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リズムと光の粒

アナウンスから始まった25分間の
すべてが「それ」だった

あの曲の最後の音から繋がるように
時間が歩き出す

  やさしさと思いやりが
  きらきらと詰め込まれた
  最初の一音を聴いた時
  わたしが泣いたことを誰も知らない
  どうしてもうまく言葉にできず
  何も伝えられないまま電車に乗る

    色んなものが繋がっていく
    橘月の雨粒に隠していた
    ゆらぎ
     アンフラマンス
      インターフェース
       別々で、同じで、別々の。

  電車に揺られながら位置を知る
  思考は否定ばかりするけど
  直感だけは静かに澄みきった声で響く

真っ暗闇に美しい光が確かに差し込んでくるのに
よりいっそう胸が締めつけられるのは
光の粒がモールス信号のようで

 それはずっとわたしが
    きっとあなたは
 別々で、同じで、別々の。

こらえきれずぽろぽろと
涙がこぼれたことをあなたは知らない

    人は分かり合えないものだと定義した
    その方が楽だから
    すれ違うことが日常なら自分を消して
    みんなすり抜ければいい
    まとわりつく無力さの苦しみに耐えられず
    ずっと、気づいていないふりをしてきた

なのに、向き合って
心の内を取り出して渡してくれる
奇跡を知ってしまったから。

  帰りの電車に揺られながら色んな人を眺める
  当たり前だけど、ふたつとして同じものはなく
  喜びも悲しみもそれぞれに抱えながら
  妙なるリズムを刻んでいく
  人生も「オートクチュール」と呼べるだろうか

  もし全てが書かれたスコアを見ることができたら
  本当はどこかで調和しているって分かるかもしれないのに

  同時に、自分とは全く違うはずの人が
  別の選択をしたもうひとりの自分のように見えて
  何が好きで、なぜそう思うのか
  何を考え、どう感じているのか
  知りたくなるほど愛おしい
  
  別々で、同じで、別々の世界。




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