裏作への課税は道理に反する-文永の田麦課税禁止令-
鎌倉幕府は正統性(legitimacy)に欠けた分、正当性(rightness)を意識して真面目に政治を行ったことで知られます。また、その判断はその後に続く武家政権において先例とされました。今回は、そんな鎌倉幕府らしい判断のお話です。
文永元年(1264)、備前・備後(今の岡山県東部と広島県東部)に鎌倉幕府から命令が発せられました。
「諸百奴田稲ヲ刈取ルノ後麦フ其地二蒔キ田麦卜号ス,領主時其所当フ徴取ス,租税法量然ル可ンヤ, 宜ク備前備後両国ノ家人等二令シテ自今以後之