Ensaio sobre a lucidez (1)

止まっていたポルトガル語の勉強を今日から再開する。教材は先月邦訳で読んだジョゼ・サラマーゴ『見ること』の原書を精読することにした。Ensaio sobre a cegueira 『白の闇』(邦題)の洋書読みは残念ながら挫折したが、今回はその経験も活かし、読了を目標にせず、一文一文を訳読していくスタイルにした。サラマーゴの文章は難しいが、箴言集の趣があるのであらすじを追う読書として楽しむのではなくじっくり分析していくのも一興だと思う。テキストはkindleでサンプル版をダウンロードしたので、サンプル版の最後くらいまでは行きたいかな。もちろん調子が出てきたらその先にも。でもまあ最初から壮大な目標を立てずに一回一文くらいのスローペースでぼちぼち進めていきたい。

今日は冒頭の一文

Mau tempo para votar, queixou-se o presidente da mesa da assembleia eleitoral número catorze depois de fechar com violência o guarda-chuva empapado e despir uma gabardina que de pouco lhe havia servido durante o esbaforido trote de quarenta metros desde o lugar onde havia deixado o carro até à porta por onde, com o coração a saltar-lhe da boca, acabava de entrar.⁠

mesa は「机」だが、「テーブルを囲む人々,列座の人々; 委員〔会〕,役員 〔会〕」という意味もあり、ここでは「第14選挙会場の委員長」でいいと思う。
depois de… の受ける動詞が fechar と despir の二つある。つまり、depois de fechar… e (depois de) despir…
という構造を読み取る。de pouco lhe havia servido は、servir de… で「機能する」なので「ほとんど役に立たなかった(レインコート)」となる。lhe は o presidente を指すが訳すときは省いてもいいだろう。ここで havia servido と複合時制になっているのは、despir よりも前の動作であることを示すため。o esbaforido trote は、ちょっと難しい。esbaforido が「息を弾ませた」で、それが trote 「駆け足」にかかるのは日本語としては奇怪だ。文脈としては「息を切らすほどの駆け足で」くらいだろうか。por onde をどう解釈すればいいか。com o coração a saltar-lhe da boca は挿入語句だから、a porta por onde acabava de entrar というつながりになる。「入ってきたばかりの扉のとこで」ということかなぁ?

試訳
投票には向かない天気だ、第14選挙会場の役員長は濡れた傘を乱暴に閉じ、車を停めた場所からたった今入ってきた扉のところまで、今にも口から心臓が飛び出んばかりに息を弾ませて走ってきた40メートル間、少しも役に立たなかったレインコートを脱ぐと、そう不満を漏らした。


サラマーゴの文章は長いので一日一文というのはちょうど良いかもしれない。とにかく今回は「進捗を気にしない」ように読んでいきたい。


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