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第63回MMS(2013/08/23対談)「プラスチック試作で、メイカーズの強力な味方!」株式会社テクノラボ 代表取締役 林光邦さま

本記事は2013年に対談したものです。情報はその当時のものですので、ご了承ください。

MMS本編

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enmono 本日は、株式会社テクノラボの林社長にご出演いただきます。テクノラボさんでは、どういったお仕事をされているのでしょうか?

林 仕事内容は大きく分けると三つあり、デザインや構想の提案から始まります。次に、設計と試作をします。私どものお客様は、図面を読めないお客様がほとんどです。設計の承認は図面ではなく、試作の造形モデルで承認をしていただいています。承認後、金型を製作して量産します。

enmono デザインから生産まで受けていらっしゃるのですね。

林 今、日本でモノを作るとなると少量です。小量の場合、1個あたりの値段を考えると初期費用にお金をかけられません。そのためには、初期費用の中で一番ウェイトを占める金型のコストをどうやって圧縮するかという話になります。デザインから入っていないと、金型費って削減できないんですよ。部品点数も増えるし形状も複雑で金型費がかかってしまうデザインに決まった後では、コストダウンができない。ですから、デザインを描く時点である程度金型をイメージして、作り手の視点からデザインを提案しています。これはデザインスケッチからのCGで、ルーター、ルーターケース、パネル型PCです。

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林 弊社はプラスチック屋なので、無線系が多いですね。プラスチックは電波を通すので。どうしてもプラスチックで作らならければならないとか、無線端末は高額で意匠性が高くないと高額なものとして売れないので、どうしてもデザイン・インしたいといったお話をいただきます。

enmono こちらの新幹線は?

林 八戸新幹線で売られているお弁当の弁当箱です。他にも、防犯用の窓センサーや携帯用湯沸し器など、様々なデザインを描いています。どれもアグレッシブに挑戦したデザインではありません。「今の流行で言うとこんなもの」とか、「こんな商品だったら競合商品と比べてそれなりに魅力が出せる」という範囲の中で、新しい商品の外装を作るとしたらどんなものが良いか考えています。

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enmono 試作品は3Dプリンターで製作されているのですか?

林 3Dプリンター系は圧倒的に多くなってきていますが、使われる用途によって変わります。いわゆる造形品かも知れないし、切削品かも知れない。社内にある造形装置は3Dプリンターの一種ですが、全て自社の設備を使ってやってしまうと、本来お客様が欲しいものではなくなってしまいます。3Dプリンターにもそれぞれ特徴があるので、外のラボにお願いして、作る用途によって選択しています。

enmono お客様は中堅・中小企業が多く、一部、大手企業や個人の方もいらっしゃるそうですが、個人のお客様は増えてきていますか?

林 アイデアはあるけれども手がない方が非常に増えました。3Dプリンターが安価になり、様々なメディアに取り上げられるようになって利用する方が増えて、「これを量産できないか」と3Dプリンターで作ったものを持って来られる方もいらっしゃいます。

enmono テクノラボさんは個人のお客様を敬遠せず、積極的に対応されているのですね。

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林 弊社は設立が2004年で、非常に若い会社です。「今更、プラスチック業界に新参で入っても仕事はない」という状態でスタートしました。その後、大手メーカーが海外に出て更に仕事はなくなりましたから、個人の方ですとかモノづくりがあまりわからない中小企業と一緒に仕事をするしか、選択肢がありませんでした。結果的に、デザインから金型製作までやる弊社のスタイルが合うのは、そのような方々なのです。

enmono 個人の方とお仕事をされる時の判断基準はありますか?

林 基本的には、私達の仕事は利益が出るまで2年かかると思っています。ものを売るようになるまで1年近くかかる上、新しいものが徐々に世の中に認知されて受け入れられて商品として流れるまで、2年かかります。その2年間はお金はいただいていますが、どちらかと言うとそれは実費。労力の先行投資なんです。ですから、作っても商売にならないものはお客様もお金を無駄にするし、我々も労力を無駄にしてしまうので、事前にお断りします。その方を信頼できるような「思い」がないと、前向きには取り組めないです。

enmono 重要なのは「思い」ですか。

林 『プラスチックで「思い」を形にする会社』が、弊社の今のテーマなんです。お客様の「思い」を世の中に出すお手伝いをするのが、プラスチックメーカーとしての弊社の職務です。逆に、「思い」がない方の商品は世の中に出しようがない。

enmono その商品によってある不便が解消されるとか、世の中が変わるとか、そういう部分ですね。

林 「僕はどうしてもこれが好きで、世の中に出た姿を見たい!」という方もいるでしょう。その人が何を作りたいのかを理解したいですし、できれば同じ世界観を共有したいと思っています。思いを共有しないと、お互い知恵を出し合えませんから。どれだけ周りを巻き込めたかによって、商品の付加価値は全然違ったものになります。私達はプラスチックで製品を作る事に関してはそれなりに経験と人脈を培ってきた自負はあるので、それを目一杯使ってほしいです。

enmono なるほど。

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林 もう一つは、私達が属している業界に対する戒めというところもあって。ついつい、業界の常識に縛られて「できない」と考えてしまうんですね。「こういうのが欲しいんです」と素直に言ってもらえると、世の中から要求されているものを感じることができます。常に問いかけがある方が、こちらも成長ができると思っています。

enmono 林さんと私は以前、中小製造業支援のベンチャー企業に勤めていました。大企業からいただいたお仕事を中小企業につなぐ立場だったんですけれども、林さんはその頃から、開発の人の思いを共有されていました。そのような林さんを見て、enmonoを起業するに至ったわけです。町工場とメイカーズのお引き合わせのサービスも、林さんとのコラボがきっかけで生まれたんですよね。私達も、お引き合わせの前に必ずメーカーズの方と面談をして、「思い」があるかお話を聞いています。それと、判断基準はお人柄ですね。

林 儲かるか儲からないかは、やってみなければわからない。「これだったら、この人と一緒だったら、やってもいい」と思えるものは、失敗しても「しょうがないな、自分のせいだな」と思えます。

enmono 林さんもプラスチックに対する熱い思いがありますよね。どちらかと言うと研究者です。

林 子どもの頃、私の父はプラスチックの成形屋をやっていて、同居していた祖父は研究職でした。プラスチック業界は自分の中でデフォルトだったわけです。今でもプラスチック業界にいて、自分の役割、自分は何ができるかを考えています。プラスチックが普及した今、諸先輩方が作ったものよりも親しみやすいものができればと思っています。

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enmono 金属よりは若いですものね。金属は数千年の世界ですが、樹脂はまだ数十年ですから。

林 プラスチックは、素材としてはヨチヨチ歩きの赤ん坊です。物性も作り方も成熟していません。

enmono だから可能性があるんですよね。私達が提案しているマイクロモノづくりについては、何かお考えはありますか?

林 新興国に安いものを大量に供給する流れがある反面、先進国の人はニッチなマーケットで高品位なものを求めています。小さなマーケットに新しくて面白いものをたくさん供給する部分は、日本が一番、感性として進んでいると思うのです。

enmono そういったものを考え出す層もすごく大きいですし、町工場というインフラもたくさんあります。その二つを、つないでいきたいのです。林さんのような、町工場のプロデューサー的な人達の協力が必要なんです。最後に、林さんが考える日本のモノづくりの未来について教えてください。

林 世の中のルールががらっと変わって、今まで大企業が作っていたマーケットがすっぽりなくなっていくわけですが、その部分は中小企業が埋めないと絶対に成立しない場所なんです。ただ、そこをどう埋めていいか分からないから、「仕事がなくなった」とうろたえてしまう。少し考え直せば、仕事がないと言っても、そのものを欲しがっている人は減っていないんですよ。そこに手を出せるようになれば、今まで大企業が押さえていたマーケットが全部、中小企業に入ってくる。5年、10年後に、とんでもない新しい大企業が今の中小企業の中からどんどん生まれるのではないでしょうか。ですから、「日本のモノづくりの未来は明るい」と言いたいと思います。

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enmono ありがとうございました。

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