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超要訳 「フラットランド」幾何学の最良の手引き

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 幾何学の世界というと、図形や数式を分からなければ何もついて行けない気持ちになりますが、「フラットランド」の主人公の正方形は優しい考え方で幾何学のなんたるかを物語ってくれます。E.A.アボットは19世紀のイギリスを幾何学の世界に例えて「フラットランド」を執筆しました。主人公は2次元世界で暮らす正方形です。
 フラットランドと呼ばれる2次元世界には、正方形や三角形や円や線がいて、多角形ほど高い地位にいます。世界はフラットランドでしかないと思い込んでいた正方形は、ある時に夢で1次元の世界を訪れます。1次元世界の住人は、正方形がどれだけ口で説明しても2次元世界を理解しようとしません。低次元の住人は、高次元の世界を説明されても理解できないのです。正方形もそれは同じで、ある時に3次元世界から来た球体が目の前に現れても、2次元の常識から逸脱している3次元の本質をなかなか受け止められませんでした。それが本当に3次元世界にいくと、実際に目で見て耳で聞いた自分のいる世界よりも高次元の世界に心が掴まれてしまいます。正方形は2次元世界に戻ると、3次元について皆に説明しようと努力します。しかし2次元の図形で3次元を理解することが出来たのは、実際に3次元世界を訪れた正方形だけでした。正方形は異端思想を吹聴した罪で犯罪者にされて逮捕されてしまいます。
 正方形は、0次元、1次元、3次元を訪れてから、2次元世界のほかに沢山の次元世界があることを知って、自分のいる世界の常識が多次元に広がる世界のある一例でしかないことを受け止め、次元が世界を上昇させたり下降させたりするのを捉えて、世界が規則によって表されていることを知り、考えもつかないような広い世界に思いを馳せるようになります。2次元世界の囚人にされようが、他の次元に思いを馳せる正方形には大した意味はありません。もっと広い世界では自分が正しいと既に知っていて、3次元の世界よりも高い次元の世界について知りたいと思っているからです。なんであれ始めは分からないことだらけでも、なんだか少し分かると、もっと分かったあとの先を想像してワクワクする。今よりももっともっと高次元の世界に進めば、辿り着く先はとても魅力的な世界にちがいない。「フラットランド」は、数学者だけが知る発見の素晴らしさと高揚感が開放された幾何学の冒険物語です。正方形の前に現れた球のように不思議を連れてやって来て、世界を見る目を変えてくれます。

「超要訳 「フラットランド」幾何学の最良の手引き」完

©2024陣野薫

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