行政評価関係の論文紹介

自治体PDCAサイクルの有効性に関する研究(2020)

 行政評価の評価結果がその後の予算要求において事業担当者にどのような影響を及ぼすかを茨城県常総市において実証研究したものです。論文のURL(P33-57)直にダウンロードが行われるリンクです

 行政評価の導入が予算全体にどのような影響を与えたかについては、以前にも紹介しましたが、今回のは、個別事業の予算要求にまで踏み込んでいる研究です。

1 研究結果の要点
・行政評価の結果は事業担当者に心理的・行動的影響力を一定程度に有し、次年度予算要求行動に影響を及ぼしうる。
・他部署からのチェック機能が働くことで、有効な業績評価になりうる。
・すべての事務事業に対して一律に行政評価の効果が働くわけではない。

2 研究の概要
・茨城県常総市の平成24年度事業の評価結果が26年度予算要求に及ぼした影響を調査した。
・予算要求に事業実施部局の裁量が大きそうな事業が対象(88事業)
・88事業を行政評価の対象となった群(44事業)とならなかった群(44事業)に分類して比較
・大部分の職員は調査が行われていることを知らないブラインド化調査

3 常総市の行政評価スケジュールと特徴
・担当部局以外によるクロス評価及び外部評価を実施
・10月までに評価が完了するので、予算要求への反映が可能

4 評価結果が予算要求に及ぼした影響
(1)予算要求時に評価結果を利用した割合
 評価票提出後、評価結果を確認したかについては、44事業中37事業で確認した、逆に言えば7事業は結果を見もしなかったということになります。
 次に、予算要求に当たり評価結果を利用したかについては、44事業中26事業(59%)で要求にあたり評価結果を利用した、という結果が出ています。
 この数字をどう評価するのは難しいところですが、確認率が100%でなかったというのは、評価の恒例行事化を示す数字と思えます。一方、行政評価の課題として”予算への反映”が常に挙げられていることを考えると、結果の利用という面では意外と高い値なのでは?というのが個人的な感想です。
(2)具体的にどの段階での評価結果を利用したか(表1の①~⑥)

 ここで注目できるのが、④が19/26(73%)を占めていることです。論文中では、他部局の権力者からの評価が最もチェック機能を発揮したとしています。
(3)予算要求額に及ぼした影響
 常総市の評価シートは下の通りです。これが②,③,④,⑥の各段階で行われます。最終評価で”拡充”の判定を受けた割合が高い群ほど増額した予算を要求した、という結果が出ています。又、行政評価の対象となった群は要求のバリエーションが大きい(一律で予算要求をしていない)という結果が出ています。

5 表2についての感想(ここからは、私(全員出発)の分析及び感想です。)
 論文では、”庁内の部外者の複眼的チェック機能”が指摘されていましたが、個人的には、もう少し一般化した仮説を建てたいと思います。
A 事業担当者は客観的な評価結果を求めている。
B 自らよりも識見又は権力を有する者の評価結果は影響力を有する。
 自分の評価結果が第三者から見て妥当なものかどうかを気にするのは、ごく普通の感情だと思います。ただし、第三者なら誰でも良いかと言えば、そんなことはないというのが仮説Bです。課長補佐級による評価ではなく他部局長からの評価の方が影響力を有している理由としては、次のようなことが考えられます。
a 部局長という自治体職員キャリアの中で最も評価されてきた者が到達できる地位にある者が下した評価であること
b 部局長には、予算編成の最高責任者である総務部長も含まれていること
 a,bどちらの要素が強いのかは断定できませんが、補佐級にもやはり予算編成担当課の人(現実にはこちらの方が怖そう)が含まれているでしょうから、aの要素が若干強いのかなと推測します。