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海底の神秘が思い出される旅行記「海底二万里」

🖋Pdf版もございます。

 「海底二万里」は、海の神秘を記した最上の物語の一つです。人類はまだ海の世界を一周する旅に成功していません。ですが、ジュール・ヴェルヌの物語に潜ってしまえば、深海の神秘を探索する冒険に出られます。無敵の潜水艦ノーチラス号の旅には、不可能などないのです。
 ノーチラス号は人類史上最高峰の潜水艦です。世界中の海を行き来できるように、稀代の天才発明家のネモ艦長が設計しました。人が自分の体を動かす細胞のことをよく知らないように、ノーチラス号を動かす乗組員については不思議なことが多いです。ですが偶然にもノーチラス号に転がり込んで来た入場者については、素性が知れています。人々に貢献する人類社会から来た一団、海洋生物学の教授とその助手と屈強の海の漁師の3名です。それぞれが海の専門家で、3人合わされば完璧な海洋生物学者になれます。
 ノーチラス号は、天才発明家のネモ艦長と、ネモ艦長の部下の乗組員と、陸の世界から来た3名のゲストと共に、最後の深海探索の旅を始めます。
 それにしても、ノーチラス号の艦長と海洋生物学者のアロナックス教授は似ています。二人とも海の研究者で、自然が生んだ海の世界の魅力に敬意を込めて熱心に自分の研究成果をまとめています。優秀な助手を従えていて、この人のためなら苦難も共にすると思わせるカリスマがあります。二人はノーチラス号の最終航海で出会って、海の世界を一周する危険な旅を成功させます。そして旅が終わって、また二人はバラバラになってしまいました。同じ魂をもった正反対の二人は、深海探索の旅の期間だけしか一緒にいられませんでした。
 一人は元居た海の底に消えて、一人は元居た陸の世界に帰還しました。陸に帰還した海の研究者は、自分とネモ艦長だけが海の底を探索したと答えます。しかし、そうでしょうか?海底二万里に潜って世界を一周したのは、ノーチラス号です。ネモ艦長と潜水艦の乗船者は船の中にいました。海の世界に潜って世界中の海底を探索した初めての人類は、まだ誰も見たことのない海底世界を想像することを委ねられた読者ではないでしょうか。

「海底の神秘が思い出される旅行記「海底二万里」」完

©2024陣野薫



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