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「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その2)

 今回は滋賀県のパブリックコメント手続きにおいて提出された意見の取り扱い状況やビジョンにおける真のテーマである交通税導入手続きにおける位置づけを見てみます。 1 提出された意見の内容と県の対応 (1) 県民意見  県民意見は全部で35件提出されました。(ビジョンに関係ない意見5を除く)詳しい内容はこちらから ア 県が進めようとする施策方向に賛同する意見 11件 イ 賛否に関わらない文章表現上の意見     4件 ウ 県が進めようとする施策方向に反対の意見  20件 エ そ

    • 「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その1)

       現在、国及び地方自治体の多くで行政計画や法令の策定にあたって、パブリックコメントの実施を義務付けています。滋賀県の地域交通に関する行政計画である「滋賀地域交通ビジョン」の策定過程においても、令和5年12月末から約1ケ月に渡り意見募集が行われました。どんな意見が提出され、計画にどのように反映されたかを検証してみます。その前段として、パブリックコメント制度について、意義や制度的位置付けを整理してみます。 ※ 以降は基本的に地方自治体におけるパブリックコメント制度に対するものです

      • 宿泊税は観光振興のための特定財源か?

         現在、各地で導入されている(つつある)宿泊税はその多くが法定外目的税となっています。  東京都では宿泊税を以下のように説明しています。 「宿泊税の税収は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てられます。」  他の自治体でも、宿泊税の使途について同じように説明しています。(例:京都市・福岡市)  これを財政学的に言うと、観光振興のための特定財源(予め使途が決まったもの)ということになります。しかし、観光振興費全体は宿泊税額より圧倒的に巨額

        • 宿泊税から考える租税の外部効果

           宿泊(ホテル)税は、現在、東京都、大阪府、福岡県(福岡市・北九州市)、京都市、金沢市、俱知安町、長崎市の7(9)自治体で課税されていて、宮城県(仙台市)や千葉県(浦安市)などで導入に向けた検討や手続きが進んでいます。  現行の宿泊税は税区分的には、”法定外目的税”(地方税法に定めがなく、特定の使途のために徴集される税金)になりますが、一般の地方税と違い、課税地に住所や事業所を有しない人や法人に対して課税されるのが特徴です。  このように地方政府が非居住者に租税負担を転嫁する

        「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その2)

          地方交付税入門-番外-(地方交付税の闇)

           地方交付税については研究者から様々な問題点が指摘されています。私は専門家ではありませんので、ごく一部しか取り上げることができないと思いますが、そのいくつかを紹介してみます。なお、紹介する論文の中には、後年にその内容を反駁されているものもあるかもしれませんが、そうしたことまで追い切れていませんので承知しておいてください。又、財政学者は地方交付税に厳しい財務省寄りの立場の人が多いので、そこも留意してください。 1 無駄遣いを促す交付税  地方交付税が財源保障を行っているため

          地方交付税入門-番外-(地方交付税の闇)

          地方交付税入門-その5-(特別地方交付税、地方財政計画、交付税の歴史)

           今回は特別地方交付税、地方財政計画、地方交付税の歴史についてです。 1 特別地方交付税  交付税の総額のうち”原則として”6%が「特別地方交付税」に充てられています。(当初の予定では平成27年度まに4%に縮減される予定でしたが東日本大震災対応を口実に中止されています。)  普通交付税が財源不足額に対して交付されるのに対して、特別交付税は「特別の財政需要」に対して配分されます。その対象は「特別交付税に関する省令」で示されており、大別すると下記の通りです。なお、普通交付税と

          地方交付税入門-その5-(特別地方交付税、地方財政計画、交付税の歴史)

          地方交付税入門-その4-(基準財政需要額その2)

           今回は「包括算定経費」と「いわゆる交付税措置」を中心に説明します。 1 包括算定経費とは  包括算定経費は、人口と面積に一定の補正を行って算定される経費です。これは平成19年度から導入されたもので、いわゆる「三位一体」改革の成果の一つです。それまで基準財政需要額はすべて個別算定経費でした。  このことには、次のような批判がありました ア 算定方法が複雑すぎる イ 算定過程がブラックボックス化しており、本当に衡平な算定がされているかが不明 ウ 地方公共団体が予算を組むとき

          地方交付税入門-その4-(基準財政需要額その2)

          地方交付税入門-その3-(基準財政需要額その1)

           今回と次回の2回で「基準財政需要額」について説明します。今回はその中の「個別算定経費」を特に解説します。  最初におさらいしておくと、「基準財政需要額」は各地方公共団体がナショナルスタンダードの支出を行った場合にどの程度の歳出額となるかを可視化するためのモデルです。 1 基準財政収需要額の計算方法  「基準財政需要額」=「各行政項目ごとの基準財政需要額の合算額」となります。行政項目がどういう構成になっているかは下表のとおりです。細かい内訳はこちらを参照してください。各行

          地方交付税入門-その3-(基準財政需要額その1)

          地方交付税入門-その2-(基準財政収入額と留保財源)

           今回は「基準財政収入額」と「留保財源」について説明します。  一応、おさらいしておくと、「基準財政収入額」は地方公共団体の実際の予算とは無関係に、各地方公共団体が標準的な歳入努力を行った場合にどの程度の税収が得られるかを可視化するためのモデルです。 1 「基準財政収入額」の計算方法  「基準財政収入額」=「標準的な地方税収入×75%(算入率)」+「地方譲与税等×100%」となります。話を簡単にするために今回は「地方譲与税等×100%」は考えないことにします。 ☆ 基準財

          地方交付税入門-その2-(基準財政収入額と留保財源)

          地方交付税入門-その1-(概説)

           減税新聞に投稿したものの再編集版です。地方公務員としての一般知識と解説本を読んで得た知識に基づいて書いたものです。大きな間違いはないと思いますが、誤りがあった場合はお知らせください。  なお、地方交付税には「普通交付税」と「特別交付税」がありますが、話をわかりやすくするため「普通交付税」に絞って解説していきます。 1 地方交付税が創設された背景  国と地方自治体、各地方自治体間には以下に挙げるような財政・自然環境上の不均衡・不均一があります。 ア 国と地方における財源

          地方交付税入門-その1-(概説)

          法人への課税は誰が支払うのか(法人税は所得税の前取り)(税の帰着(転嫁))

           子育て支援金500円弱の算数をやってみて、こども家庭庁(実質上は厚生労働省)は事業主負担分を国民負担と言わないようにしていることが改めて確認できました。これは「数字を小さくみせようとその場しのぎでやっている」ではなく、厚生労働省の伝統的な立場から主張されていることのようです。「第4回社会保障の教育推進に関する検討会資料」(社会保障の正確な理解についての1つのケーススタディ ~社会保障制度の“世代間格差”に関する論点~)  このことを題材に財政学の基本的な内容について少し話し

          法人への課税は誰が支払うのか(法人税は所得税の前取り)(税の帰着(転嫁))

          「国訴」-規制緩和に立ち上がった江戸後期の百姓達-

           ”国訴”と言っても、国を相手に訴えるという意味ではありません。中世の”国一揆”と同じく「一国(旧国)全体レベルで共同して行われた訴願」という意味です。  又、江戸時代の”百姓”とは必ずしも農民を意味するものでなく、「農村に住む人」ということを意味します。従って、その中には農村で商工業を営む人たちも含まれます。訴願の主力となったのは富農とこうした人たちです。 1 田沼政治による株仲間の強化  田沼意次は商業に着目して幕府財政の強化を図った。一部には、日本における資本主義の

          「国訴」-規制緩和に立ち上がった江戸後期の百姓達-

          ”運脚”奈良時代のインボイスに苦しんだ庶民と頭を痛めた政治家(徴税費と納税協力費)

          1 徴税費(徴税コスト)  財政学で学ぶ用語に”徴税費”というものがあります。コトバンクでは「租税を徴収するための経費をいう」と記載されています。国税庁HPでは「人件費、旅費、物件費等税務の執行に要する一切の費用」となっています。そして、その金額は平成30年度において100円当1.22円となっています。(国税庁HP) と、ここまで書いてきましたが、ある疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 「納める側が払う費用はどうなっているんだ???」  実のところ、

          ”運脚”奈良時代のインボイスに苦しんだ庶民と頭を痛めた政治家(徴税費と納税協力費)

          静岡県の事務事業評価シートの公開状況マップ(R5.12.15)

          1 前回(8月)との変更点 ・菊川市 レベル2→5(新たに事務事業評価を公開) ・焼津市 レベル4→5(施策との体系性が確認できる項目を発見) ・牧之原市 レベル1→2(事務事業について公開しているHPを発見) ・長泉町 レベル1→3(色塗り忘れ) 2 静岡県内において確認できた動き ・菊川市が新たに事務事業評価を公開(菊川市HP)  菊川市の行政評価については、こちらの記事にまとめました。 ・静岡市で指標等の見直しを実施  外部評価の実施を取り止めて、内部チェックを充実

          静岡県の事務事業評価シートの公開状況マップ(R5.12.15)

          裏作への課税は道理に反する-文永の田麦課税禁止令-

           鎌倉幕府は正統性(legitimacy)に欠けた分、正当性(rightness)を意識して真面目に政治を行ったことで知られます。また、その判断はその後に続く武家政権において先例とされました。今回は、そんな鎌倉幕府らしい判断のお話です。  文永元年(1264)、備前・備後(今の岡山県東部と広島県東部)に鎌倉幕府から命令が発せられました。 「諸百奴田稲ヲ刈取ルノ後麦フ其地二蒔キ田麦卜号ス,領主時其所当フ徴取ス,租税法量然ル可ンヤ, 宜ク備前備後両国ノ家人等二令シテ自今以後之

          裏作への課税は道理に反する-文永の田麦課税禁止令-

          岸田政権による増税まとめ

          合計37件+5件 10/20/17:30 自動車関係を追加 10/20/20:20 酒税関係を追加 10/22/13:30 給与税(社会保険料関係)追加 10/25/17:20 給与税(国保関係)追加 11/10/21:00 子育て支援金他追加 02/02/21:00 子育て支援金具体化+給与税(雇用保険)追加 04/02/20:45 R6改正の内、住宅ローン関係を追加 A 既に実施したもの1 退職金特例縮小 令和4年1月1日以降に勤続年数5年以下の法人役員等以外が受け取

          岸田政権による増税まとめ