はなしか

落語のススメ -変わらない人間の業-

今回は、私の完全なる趣味の話をば。

私は、落語が好きです。不安障害を発症してからは、とんと足が遠のいてしまいましたが、一時期は週に1度は必ず寄席(落語や演芸を行う興行場)に通う程度には、夢中でありました。

落語なんていっぺんも聞いたことないな、という方でも、『時そば』の「蕎麦屋、今、何時(なんどき)でい?」や、『寿限無(じゅげむ)』の「じゅげむじゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの・・・」というフレーズは耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。
そうでなくとも、日曜日の5時30分に放送される、おじいさんたちが座布団を取り合うことでおなじみの『笑点』なんかは、どんな方でも一度は見たことがおありじゃないでしょうか(あれは落語ではなく大喜利ですが)。

落語はおもしろい

最近は漫画やアニメをきっかけとして若い世代のお客さんも増えているようですね。それでもまだ、「落語って敷居が高そう」「お年寄りの見るものでしょ」という方を周りで見かけます。
実際、私が自己紹介で「落語が好きです」と言うと、だいたい「その年で!?渋いね〜!」と驚かれることが多いです。

でも、年齢や固定観念で、一生にいっぺんも見ない、というのは、あまりにももったいない。それくらい、落語は面白いです。

落語ファンには本当にコアな方、それこそ毎日毎日寄席に通っている方などもいらっしゃるので、2年ちょっと好きなくらいの私が今更語る意味はあるのか?という気もしますが、私の目線で捉えたうえでの「落語の魅力」を少しでもお伝えできればと思います。

落語の魅力 -変わらない人間たち-

落語の舞台は大抵、江戸時代です。そして、物語にもよりますが登場人物はだいたい決まっています。脳天気な”熊さん(熊五郎)”、そそっかしい”八っつぁん(八五郎)”、横丁の物知りでちょっと見栄っ張りな”ご隠居さん”、他にもケチな”大家さん”や、お金持ちの商家の”旦那”に甘やかされた息子の”若旦那”・・・他にも花魁やお殿様、職人と、いろんな人物がいますが、だいたい固定メンバーです。

このいかにもバラバラな人物には共通点があります。
それは、「ここまで極端じゃないけど、現代にもまさにこんなヤツ、いるな〜!」と思わせてしまうところです。

例えば、お金があって甘やかしたばっかりに息子が遊び呆けてしまって、家を継がせたいけれどどうにもしょうがない、と頭を悩ませる父親であったり、男を色香で騙して虜にしてしまう悪女であったり、どことなく、「人間って時代を経てもあんまり変わらないんだな」と思わせる部分があるんです。

もちろん、落語は笑い話(泣かせる人情噺もありますが)なので、極端にオバカにしたり、濃すぎるキャラづけが行われていることもありますが、時代背景が変わっても人間の本質は変わらない。そういった部分が、客の共感を呼び、クスッと笑わせたりウルッとさせたりするのかな、と思います。

落語の魅力 -やさしい世界観-

落語には色々と種類があって、怪談話などは、かなり後味の悪いものもあります。ですが、基本的に寄席で演じられているような噺は、たいてい「ホッとする」世界観です。なんだかんだで登場人物が全員オバカだったり、オバカのやることだからと皆が許してくれていたり、騒動が起こってもそれを楽しんでしまうノリがあったり、基本的には「気が楽になるようなお話」が多いです。

昔はご近所づきあいがあって幸せだった、子供の世話はみんなで見れた、といった意見には、私はあまり共感できません。自分がもし落語の世界に入り込めたら幸せかというと、正直ないなあ、と思ってしまいます。いかんせん、コミュ障なので。

でも、どんな存在でも面倒を見てやろう、その場その場を楽しもう、という落語の世界は、なんとも暖かく、潔く、聞いているだけで幸せな気持ちになることができます。

フィクションの中の「リアリティ」

所詮ファンタジー、作り話がほとんどだ、とはいえ、そこに息づいている人々の人生はまさに「リアル」を感じさせます。映画やドラマと違い、声だけの芸なので、キャラクターの顔は自分自身で想像できます。身近な人の顔をあてはめてもよいのです。そこがまた、物語を身近に感じさせるポイントなのかもしれません。

いわゆる古典落語とよばれる、昔の時代を背景にした落語はイメージしづらい、という方は、是非とも新作落語を聞いてみてください。現代が舞台になっているものが多いので、とても想像しやすく、落語入門にはもってこいです。
個人的には、「春風亭昇太師匠」や「立川志の輔師匠」、「柳家喬太郎師匠」から入ることをおすすめします。古典も新作もすべてが素晴らしい師匠方です。

好きなものについて語るとつい熱中してしまいますね。思った以上に長くなってしまいました。
本当はまだまだ語りたいことがたくさんあるのですが、今回はこのへんで。

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