静謐な発光
張られた経糸の長さは見えないまま
シャトルと綜絖のリズムは続く。
雪の結晶のように
人がそれぞれ固有の幾何学模様だとしたら
この手を冷たくしている理由は
然程ないのかもしれない。
切れてもまた繋げられる緯糸。
色も素材も変えながら託していく。
裏と表を行きつ戻りつ
二本の光に沿って世界を縫い合わせる
繊細なステッチのメロディ。
洞窟に描かれたモチーフが
その位置でこそ最適な音像を結ぶように
長い年月に深く埋もれていても
静謐な発光は脈動している。
呼応を待っている。
風が変われば
砂をさらって姿を現す。
新しい波を作りながら
砂は舞い、呼応する。
紗になった時
真っ更な音が見えた。
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