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散歩ではなく散輪

新しい公園を発見した 近くにインターチェンジが
出来て 高台の一部が崩された 崩された崖
が土留めされ そこに出来た公園には遊具らし
い遊具もなく 草が盛りと 茂り放題になってい
て それは草を食べる動物が好きそうな葉の
広がっている菜っ葉方面の草に見えた 近頃
公園ができても滑り台も置かれない トイレすら
無いところもある 崖際に建売が何軒かあって
その裏は林になっている ゴーカートのような
ナンバーのついた乗り物が止めてある家があ
った 向こうには低地に広がる田畑と突っ切っ
て伸びていく高速道路 土手の向こうの首都が
見える 思い違いしていた インターに伴って
出来たのではなく高速の不随としてこのあたり
は整地されたのだろうと思う 広い意味での
一帯の整備地だ

はじめに本を借りてきた 散歩の間に読む気は
なかった 吉行淳之介の係累が書いた回想の
薄い本と音楽系と思って借りた本二冊 悪路で
は自転車籠で跳ねまわるからタオルに包んで
手提げに入れた カメラを首から下げていると
後で首がしこるので口を開けた小物入れに放り
混んでおくとがんがん踊り回っている カメラ
は踊るものではない ふわっと浮き上がりもしな
い 階段の中央にスロープが設えられて降りも
せずブレーキで急な勾配を下っていく 樹々を
削って階段が下るので 振り返って太陽と乾き
に抗っているような梢を撮った 光に透かされ
た何かという構図が好きだ なぜだろう 道路
の下に石と草と鉄柵が組み合った軒下があって
雨風を凌げそうだと見えた そういうところを発見
するとどういう訳か少し落ち着く

平日昼間 とくに二時ごろから四時ごろまで つ
とめ人の頃から何だか曖昧な 現実みのない
時間帯だなと思っていた あまりこの時間帯に
重要な仕事をした覚えがない 移動していたよ
うな気がする ひとつの用事から次の用事へ
ポイントで何かがあっても 移動時間の方が
長くて ラジオを聞いたり 少し車を停めて休ん
でみたり 今はあてがわれた用事も課題もなく
なって しかしやらないと病気になると緩く脅さ
れて散歩に出ている いや 散歩ではなく散輪
だな 自転車に跨って 

額の汗が異常な湿りなのはもう病気だとわかっ
ていたから手で頭髪の方へ押しやってハンカチ
で拭いもしない どこかに水道があれば 気が
向けば頭には水をかぶってしまおう あまりに
暑いと思われたのか見渡すかぎりで人気がな
い 土 草 葱 向日葵 それから川を超えてい
かない送電線の骨ばった鉄塔 骨ばったでは
なくて骨自体か 実は風があって盛夏よりは
随分涼しい 川べりという事もあるかもしれない
なぜ 川べりは風が涼しい または涼しく感じる
のだろう 原理はビル風と似ている気がする
全く違うかもしれない 親水公園に至るまでに
何匹ものトンボを見た 青みがかったシオカラ
トンボか それとも別の種類なのか コスモスが
咲いていて暑さにかかわらず虫花は律義だと
おもった 大幅な先送りというのがない

親水公園には築山が震災後築かれ 噴水が
潰されていた その代わり築山の上の四阿に
ミスト装置が設置された それでいて四阿の
屋根は骨組みばかりで雨よけがない 突然の
ゲリラ豪雨に用をなさない 雨がなければ夜
しばらく涼みに来るのもいいかもしれない 向こう
河岸に低く夜景が広がるはずだ 夜 歩かない
もうしばらく何年も

全く気が付いていなかった 親水公園とは過去
で 今はミストと 時折築山からながれる時間
制の水流だけかと思っていたら 細かい石を
固めた地の小さいとも言えない 水溜まり程度
の浅さの水場が作られているのに気が付いた
ぬるいものと決めつけて手のひらを浸すと冷た
い そこに溜まった埃か水苔のような物が僅か
に水の中で舞いふるえた それを見て その気
になりかけていた靴を脱いで入ってしまおうか
という気持ちを収めた そういえば水の音が
していた こぽこぽいうのは水が吸い込まれて
いる音で 出る音ではなかった 水鏡になった
貧相な木を写真に撮った

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