57本目 ANDo Tadao

デビステのてんぷら 57本目 (週刊PONTE vol.58, 2019.12.23)

拙稿を読み返していると、JJF直前の週まで自分の住まいの話をしていた。壁が薄いだの隣人がどうのだの西日がなんたらだの。ここは旅とジャグリングの雑誌。自宅なんていわば旅の対極の存在である。しかし、自宅至上主義の身としては、自宅のソファーよりも気が休まる椅子はないし、畳より寝心地が原っぱなんてのもない。

そう、畳なのである。

3ヶ月ほど前に念願の畳がある家に引っ越しをした(ちなみに引っ越し引っ越しと今まで簡単に書いていたが、「引っ越し」というのは実は貴重な単語で、促音(っ)が漢字と漢字で挟まれているのである。「引っ越し」は表記方法に選択肢があり、他にも「引越し」や「引越」などと書けるが、特に正解はないので個人の好みで選ぶのが吉の模様。おわかりの通り私は「引っ越し」派であるが、前述したように、その理由は漢字で挟まれた「っ」である。このパターンは他に例がほとんどなく、調べてみたところ、引っ張り、切っ先、出っ歯の3つだけなのである。ぜひ皆さんも積極的に促音を漢字で挟んでいこう)。

これまでの壁が薄い家に比して、今度の家は構造物として非常に堅牢。その反面、電気系統がイッちゃっている。ムキムキだけど胃が弱い、みたいなことである。その最たる例が、洗面所の電気だ。この家の洗面所は2方向からのアクセスが可能で、それに伴い電気のスイッチもそれぞれの入り口に付いている。例えば階段の上と下にあるスイッチのように、通常どちらかを押せば消えていた電気が点き、さらにどちらかを押せば電気は消えて真っ暗になる。三路スイッチと呼ばれる仕組みで、これが利便性というものである。

なのにどうしたことか、入居当初、片方のスイッチをいくらパチパチしても洗面所の明かりが点かない。さっきまで普通にONになってたのにおかしい。電気が切れた?縁起でもない。それでいろいろ試してみた結果、わかった。なんと、2つあるスイッチの両方がONになっていないと電気が点かないというANDスイッチになっていたのである。いや、どういうことだよ。めちゃくちゃ不便だ。しかも直しようがない。せっかくの安らぎの我が家だというのに。

まあ、いずれにせよ、自宅は"安堵"の場所だったわけである。

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きんまめ:ジャグリングサークルジャグてっく元部長。くらいしか経歴がない。デビルスティックをやっていました。ホントに壁が分厚いので、夜中に外で酔っ払いが取っ組み合いの喧嘩をしていても、我が家の安寧は破られません。好きなジャグラーは特にいません。
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