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分散型物理インフラ「DePIN」とは


DePINとは?

Decentralized Physical Infrastructure Network(分散型 物理 インフラ ネットワーク)の略です。
現状定義されつつある言葉であるため、ここでは
トークンエコノミクスを活用してインフラの構築や運用を分散的に効率よく行うことを目的としたプロジェクトの総称」
とします。

上記定義における「インフラ」とは、物理的なサーバー機器をはじめ、メモリの容量やGPUの処理能力といったものから、地図情報や車の走行距離などのデータ資源を指します。

インフラは、参入するために多くの資金が必要となるため、1社または数社により独占・寡占市場となることがほとんどです。
例として地図情報を挙げますと、現状Googleによって地図情報が収集され、各利用者へデータが提供されている状態にあります。

独占や寡占状態にあると、様々な問題があります。

  • 利用料が高くなるなど、提供価格が適正になりにくい

  • 利用の少ないエリアへの提供品質が高くなりにくい

  • 提供元が提供できなくなった場合の影響範囲が大きい

上記のような問題を解決することをDePINは目指しています。

DePINと呼ばれるプロジェクトの特徴をおおよそ下記に3つ挙げます。

  1. 個人が提供側となって参加できる

  2. トークンインセンティブの活用

  3. わかりやすいユーザー体験

1.個人が提供側となって参加できる

DePINにはサービスを提供する側と利用する側が存在します。
これまで提供側は企業が一括管理・統制していたため、独占状態でした。
しかし、DePINでは提供側のリソースを分散化させることで、個人も提供側に参加できるようになったことが特徴です。
多くのDePINプロジェクトはこれまでの独占・寡占市場に対して、分散ネットワークによって再構築することをミッションにし、単一企業が提供するものとは異なる価値提供を目指すプロジェクトが多いです。

2.トークンインセンティブの活用

DePINにおける提供側が、企業だけでなく個人でも参加できることを可能にしたのは、トークンインセンティブの活用です。
インフラは、多くのユーザーに利用してもらえるほど価値が大きく発揮できます(後述しますが、ブートストラップ問題といいます)。
まずリソースを用意し、その価値にお金を払い利用するユーザーがいることで、売り上げが伸びます。
その売り上げで、更に質の高いリソースを用意することが可能となり、利用者が増えるといった構図です。

一番最初にリソースを用意するためには膨大な資金やコストが必要です。
しかし、DePINでは提供者にトークンを配布することでこの問題を解決することができます。
各DePINプロジェクトにはトークンが組み込まれており、マーケットプレイスの手数料収入などが得られます。
その一部をトークンの買い戻しやバーンに割り当てることで、トークン保有者へ手数料収入を配当し、還元される仕組みになっていることが多いです。
そこに期待して、提供者はリソースを提供するといった構図になっています。

DePINは、トークンによる還元率の調整が大変重要で、低すぎると提供者が集まらず、高すぎると利用者が集まらないため、微妙なバランス設計が必要です。

3.わかりやすいユーザー体験

DePINを成立させるためには、利用者側の参加ハードルを低くすることが重要になります。
提供されたリソースが集まったとしても、利用者がいなければスケールしていかないため、利用側がトークンやウォレットなどの購入や作成/登録が一切必要ないという参加しやすい設計が重要な点です。
リソースを利用したい場合に都度専用トークンを購入する必要があると、トークンの売買に慣れているユーザーしか参入しにくく、利用者は増えにくくなってしまいます。

また、提供者側も提供方法がシンプルであることが重要です。
提供方法が複雑になると参加ハードルが高くなってしまい、提供ユーザーが参入しにくくなり、これも成り立たなくなってしまいます。


トークンとブートストラップ

引用:https://cdixon.org/2017/05/27/crypto-tokens-a-breakthrough-in-open-network-design 

インフラを提供しているサービスの多くは、サービス価値がネットワーク拡大と共に高まっていき、多くのユーザーが利用することによって、更にネットワークが拡大していくという自発的なサイクル(ネットワーク効果)が生まれます。

Amazonを例に挙げますと、

  • 多くの出品者がいるため、高品質で価格の安い商品が出品される

  • 高品質で価格の安い商品が多いので、ユーザーがたくさん集まる

  • ユーザーがたくさん集まって商品が売れるので、多くの出品者が集まる

以降繰り返しになります。

ネットワーク効果により、独占・寡占市場で新たな競合他社が市場シェアを獲得するのは極めて難しく、コストもかかります。
これがブートストラップ問題です。

プロダクト初期に発生するブートストラップ問題を解決するために、期待の持てるトークンインセンティブを活用してユーザーを獲得していき、サービスとしての価値が発揮できる状態にいち早く持っていきます。

DePINの分類

現状出てきている代表的なDePINは、大きく以下の5種類に分けられます。

1.IoT
Hivemapper、DIMO、

2.コンピューティングリソースマーケットプレイス
RENDER NETWORK、akash、io.net

3.分散型ワイヤレスネットワーク
Helium

4.ファイルストレージ
Filecoin、arweave

5.公共インフラ点検
ピクトレ、Tekkon

引用: https://x.com/MessariCrypto/status/1681723321745035265?s=20 


注目プロジェクト/事例

DePINの代表的なプロジェクトを紹介します。
IoTに分類されるHivemapper、DIMOと公共インフラ点検に分類されるTEKKON、PicTreeです。

Hivemapper

引用: https://hivemapper.com/explorer 

プロジェクト概要
GoogleMapのような独占的なプラットフォームの代わりとなる地図情報のDePINプロジェクトです。

地図情報を提供する側は専用のドライブレコーダーを購入、車に搭載して運転することで、地図情報を集めるか、スマホを使用して工事の情報などを提供します。
これらの情報を提供することで、報酬として$HONEYを受け取ることができます。

地図情報の利用者は$HONEYを支払うことで、地図情報を利用することができます。

Hivemapperによって解決できる問題は下記の通りです。

  • 地図のアップデートが遅い

  • 独占的な価格設定により高い利用料がかかる

  • 障害が起きた時対応できない

エコシステム概要

引用:https://docs.hivemapper.com/honey-token/net-emissions-model

地図利用者はマップクレジットを購入すると、その量に応じて地図情報を利用することができます。
マップクレジットが購入されると、$HONEYがバーンされ、バーンされた量と同じ量の$HONEYがミントされます。
そのうちの90%が地図情報提供者へ、残りの10%が運営に配られるように調整されます。

DePINの具体例のまとめ

DIMO

引用:https://dimo.zone/

プロジェクトの概要

DIMO(Digital Infrastructure for Moving Objects)は車両データを収集、共有することで、報酬として$DIMOを獲得できるDePINプロジェクトです。
ユーザーは$DIMOを使用してサービス(バッテリーの健康状態、トラフィック、エンジンレコードなど)を購入することができます。

引用:https://docs.dimo.zone/overview/introduction/what-is-dimo

エコシステム概要

引用:https://docs.dimo.zone/governance/dip3

利用者が購入した額の1%分の$DIMOがバーンされ、残りが情報提供側に報酬として支払われます。

DePINの具体例のまとめ

TEKKON

引用:https://tekkon.com/

プロジェクト概要

街中のマンホールを撮影・レビューすることで、$WECを獲得することができる、インフラ管理の民主化を目指したプロジェクトです。

エコシステム概要

ゲームを開始すると、無償で犬のNFTが付与され、マンホールの撮影・レビューをすることで、リワードポイントを獲得できます。
リワードポイントをゲーム内消費、$WECへの交換、LINEPayを通じて現金に交換することが可能です。

引用: https://x.com/TEKKON_JP/status/1651906272474828801?s=20 

LINEPayを使用できるため、Web3ユーザーでなくても、馴染みやすく、参入障壁が低いのが特徴です。

DePINの具体例のまとめ

PicTree(ピクトレ)

引用:https://pictree.greenwaygrid.global/#game

プロジェクト概要

東京電力ホールディングス傘下の東京電力パワーグリッドとDEA社がタッグを組んで実現したプロジェクトで、ゲームを楽しみながら、インフラ整備の保守をして社会貢献に繋げるプロジェクトです。
街中の電柱をスマホで撮影し、投稿・レビューすることで、$DEPを獲得することができます。

引用:https://pictree.greenwaygrid.global/#game

チームに分かれて電柱を撮影し、撮影した写真を使って陣取り合戦を行います。
その勝敗によって、受け取れる報酬額が変わります。

引用:https://pictree.greenwaygrid.global/#game

上述したブートストラップではユーザーが増えるほどサービスとしての価値が高まる構図となっていましたが、PicTreeの場合はユーザーが増えれば増えるほど、サービスの価値はゲームの楽しさに置き換わってると考えることができます。

DePINの具体例のまとめ


本記事のまとめ

本記事ではDePINの概要と注目プロジェクトについて、解説しました。

DePINはトークンのインセンティブをうまく活用することで、既存の中央集権的なインフラを分散化させることができます。
また、Web3事業に参入している企業にとって、比較的イメージしやすく、社会課題のソリューションとしてわかりやすい領域と言えます。
そのため、今後多くの企業がDePINに参入してくることが予想され、競合が少ない今が参入のチャンスと考えられます。

一方で、DePINはトークンの量を適切に設計するのが難しいという側面もあります。
上述したブートストラップを解消するために、適切なトークンの量を決め、サービスの拡大と共に、トークンの量を適切にコントロールしていく必要があるためです。
トークンの量はサービスの内容によってカスタムしていく必要があり、緻密な設計が非常に重要になります。

0xCでは、DePINに参入したい企業様に向けて、そのプロジェクトのモデルに合わせて最適なトークンエコノミクスの設計を行っておりますので、参入をご検討の企業様はぜひお気軽にお問合せください。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆:0x Consulting Group 二井俊也、阿部匡浩(Xアカウント@kaw3r_8806
監修:0x Consulting Group Token Economics Director 新谷圭右(Xアカウント:@shinkei_pm