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予知能力者の告白。

僕は50代前半の会社員で、予知能力と言う、ちょっと変わった特技を持っています。暗記が得意だとか絵が上手いとは違って、皆さんにとって馴染みの無い特技だと思いますので、僕の体験談をご紹介しましょう。

僕がこの能力を知ったのは、小学4年生の頃でした。僕には双子の兄がいて、近所の学習塾に一緒に自転車で通っていたのですが、ある時前を走る兄が車に轢かれる映像がパッと脳裏に浮かんだのです。思わず「危ない!!」と叫びました。

その数秒後、細道から白いライトバンが飛び出して来て、兄は自転車もろとも本当に下敷きになりました。
すぐに救急車を呼んで病院へ。幸い軽傷でしたが、頭を包帯でグルグル巻きにされた兄の姿は痛々しかったです。

病院にすっ飛んで来た母親に「何か事故が起きるのが先に解ったんだけど」と話したら、「何をバカな事言ってんの!」と怒られたので、「これは人に言ったらダメなんだな」と子供ながらに理解しました。

ちなみに、小さい頃から守護霊さんの声が聞こえたりします。色々とアドバイスをしてくれるのですが、「あー、ハイハイ」とスルーする事も多く、喧嘩もよくしたのですが、その話は後程。

私立の中学・高校一貫の学校に通い始めましたが、何故か双子の兄も同じ学校に進学。この兄がメチャクチャ優秀で、同学年が500名以上いる中で、毎回試験で総合1位か2位。特待生にも特例で2回選ばれて、大学受験の時には東大と国立医科大学のどちらを受験するかで家族中が侃々諤々でした。現在兄は産婦人科医として活躍しています。

僕の方はと言えば、友達からは双子のダメな方と認知されて、僕が兄を褒めまくっていたら、「お前も頑張れよ」と呆れられていました。

まったく勉強をしないのを見兼ねた父に呼ばれた事があります。
「お前は勉強で周りからかなり離されている。お前が各駅電車なら他の人は準急電車だ。追い付くにはどうすれば良いと思う?」
賢明な皆さんなら、「急行になる」「新幹線になる」と模範解答が解るでしょう。しかし、僕は暫く考えてから答えました。「……テレポーテーション?」

あの時の「コイツは駄目だ」とガッカリした父親の顔が忘れられません。

そんな僕が高校生になると、ある事に気付きます。
「なんか、試験に出る所が解っちゃうんですけど?」
教科書を眺めていると、浮き上がって視える語句が幾つかあって、それを覚えておくと試験にバッチリ出るのです。こうして総合50位前後が定位置だった僕が、突然総合9位とトップ10入りします。父親も大喜び。当の本人は「事前に試験問題が解るって反則だよな」と苦笑いしてました。

高校3年生の夏に図書館で受験勉強をしたのですが、すぐに飽きてアニメのビデオを借りて観る毎日に。「オマエ、何しに来てるか解ってるのか?」と友達に怒られました。担任の先生からも「オマエが行ける四年制大学は無い」と断言されていました。
ところが、受験が始まって立教大学の門をくぐった瞬間に、「春からココに通うのか~」と確信しました。試験問題も解いた事がある問題がズラリと並び、本当に合格したので担任も両親もビックリ仰天。

大学時代もテキトーでした。大学4年生になり就職活動で某企業に呼ばれて新宿の合同セミナーへ。午後2時から面接でしたが1時間前に到着したので、隣のブースの椅子に座って時間を潰す事にしました。隣のブースの説明会をボンヤリ聴いていたら、終了してもまだ時間があったので、もう一度同じ説明会を聴きながら時間潰し。すると、会社説明をされていた部長さんに声を掛けられました。
「キミは説明会に2回も参加してくれたけど、そんなにウチの会社に興味があるのかい?」

さて、皆さんならどう答えますか。僕は満面の笑顔で答えました。
「はい、実は前々から御社の事が気になっておりまして……」
30年経った今でもその会社に勤めているのですから、人生は不思議です。
ちなみに、周りの友達からは「日本にオマエを採用する会社があるんだな」と真顔で言われました。

さて、就職先も決まった僕は、1月に所属していたサークルの集会に参加します。引退する四年生の挨拶の場で、唐突にこう言いました。
「えーと、もうすぐ大きな地震が来るので、皆さん気を付けて下さいね」

会議室は大爆笑。「流石は善津だわ」
「真面目な挨拶でネタに走ったか」と周りから馬鹿にされまくりました。
それからすぐ後、僕の評価は一変します。1995年1月17日阪神淡路大震災。

サークル中から「凄い凄い」と言われながら、本人は意気消沈していました。予知能力があっても、誰も助けられなければ意味が無いと痛感したからです。その時に初めて「未来が視えるだけじゃダメだ。厄災の回避が出来るようにレベルを上げたい」と思いました。

当時はまだボランティアと言う言葉も無い頃でした。僕は家に帰るのが面倒臭くなって野宿をしたり、ヒッチハイクをしながら西日本を旅行していたので、電気や暖房が無くても平気だからと、バッグ一つで最も被害が大きかった神戸市東灘区へ。友達からは「格好付けるな」と非難轟々でした。

街全体が崩れた光景に圧倒されながら、電車で行ける所まで行き、「何かコッチに行けば良さそう」とテキトーに歩いたら、東灘区役所に辿り着きました。人間とは不思議なもので、瓦礫の街に最初は驚いたものの、そのうち崩れているのが当たり前になって、後に東京に戻った時に逆に違和感を感じたのをよく覚えています。
真冬の神戸にもすぐに慣れた僕は、到着して数日後にリーダーに提案をしました。
「大きな紙に色々な情報をまとめましょう」

実はお風呂に入りたいと思ったのですが、何処に行けば風呂に入れるのかを知っている人と知らない人がいました。その時に「情報はみんなで共有すべきだ」と閃いたのです。
リーダーも「それは良いアイデアだ!」とすぐに賛同してくれて、大きな紙に地元の人が地図を描いてくれました。

「オレはゴミの収集場所を調べるよ」
「私達は炊き出しの予定を調べるね」
「どの道が通れるかも調べよう」
そんな風にみんなでワイワイと担当を決めて、自転車を借りてバーッと東灘区に散りました。そして調べた情報を大きな紙にドンドンと書いて行き、区役所の柱に貼り出したのです。

今では当たり前となった「災害アプリ」の原型は、実は僕がお風呂に入りたくて誕生したのでした。後に東京に戻って報道番組を観ていたら東灘区役所が映って、レポーターが巨大マップを紹介していたのを覚えています。

ここまで予知能力についてご紹介しましたが、僕にとってこの能力は欲しいと願ったものでは無く、毛嫌いしていた時期も長かったです。

確かに予知能力は便利です。母校が甲子園初出場を決めた時には友達から応援ツアーに誘われました。OKしたものの、財布に5千円しかありません。そこで自転車でパチンコ屋に直行。結局8万円の大勝利。

予知能力はギャンブルには使えないと思うかも知れませんが、そんな事はありません。ところが、僕の場合はギャンブル運と女性運は反比例の関係みたいです。

僕にとって予知能力は、正直「早口言葉が得意」と同じくらいの、無くなっても全然構わない能力でした。
家族や友達に話した所で「変なヤツ」と白い目で見られます。親しい人が事故に遭うのを感知しても、本人にどう伝えれば良いのか解りません。自分は一体何者なんだろうとよく思うし、普通の人生に憧れたけど、結局何歳になっても予知能力が消えなくて、「普通にはなれないんだな」と諦めた人生。なので、予知能力者の中で最もヤル気が無いです。

予知能力があっても全然使わない僕を見兼ねたのか、ある日神様が夢に現れて「いい加減にしなさい」と言われました。目が覚めて考えたのは、このまま何もしないであの世に行ったら、「このバカモンが!」と神様に叱られるだろうなと。

そこで日本史研究を始める事にしたのですが、そこは超変人。「未来が解るなら、視る照準を逆にすれば過去も解るんじゃないのか?」と閃きました。
早速守護霊さんに「昔の映像を視たいんだけど。あと、信長本人に解説して貰えたら嬉しいな」と無茶ぶりをしたのでした。

そんな事が出来る訳が無いと皆さんは思うでしょう。教えて貰った内容をざっと記してみますので、僕が過去の映像を視れたかどうかは、皆さんで判断して下さい。

◯桶狭間の戦いについて。今川義元は4万の兵を率いて、尾張国に「宴会」に来ました。信長の目の前で悠々と酒盛りをする。何も出来ずに傍観するだけの信長を家臣達が見限って、今川軍に寝返るだろうと考えていました。ところが、信長は奇襲を選択。朝から平服で酔っ払っていた今川軍に、完全武装の兵2千で襲い掛かり、今川軍に大勝利しました。なお、恩賞第一とされた簗田政綱は合戦には参加していません。彼が沓掛城を褒美で貰ったのは、翌年の清洲同盟を提案したからです。

◯本能寺の変について。織田信長を殺害した真犯人は杉原家次(羽柴秀吉の叔父)です。明智光秀は秀吉に「一緒に信長を殺しましょう」と誘われて本能寺に朝7時頃行きました。ところが、杉原家次は早朝4時前に明智軍を装って本能寺を襲撃。信長・信忠親子の遺体を阿弥陀寺に運び出しました。

信長暗殺計画を考案した秀吉は、5月下旬には毛利軍と和睦して、姫路城に戻っていました。この時に備中高松城には宇喜多秀家が残ります。この功績から、毛利家と宇喜多秀家は豊臣政権で五大老に選ばれるなど、破格の待遇を受けました。

◯天下人となった秀吉でしたが、信長殺しの秘密が暴露される恐怖に怯える様になり、秘密を知る堀秀政や千利休、豊臣秀次などを次々と殺します。更に秘密を知る家臣達が戦死する様に、朝鮮出兵を命令します。明国を征服するまで日本に戻れない事に絶望した家臣達は徳川家康と共謀し、ドクササコと言う毒キノコを使って秀吉をゆっくり毒殺します。

信長殺しの秘密を知る家臣達は東軍を結成し、秘密を知らない家臣達は西軍となります。ちなみに小西行長と大谷義継は秘密を知っていましたが、石田三成との友情から西軍に参加します。

反対に毛利輝元は五大老の立場上西軍総大将となりますが、秀吉が養子を送って毛利家を潰そうとした事を恨んでいたので、毛利・吉川軍には不戦を命じ、養子の小早川秀秋には西軍を裏切らせました。東軍は関ヶ原の戦い、大坂の役で勝利。徳川家による江戸幕府が誕生しました。

ざっと要点をまとめてみましたが、僕がこれらを教わるのに要した時間は約2週間でした。論文にまとめて学会にも提出しましたが、査読結果は「史学科に入って論文の作法を学ぶように」。僕は只の会社員で大学教授を目指している訳でも無いので、「それなら結構です」と学会で発表するのを止めました。

本能寺の変の論文を提出した後、信長公にご報告する為に京都の阿弥陀寺を訪れました。その日は曇りで境内には僕一人でしたが、「お陰様で論文にまとめる事が出来ました」と信長公のお墓にご報告した瞬間、サッと光が差してお墓がキラキラと黄金に輝いたのです。その美しさに「うわぁ!」と感激しました。

この他にも明歴の大火の出火原因は、本妙寺が行った左義長(どんと焼き)である事。赤穂事件は、朝廷の使者を迎える役を幕府に命じられた浅野内匠頭が、吉良上野介から準備を一人でやらされた挙げ句、当日文句を言われてブチ切れた事を教わりました。

また、『南総里見八犬伝』についても、史実の里見氏とリンクしていると教わりました。源氏の一族だと世間から認められるのに躍起だった晩年の徳川家康が、里見氏から源氏の宝刀を奪う為に改易にした秘密を暴露する本。強奪した宝刀を家康は「童子切安綱」(国宝第一号)として発表したのですが、別の源氏の宝刀(髭切)を保有していた最上氏は困惑します。そして幕府に逆らわない様に、作者銘を改竄して北野天満宮に奉納した事などを教わりました。

『八犬伝』が宝刀強奪の史実と連動している事が解ってから、本の後書き(回外剰筆)に「この物語には作者の真意が隠されている。(謎解きは)百年後の叡智に期待する」と記されている事を知りました。二百年後に僕が偶然解く形になったのですが、曲亭馬琴にとって『八犬伝』は非運の里見氏への鎮魂作品だったのでしょう。

『八犬伝』は第一部と第二部に分かれていて、第二部は「物語を引き伸ばそうとした」と評価が落ちますが、実際には第二部で里見氏が滅亡を逃れる大団円を描くのが馬琴の目的でした。失明後も息子の嫁に文字を教えてでも完結させた、馬琴の執念が評価されるべきだと思います。童子切と髭切を巡る物語を映画化したら、きっと面白い作品になるでしょうね。

もっとも、「『八犬伝』のアマチュア研究者では私が一番だ」とやたらアピールされるお婆様がいるのですが、ご本人が一番だと仰るのならきっとそうなのでしょう。正直どうでも良いです。

日本史研究が楽しかった僕は、調子に乗って暗号解読にも挑戦する様になります。と言っても守護霊さんが手伝ってくれたのですが。

◯イタリアのヴォイニッチ手稿は、珍品コレクターだったロシア皇帝に「妖精界の聖書」と騙す為に作った偽本。
◯米国のビール暗号も、財宝狙いの人達に本を売りつける為に作ったデタラメ暗号。
◯徳川埋蔵金は幕府の財宝を隠したのでは無く、金脈を求めて赤城山を掘った跡。
◯英国の700年前の黒剣暗号は、十字軍に参戦したエドワード1世からエクスカリバーを創るように命じられたドイツの剣職人が、キリスト教に関連する単語を掘ったもの。
◯豪州のタマム・シュッド事件の暗号を解読すると「グレネルグ」になる。

と言った具合に、片っ端から解いて行きました。未解決事件を含めて2年間でかなりの数の謎解きをしたので、「流石にもう神様に叱られないだろう」とスパッと引退しました。今は誰かを助ける時と、満員電車で早く座れる人の前に立つ時に予知能力を使っています。

守護霊さんから話し掛けられる事があると書きましたが、最近まで無謀にも守護霊さんにクレームを付ける時もありました。
馬券場でレースが始まって馬がゲートに入る時に「8番の馬が勝つな」と解った時には、「投票が締切になってから教えてくれても全然意味無いじゃん」とクレーム。

ある時は会社からの帰りに、地元の駅に着いた所でパラパラと雨が降り出しました。カチンと来て、
「ちょっと。これから自転車に乗って帰るのに、ワザと雨を降らすって性格悪いよね?」
空に向かって文句を言ってから走り出したのですが……。
突然目の前がバッと真っ白になって直後に凄まじい轟音。
「ドカーン!!!」
自転車から10m程離れた木に、雷が落ちたのでした。

理由は忘れましたが、ある時は「守護霊なんだから、シッカリ仕事してくれ」とクレームを付けた所、真夜中に玄関のチャイムが「ピンポーン」と鳴り始めました。カメラで確認しても誰もいません。何度か「ピンポーン」と鳴り続け、五月蝿いので二階の自室で寝ようとしました。

すると今度は一階と二階を繋ぐ内線電話が「プルルルル」と鳴り始めたのです。ちなみに、既に両親も無くなって、僕は一人で住んでいました。完全にホラーな展開ですが、
「五月蝿~い。もう僕は寝ますよ~」
と叫んで、そのまま寝ました。

ちなみに今住んでいる実家には亡くなった両親が時々遊びに来るらしく、兄が泊まった時には、玄関を開けたら「お帰り~」と父の声が聞こえたそうです。僕はその時まだ会社で仕事をしていましたが。
僕が仕事で悩んだ時には、突然風呂場から「お風呂が沸きました」と音声ガイダンスが聞こえて来ました。実家ではシャワーしか使っていないので、きっと両親が励まそうとしてくれたのでしょう。思わず笑ってしまいました。

そんなこんなで守護霊さんにズバズバ言っていた僕ですが、ある日を境にクレームを付けるのを止めました。
エンドレス切れ痔事件……それはそれは恐ろしい守護霊さんの逆襲でした。

ある時、競馬を賭けようとしたら1秒差で締切時間に間に合わず、万馬券を逃してしまいました。激怒した僕は空に向かって「守護霊ならシッカリ護れ!」と吠えたのです。
いつもクレームを付けると口内炎が出来るので、どうせまた口内炎だろうと侮っていたのですが。

翌日トイレでふんばった所、ペーパーに鮮血が。「ありゃ切れたか」と明日になれば治ると思っていました。
ところが、3日経っても5日経っても10日経っても治りません。人生初のボラギノールも購入しました。
常に流血しているので、お尻の穴を塞がないとパンツが赤く染まります。「女の人の生理って大変なんだな」と、その時身をもって理解しました。

想像してみて下さい。24時間ジワジワと少しずつ流血する恐怖を。

酔っ払い4人に囲まれて乱闘になった時でも「地面が土だから服が汚れるのは嫌だな~」と考えていた僕。
2人乗りのパラグライダーで上空に登ったら、一時的に操縦不能になってひゅうううとキリモミ回転しながら落下して、「この高さなら死ぬけど、2人で葬式なら別に良いか」と冷静だった僕。
池袋駅前の信号で渡ろうとしたらタクシーが猛スピードで突っ込んで来て
、「これはダメだ。だけど相手もプロならギリギリ避ける方にワンチャン賭けるか」と運転手を信じて直立不動で微動だにしなかった僕。
そんな僕が、「守護霊さんには勝てない」と降参。3週間目でようやく出血が止まったのでした。

ここまで予知能力についてお話しましたが、未来の出来事を視るだけなら子供の僕でも出来ました。新世代は優秀ですから、この先僕よりも凄い予知能力を持つ子供達が沢山現れるでしょう。
そんな彼等には、悪い未来を「回避」出来る、より高いレベルがある事を知って欲しいです。彼等が願えば修行させて貰えるでしょうが、その代わり、習得するのは並大抵ではありません。

僕は20代後半に神様から強制的に修行をさせられました。重度の鬱状態となり、30kgの重りを背負わされた感覚。そして高温サウナに一年中閉じ込められている様な息苦しさでした。

夜もまったく眠れずに、白い壁をジッと眺めて朝を待つ毎日。心臓に負担が掛かり過ぎて、仕事中に先輩が4人に視えて失神し、そのまま幽体離脱した事もありました。「やっと楽になれる」とホッとしながら、真っ白な世界がずっと続いていたので、「走馬灯を視たいのに!」とブリブリ怒っていたら、丁度電話が鳴って意識が戻りました。

こうした過酷な修行が2年以上続き、流石にもう生きて行くのは限界だと感じました。僕は会社の上司に退職を考えている事を明かして、明日辞表を出しますと伝えました。
その夜、会社帰りに独りで都内の繁華街へ。「この景色を見るのも、これで見納めかぁ」と思いながら歩いていたら、とあるお店の前でハッキリと声が聞こえたのです。
「この店に、入ってごらん」

こうして、退職を撤回する様な運命の出会いがあって、その人のお陰で僕の過酷な修行は終わりました。そして修行が終わった時、今では「ドリカム」と呼んでいる能力が覚醒しました。
自分が「あんな事良いな、出来たら良いな」と願うと、その願いが叶うのです。大学生の時に欲しいと願った、悪い未来の「回避」も出来るようになりました。

ちなみにこの能力、私利私欲には使えないようです。年末ジャンボ宝くじで試してみましたが、全然ダメでした。

これまで身近な人達の悪い未来を回避させて結構助けていますが、僕も言わないし、助けられた方も知りません。それこそが、予知能力の理想形だと思います。僕にとって厄災の予知が的中すると言うのは、凄い事では無くて失敗です。

兄が実家の玄関を開けたら父の声がしたと書きましたが、父はとても優秀で穏和な人でした。人生で父に叱られた記憶は3回だけ。そんな父の葬儀の時に、会社の部下だった方が弔辞を読んで下さいました。
「実は、亡くなる少し前に電話がありました。◯月◯日が自分の葬式なので出席して欲しいと言われました」
それを聞いた時に「親父さんの血筋か!」と心の中で叫びました。

姉も不思議な人で、突然名古屋に住む伯父さんに昔話を聞きに行くと言い出しました。3人で名古屋に向かいながら、何故そんな急に会うのか聞いたのですが、姉の答えは「だってもうすぐ伯父さん亡くなるから」でした。
「何ですとー!」と思ったのですが、昔話を聞いて少しして、伯父さんは亡くなったのでした。
それでいて、僕には「予知能力があるとか怪しい事を言うな」と怒るので、本当に不思議な人です。

僕がガラガラのお店に入ると、食べ終わる頃にはコントみたいに満席や行列になる事がありますが、姉も同じ事を話していました。ちなみに双子の兄にはまったく能力が無いようです。

神様が何故僕に最強レベルの力を与えたのかはよく解りません。思い返せば、友達に相談されたり、街中で人助けをする機会が人よりも多い気がします。

会社の近くを歩いていたら、老夫婦が動かずに立ち止まっていました。僕が「どうかされましたか?」と聞くと「家内が歩けなくなってしまって」と答えが帰って来ました。そこでお婆さんを背負って、よく通っていた近くの整骨院へ。

名前を告げずにその場を去ったのですが、後に老夫婦が菓子折りを持ってわざわざ会社まで訪ねて下さいました。
お話を聞いたら、お婆さんはアキレス腱を切っていて整骨院から病院へ救急車で運ばれたそうで。整骨院で僕の勤めている会社を調べて、後日お礼に来て下さったのだそうです。
「助けを呼べなくて困っていたので、本当に助かりました」
深々と頭を下げられて恐縮しました。

ある真夏日に自転車で走っていた時には、道路の街路樹の下で若い男性が寝ていました。随分変な所で日向ぼっこしているものだなと、そのまま通り過ぎようとしたのですが、一応止まって「大丈夫ですか?」と声を掛けました。当然「大丈夫です」と返事が来ると思いきや、「ダメです」と返って来た。
「そっか、ダメなのか~」と119番通報。熱射病でダウンしていたらしく、水を飲ませたり、偶然持っていたタオルを濡らして救急車が来るまで風を送って身体を冷やしたのでした。

凄いのが軽井沢に旅行に行き、早朝散歩をした時です。突然近くでバサバサと音がしたので見たら、ムササビの赤ちゃんが上手く飛べなくて落ちた音でした。ジッと見ていたら、赤ちゃんムササビが段々僕の所に寄って来て、脚を伝って登って来て、なんと腰の所でそのまま「くー」と寝始めた。か、可愛い!!

一緒に散歩していた後輩はビックリ。僕も「なんなんコレ」と苦笑いしていると、バサッバサッと空から音が聞こえて来ました。ムササビのお母さんが心配そうに旋回する音でした。赤ちゃんムササビを近くの木に放してあげたのですが、お腹が柔らかくて「フカフカだ~♪」と感動しました。

さて、何故エッセイのテーマに「予知能力」を選んだのかを記します。
YouTube等でたつき諒先生の予言の漫画や、奇跡のリンゴの木村秋則氏が宇宙人から聞いた話として、「2025年7月5日に大変な事が起こる」と騒がれ始めています。日付が近付くにつれて、ノストラダムスの終末予言の時の様に、騒ぎが大きくなるでしょう。不安を煽り、財産を騙し取ろうとする悪い人達が必ず出て来ます。

ここで僕も「感知しました」と乗っかるのは簡単ですが、今は何も感じません。未来が幾らでも変わる事を経験上よく知っているので、特に心配もしていません。
まだ先の事を心配するよりも、先ずは2024年をシッカリ生きる事が大切では無いでしょうか。

本音を言うと「回避が出来ないのなら黙っていて欲しかった」です。ご本人としては善意で公表されたのでしょうが、数ある選択肢の一つを確定情報の様に扱い、出版までしてしまって世の中に広まる事で、その未来が集団意識として選択され易くなるからです。

予言を聞いて自暴自棄になる人達が出たり、みんなが買いだめに走って物不足になるリスクも高い。だから、自重して欲しかったです。広めなくても僕は気付いて、人知れず回避が出来ただろうから。

ここまで広まると、僕には回避する事が出来ないです。僕より凄い方が居れば今回は頼りたいですし、日本中のみんなで願えば、思念力の塊が厄災に抗う大きな力となるでしょう。
八犬伝をヒントに『ドラゴンボール』が誕生し、悟空がみんなの元気玉を集めてラスボスに勝つストーリーは、きっと偶然では無いでしょう。

みんなが大災害が来ると言うなら僕も言います。
「大丈夫、運命は変えれば良いから」

そして無事に7月5日を乗り越えた後は、みんなでお尻にボラギノールを塗りましょう♪






























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