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第一印象は、その曲そのものだった。

等間隔で並ぶ沢山の作品と、自分だけが場違いのような緊張感の中で、それでもこんな機会は二度とないのだからと、ひとつ一つと向き合う。

どのくらいの時間だったか覚えていない。
もう選べない作品も含めて、心の底から「これが良い」と思った。

あの時、あの場にいた人*しか、その作品を選んだことを知らない。
他の人に言うつもりはこの先もない。
けれど、どういう理由で選んだのかは残しておきたい。
自分なりの方法で、作品とあの時間を大切にしたい。

世の中には言わなくてもいいことがある。
一方で、晒されたとしても伝えたいことが稀にある。

時間軸があるとして「変えられない過去」と「未知の未来」を比較したら、一般的には希望も込めて「未知の未来」の方を明るい色で表す。右側面の文字からもそれが窺えたのは昨年春の話。

ただ、ずっと眺めていると時間軸が逆にも見えた。
トンネルの出口のように奥に向かって光が広がる先は、未来ではなく、もしかしたら「既知の過去」や「予定調和な現在」なのではないか。

すると途端に、
光が広がる作品の奥へと歩を進めていたキャラクターが背の向きを変えた。
目が合った。
作品を見ている「現在」の私の方へ、こちら側へ迫ってくる。
作品自体から出ていこうとしている。
覚悟はあるのかと真っすぐに問いかけられているようだった。

「未知の未来」の明暗は、見ている者の心のあり方によってきっと変わる。
何かに迷った時、これを眺めたら自分を映してくれる気がした。

曲の印象と、この作品の印象。
共通点と相違点が複雑に絡み合う。
それでも根底に通ずる何か。
私にとって奇跡みたいに完璧なコラボレーションだった。


結びに。
本来、私なんかが足を運べるタイミングではなかったのに快諾していただいた事、皆様に温かく接していただいた事、素晴らしい作品に巡り合えた事、すべてが宝物です。本当にありがとうございました。


*正確には、作品のピックアップまでやりとりをした方がもうお一方います。とても丁寧に対応していただきました。その後も折に触れてご連絡をいただき、恐縮しつつも足を運ぶ度に素敵な出会いがあり感謝は尽きません。いつもありがとうございます。

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