した瞬間に「ああ……」ってなる存在でしたね。
マブセ博士と息子のすれ違いと、そこから生まれてしまった狂言宇宙人。
『ウルトラマンブレーザー』が父を主人公とした、コミュニケーションをテーマとする作品である以上、その最後の敵は父と子のディスコミュニケーションの象徴、というのも頷ける話。

本当は父親にもっとちゃんと自分を見てもらいたいだけなのに、「お父さんは仕事の方が大事」「そうさせたのは大人の世界そのもの」と自棄になってむやみやたらに八つ当たりをしてしまう。一方でお父さんの方も、息子への愛情を物品でしか示せず、ゴンギルガンが生まれるに至っても彼がどうして傷ついてしまったのか理解できずにいる。

マブセ博士は父親としてはやっぱりダメなんだけど、息子との時間が作れなくて困っていたゲント隊長が物語の中心にいることで、「父親には父親で上手く出来ない理由があるんだよ(でも愛してないわけじゃないよ)」というのをすんなり理解できるようにはなっていたと思います。ダメではあるんだけど。

他方で、かなり度を越した八つ当たりになってしまっている息子のユウキ君に対して、「父親と向き合えなかった」エミ隊員が一定の理解を示すところも上手い部分でしたね。ユウキ君は自分の寂しい気持ちをコントロール出来なくなっているだけ。それは大人がきちんと止めてあげないといけないことなのだ、と示すことで作劇上の悪役は作らない。

エミ隊員、本編では父親の影を追い続ける子どもだったんですよね。
父親であるゲントと、父の足跡を追うエミ。ウルトラマンブレーザーはそういう意味でも「父と子の物語」であった、と改めて強調する一幕だったように思います。

ただ、「お前、産業スパイだったのか!?」は唐突すぎない??
狂言宇宙人の大暴れ中に無関係産業スパイがPOPして、それを見たユウキ君が「大人はいつもこれだ!!!」になるの、強引な大事故が過ぎる。そりゃあそういう世界もあるけど、一般的な大人の平均値からはだいぶズレてるからねユウキ君!?(でも、それを冷静に受け止められないくらい傷ついてはいたんだと思う)

大人顔負けの技術力を持っているのに、世界に対する想像力はまだまだ不足している。そういうアンバランスさが「子どもらしさ」として描かれている側面があったかもなぁ、と思います。思えば、母親の不在にやたら強く反応してしまうジュンもそういう描写だったのかも。ゲントからすれば「サトコにだって予定くらいあるだろ……」くらいのテンションだけど、ゲントやサトコをお父さん・お母さんと認識しているジュンには、そうでない両親の在り様が上手く想像できない。

結局、マブセ博士は周りから言われてやっと息子に寂しい思いをさせていた事を自覚して、自分を改めて向き合うことを誓う。冷静になったユウキ君は、自分の寂しい思いと尊敬する父親像とを切り分けられて、「こんなことがしたかったわけじゃない」とは気づく。その過程に明白なドラマというか、起点となる描写が無いのは物足りない部分かもだけど、一方で2人の関係を「歩み寄りの第一歩」で済ませるのは『ブレーザー』らしさだとも思いました。それで済ませて「良かったな~」で終わらせるには、流石にユウキ君が出した被害がデッカすぎる気もするんですが……ゴンギルガンの影響、では済まない部分も多そうですし、そこはもうちょっとフォローがあった方が素直に喜べた部分だったかも。

横峯教授を野に放った防衛隊なので、「まだ12歳の子どもにセキュリティ破られたとか公表出来るわけないだろ……」と事件を闇に葬るのは目に見えているんですが、お父さんのキャリアはズタボロだと思うんですよね。
「全部ダムノー星人の仕業で、ダムドキシンに関する風評もダムノー星人の策略です」とか言い出んだろうけど、防衛隊は。

ゴンギルガンに関して

強かったね~!!
よもやダムノー星人によるピタゴラ大事故偶発生成怪獣とは思ってなかったんですが、体の各所に元となったであろう怪獣の要素が垣間見えたりと、妖骸魔獣の名に相応しい強力な怪獣だったと思います。

なんとなく、外見見た時には頭部の触手が耳かなにかに見えてたんですよね。うさ耳。さすがに耳じゃないとしても、頭から生えているという印象でした。でも作中の台詞を聴いてからよく見ると、確かにこれ目元から生えてる触手なんですね。

ユウキ君が取り込まれてから生まれた、目元から伸びるもの……つまりこれはユウキ君の涙!!とか思っていたら「今からあの触手を引きちぎります!!」などと宣言されて、あっ涙をぬぐうとかそういう話じゃないんだな……と居住まいを正しました。引きちぎります。

「キライダァァァ!!」のボイスが迫力のある痛々しさで、聴いていてやや苦しくなる面もありました。その一方で、圧倒的な負の感情から生まれた怪獣が嫌いなものをぶち壊しまくるというマイナスな爽快感もそこにはあり。『電光超人グリッドマン』で武史が生み出した怪獣が暴れて感じる心地よさと同質だなぁ、これは。

国会議事堂がめちゃくちゃに破壊されていくのも、丁寧に組み上げたブロックを思うさま崩していく爽快感もあり。見知った名所がぶっ壊れていくことへの楽しさとは、いったいどうして生まれるんでしょう……?

序盤のアースガロンがヤスノブ操縦の射撃特化だったのに対して、(作戦上足止めが有効な)ゴンギルガン戦ではCQCモード特化なアンリ隊員操縦になる流れも好きで、大暴れするゴンギルガンにめためたにやられたアースガロンが、副兵装をすべて下して最初の状態でブレーザーと共に挑みかかる流れも……最高……

アースファイアとブレーザー光線の同時射撃での撃破も、劇場版らしい派手で豪華なボーナスポイント!って感じで大好きでした。

その他、細かく好きな描写

まず、ブレーザーさんの主張が激しくなっているのが好きです。
家で家事をしてるゲント隊長に対して、急に熱くなって「怪獣出たよゲント!!!!」と伝えるブレーザーさんとか、「こういう細かい作戦はウルトラマンには無理」と言い出すゲント隊長に文句を言うように熱くなるブレーザーさんとか。「やればできるが!!??」という圧力を感じた。

テレビ本編だと、多分ブレーザーさん側もゲントへの干渉は恐る恐るやってた部分があるんでしょうね。ゲントがブレーザーの事を分からないのと同じくらいには、ブレーザーもゲントの事を理解しきれていない。でも本編を通して相棒としての絆を認識できたから、前よりも遠慮なく色々伝えるようになっている。と感じました。

ゲント隊長が「子どもはすぐ大きくなるものですから……」といった話をした際に、マブセ博士が「まさか急に50mになるなんて思わないじゃないですか!!!」と言っている場面も好きです。そういう話をしているんじゃないんだけど、まぁ急に大暴れして怪獣と一体化するとは思わないからね……逆に、立派になって急に50m級の光の巨人になる子どももいるんだけど……(劇場版ウルトラマンX)

アー君は全体的にめっちゃ可愛かったです。
序盤の倒れちゃう部分もそうなんですが、クライマックス後に電源が切れた時の「お疲れさまでした」も好き。アー君、感情らしきものはあるけど表現としてはかなり平坦なんですよね。だから(人間でいうと)気絶するような場面でも、なんか平然とした態度を取る。そこが妙に可愛いというか、アー君の味なんだなぁと再認識しました。仮に自動操縦になって敵を倒す手段がそれしかなさそうだなぁとなったら「では自爆しますね。修理お願いします」とかサラッと言いそうな良さがある。

ラストの平和すぎる焼き肉のシーンも嬉しい。
ゲント隊長には、常に「仕事と家庭の両立が難しい」という問題があって、今作では両立に大失敗した親子が出てくる。そんな映画のラストに、職場の人間と家庭で楽しく焼き肉を食べているシーンを作る。まぁいつもいつもこうとは行かないだろうけど、「ゲントはちゃんと両方を大事にするし、それはある程度上手くいく」と予感させてくれている気がします。
「隊長!」「隊長!」と呼ばれてるゲント隊長が奥さんと息子にどう説明してるのかは気になるけど……(大体察されてるとはいえ、スカードの隊長だということは機密事項だしね)まぁ、上手くやったんでしょう!
ゲント隊長、お子さんおめでとうございます!!


終わらない物語

さておき、これでウルトラマンブレーザーの物語は(いったん)最後になるのですが、だからといって「終わり」感は全くありませんでしたね。

ゲントとブレーザーが物語の上の回帰不能点を超える事はついぞなく、最終回や劇場版を終えてなお、「あの世界では今後もスカードとブレーザーが怪獣退治に勤しむのだなぁ」と思わせる終わりになった。これはちょっと驚きなポイントかもな、と思います。番組が終わるなら、ヒーローの活躍にもひと段落はつく……という固定観念があったから。

テレビ本編では一応V99関連の物語があり、ゲント隊長の体調問題もあり……という感じでしたが、ゲント隊長の体調はウルトラセブンほど深刻なものではなく、休みがあれば何とかなる感じのもの。V99とブレーザーには関連性が殆どないとくれば、終わらせる必要もないのでしょう。

もっとハッキリした区切りがあれば、確かに物語にオチがついた感じもするし、さっぱりして気持ちいい。でも一方で、『ブレーザー』が掲げたテーマは「コミュニケーション」でした。コミュニケーションというのは、ヒトが生きている限りは続けていくもの。「ここまでやったから終わり」と区切るのは、なにか違うのかもしれません。

『ブレーザー』の世界は今後も続き、ゲント隊長とブレーザーのコミュニケーションもこの先で進行していき、いずれはブレーザーがアマゾン並みに流暢に喋るようになる日がくるのかもしれない。そんな風に想像の余地を残して、「とりあえずここまで」な区切りにするのは、ある意味で「コミュニケーション」をテーマとした『ブレーザー』らしい締めくくりかもしれません。

ゲント隊長役を演じた蕨野友也さんは、イベントで「みんなが望めば、ブレーザーはまた帰ってきます。これは本当の事です」と強く述べていました。最初はそれも「○○周年記念とかそういう話かな」くらいに感じていたのですが、そうでなくて『ブレーザー』はいつでもシーズン2とか3とかやれるんだよという、具体的な意味での「帰ってくる」だったのかな、と思います。本当に帰って来られる余地があるんだぁ。

一方で、ニュージェネのウルトラマンに限って見てみると、本当の意味で「エンドマークを迎えた」物語ってどれだけあるだろう? とも考えてしまいました。もちろん、どの作品もテレビシリーズとしてはハッキリした終わりがある。そして新たな道に向かっている。だけど彼らも、「ウルトラマンとして戦い続ける」物語を終わらせられてはいないのかな、と。

舞台での出演はもちろん、『ウルトラギャラクシーファイト』のような大きな映像作品でも彼らは戦いを続けていく。街を妹に任せて夢に向かっていった湊兄弟も、必要とあらばウルトラマンになって戦いにいく。

『タイガ』の工藤ヒロユキのように、ウルトラマンと離れて自らの力で歩み出す主人公もいるけれど……あまりに綺麗に別の道を歩き始めてしまうと、その後の作品には登場し辛い。そこに複雑な思いを抱いてしまうファンもいるでしょう(だからツブコンのTHELIVE良かったよね)。

そういう事を考えると、「そもそもハッキリとした終わりはない」という描き方も、それはそれで良いものなのかも? と思います。

ただ、『ウルトラマンブレーザー』って現時点で徹底的に他のウルトラマンとの繋がりを作ってないんですよね。THELIVEのような舞台作品でさえそうなのだから、「終わらない」ブレーザーの物語が今後どのように扱われていくのかは、本当に未知数だと思います。流石に……流石に来年のウルサマとかでは共演あると思うんですけど……「物語が続いている限り、世界観に影響する共演は行わない」という方針だった場合は……無しなのでは……?

面白かった『ウルトラマンブレーザー』

ともあれ、『ウルトラマンブレーザー』本当に面白かったです!

特別試写会の際、スクリーンで目の当たりにしたOPの衝撃。
次々と現れる知らない怪獣と、見たことのないウルトラマンが活躍する、けれど確かに『ウルトラマン』だったブレーザー。

今回、劇場版でもOPが流れた時、私はブレーザーを最初に見たその日の事を思い出して感無量でした。あの日に受けた衝撃。さらに劇場で繰り出される、その先にいた怪獣たちの姿。ブレーザーを追ってきた思い出がよみがえるようでした。

みんなが望めば、ブレーザーはまた帰ってくる。
それがどういう形になるかは分からないにしろ、彼らとはこれっきりさようなら、ということにはならないでしょう。また改めて、新たな物語と共に彼らの活躍が見られる日を信じています。
ウルトラマンブレーザー、ありがとう!



……ところで入場特典が終了しててもらえなかったんだけど、特典ボイスドラマの前編って今後どういう扱いになるかな!!??


【関連記事】


この記事が参加している募集

映画感想文

サポートしていただくと、とても喜びます! 更に文章排出力が強化される可能性が高いです!