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終の傘

ブラックフライデーというのはその金曜の売り出
で一気に商売を黒字にしようというアメリカの
商習慣から来た大売り出しというのは有名な
話だが知らない人は知らないだろう思ってアマ
ゾンの予告メールが次々に入り つらつらと見て
いたら傘があった そういえば長い傘がほしか
ったのを思い出して 今回買う傘がもしかしたら
終の傘になるかもしれないなどと思いつつディ
スプレイにいくつも羅列される傘を流していたら
気になる傘を見つけてしまった

好きな作家がアンケートに答えていて 好きな
物 事 のところで 雨の日に完全装備で外出
すること といった内容を上げていたのがずっと
思に引っかかっていた そうだ 雨の日に雨に
煩わされることなくでかけられればそれはそれで
かなり生活が変わることで その変化というの
は雨の日と晴れの日の違いであって 天候に
よって外出 さらには屋外のありようが全く違う
世界になってしまうということを単純に確かめに
行くための外出ぐらいしか今の私には思われる
こともなく 多分 雨だろうが何だろうが構わず
誰かにわざわざ会いに出かけるという事もこれ
からそうそうある事でもないだろうと清々しくも
やや空しい

そうした時 傘の出番というのはそうある事
ではなくて もしあるとすれば余程雨の中を写真
に撮りたくなったりしたときで 条件としてはな
るべくしっかりしていて大きな傘 ボタンで開く
傘 それから見栄え的に持ち手が木で出来た
傘 石突も出来れば木製 そのように見えた
傘が割引ではなかったもののそれほど高価で
もなく目について 今朝 思い立って必要と思わ
れたもの それはボタンダウンシャツだったり
釣り針だったりしたのだけれど 一覧にして計算
してみたら今月の相場による小遣い稼ぎの範囲
内に収まっていたので傘もまとめてカートに入れて
購入手続きを済ませてしまった

緑色で白い木肌が持ち手の傘だ 骨が多く む
かしながらの八本骨の傘よりも傘布が細かく区
切られるのがなんとなく嫌だったが というのも
あの区切りが大まかな方が傘は美しく感じられ
るから個人的に それはしっかりという条件にひ
きずられるように目をふさぎ しかしそれがもし
かしたらこの傘を持つたびに気にかかってしまう
かもしれないなどと思いもしながら 手にもせず
に買った傘の届くのを数日間待つことになる 緑
というのは近頃身に着けるのに選んでいる色で
ささやかにそれがどこにも属していないものの色
などと勝手思って納得している どうせ雨に出か
たとしても撮るものは緑色にまつわる植物だと
か 珍しい色の自転車だとか そんなものなん
だろうと自分の思考におおかた見当がついて
いた

ゴルフはひとたびコースに出れば余程でないか
ぎり終わらないものだけれど一度グリーンが水
びたしになるほどの大雨が降ってハーフそこそ
そこに終わってしまったときがあった クラブハ
ウスの大きくとられたガラスの向こうに芝生と
山々のアップダウンが見晴らせるはずだったけ
れどもすっかり水煙に曇った屋外にゴルフ場の
水色の傘がいくつか戻ってくるのが見えた こう
したことも多分もうないだろうからひときわあの
水色は鮮やかに思い返される

図書館本館は土手に至る坂の途中で期限まで
ぎりぎり借りた本を雨の中かえしに行くというの
も恐らくそうはない事だろう もし そういう状況
に落とし込まれれば返却の後わざわざ土手まで
緑の傘を持って登ってみようか 様々な想念が
流れては傘に阻まれ木の茂みから野鳥が鳴け
ば布を敷いたような流れの霞む緩い曲がりの
川筋が海まで静かに続くのだろう 傘というのは
小規模の移動式屋根であり タープと折り畳み
式の背もたれ椅子を持って出れば立ち止まって
部屋として 雨に放心できることだと思った な
らば大きいに越したことなく その際には風に
とられる力というのはより強まる事だろう




その後 5センチ大きく同様の傘が700円ほど安く売られていて怨

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