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映画感想『DOGMAN ドッグマン』

原題「DOGMAN」

◆あらすじ◆
ある夜、1台のトラックが警察に止められる。運転席には負傷した女装男性がおり、荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男は、自らの半生について語り始める。犬小屋に入れられ、暴力を浴びて育った少年時代。犬たちの存在に救われながら成長していく中で恋を経験し、世間になじもうとするも、人に裏切られて深く傷ついていく。犬たちの愛に何度も助けられてきた彼は、生きていくために犬たちとともに犯罪に手を染めるが、「死刑執行人」と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。

絶望的な人生を犬たちに助けられ人間より犬を愛し犬と意思疎通する男の話。

そして宗教を絡ませた背景に児童虐待、身体障碍、保護犬、女装家とマイノリティに寄り添ったアンチヒーローものだ。

観る前はリュック・ベッソンぽく無いのでは?と思ったけど観終わったらしっかりリュック・ベッソンだった。
今回の主人公は下半身麻痺と言うハンデを持ちながらも創意工夫で立ち回りを見せ、何処か『レオン』や『ニキータ』『ANNA』に通ずるものがある。
犬達を使って懲悪する姿はどこぞの殺し屋か諜報部員さながらだ。
何だかあれよあれよと見入ってしまったな。

あのアジトはカッコ良かったなぁ!


いやぁ凄かった!主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズとその仲間(犬)たちが🖤

全員賢い!

物語は檻に入れられた少年の実話から発想を得たって事だけどここまで膨らませられたらマジで【渾身の出来】だわ。

主人公のダグラスは結局犬を使って犯罪を犯す形になるのだが実はどれもギリギリ正当防衛が成り立つのでは?的な背景がある。
精神科医に何度も「犯罪だって判ってるわよね?」と問われるが意に介さないのが愉快だ。
観終わって思うのはあのラストがあっての飄々ぶりなんだなって。
人間は誰しも死に向かって歩んで行くんだがダグラスのそれは明確にヴィジョンとして内臓されてたんだね。
【いつか死ぬ】ではなく【その時に死ぬ】だったんだ。

劇中ダグラスが「犯罪は状況(環境)によって起きる」的な事を話す場面があるんだがそこが芯をついてると思うんだよね。
確かに犯罪はイケません。
でも、じゃあどこまで試練を耐えればイイんですか?って話でね。
その過酷な試練を齎した元凶をどう扱えば?それが神だとしたらいかがなものか?

まぁ今作はかなり宗教色も強いわけでダグラスは後半、特に最後は対決だったよね神とのね!

父親の理不尽な暴力に耐え続け犬の檻に入れられても耐えて耐えて生きる事を諦めなかったダグラスが犯した犯罪は一体何罪なんですかね?
神様教えてくださいよ。それは罪ですか?位には思っちゃったよね。

ダグラスが求人広告を見て女装バーに行くシーンは大好きだった。
この一連の女装シーンはケイレブの過去イチ嵌ったシーンじゃないかな?って思った。
イキイキして見えたもの。

そのバーの初舞台、口パクでエディット・ピアフの『La foule(群衆)』を歌うんだけどこれが最高なんだよなぁ。

チラッと何処かの感想で「口パクじゃない方がいいんじゃない?」って見かけたんだけど女装さん達のカルチャー?として口パクで振りだけなりきる的なのあるの知らないとそうなるのかって思って残念だった。

だってあの口パクのシーンめっちゃ泣けたよ。
(இ﹏இ`。)

おネェ様方もこの反応ww

その舞台への伏線として養護施設でのシェイクスピア劇があったり本やレコードから学んだ感性も持ち合わせていたんだろうななんてダグラスに関する予測がし放題ww。

伏線として拘置所で精神科医のエヴリンとの会話時に「歩く度骨髄が漏れ出て、一歩一歩が死に向かってる」みたいに話すんだけどそれがあのラストに繋がって「ここに落とすかぁ!!!!!!」ってなったよね。
まさしく【その時】だったわ。

でさ、そのエブリンを演じたジョージョー・T・ギッブスがまたいいのよね。
ダグラスはエブリンに自分と同じ痛みを抱えてるって見抜いて彼女の離婚情報から経緯を知ってか知らずか優秀な犬を用心棒として彼女のもとに差し向ける。
観客はそれまでの犬たちの働きを知ってるからDV夫から守ってくれるのねって安堵するんだな。

そして最後のダグラスの最期に「やっぱり生き様は死に様よね!」って思ったよ。
後悔なんて残すなって事よね。

こんなスクリプト書けるんじゃん!なんて思ったりしてさ。
だって『angel-A(アンジェラ)』が酷くてそれ以降あんまり観なかったもんなベッソン作品。

アクションだから観に行った前作の『ANNA』が殊の外面白かったのと今回主演が大好きなケイレブだったから観に行ったけど行って良かった。

でも予想してたのとちょっと違う話だったからイイ意味で裏切られて大満足!

そして起用音楽が良かった。
ラストのエディット・ピアフ『Non, je ne regrette rien(水に流して)』はドンズバの楽曲だった。

そしてスコアはやっぱりエリック・セラでした。



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