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無力であることは、有力だ。

僕はチームというものが大好きだ。点を取って仲間と喜び合うあの感覚。それが昼休みのバスケットボールであっても、放課後のドッジボールであってもいい。幼い頃からそれが大好きだった。

その頃、僕の先輩にめちゃくちゃサッカーが上手い人がいた。その先輩は、戦況に関係なく自分がボールを受けると真っ先にドリブルをする。彼はエゴイストだった。パスなんて一切考えていない(否定ではない、時にそれが正しい事もある)。

そんなことが続いたある日、試合に負けて納得のいかない僕は、先輩にこう言った。

「A君が俺にパスをしないなら、俺もA君にパスはしない(よし。正論だ。俺が正しい)」

すると、それを聞いていた監督がこう言った

「憲っ!!何でそんな事言うんだ!」

それは酷く怒られた。僕は自分が正しいと思っているが、大人の圧力に負け何も言い返せなかった。フットボールの中に存在する「個人」と「チーム」。この二つの、目に見えない相関性を感じたのはこの頃からだったと思う。自分のためか?チームのためか?

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自分のフットボールライフを振り返ると、僕は常々 チームのためを重視してきた人間だと思う。気がつけば、チームが結果を出すためにできることを探していた。しかし、僕がプロのフットボーラーになり、この考え方が一転する。それはなぜか。

僕はプロ(職業)として生きていかなければならないからだ。これまでの、過去になっていく仲間との思い出作りではなく、自分の未来を作らなければならない。ハッキリ言ってチームどころじゃない。そんな危機感に駆られた。

ちなみにその当時の僕の目標は「個人的にでもいいから結果を出して日本代表になる」だ。当時はプロで生き抜くために、利己的でいないと不安だったのかもしれない。

しかしそれも、徳島ヴォルティスでキャプテンを任されることになり少しずつ変化することになる。僕は 2017年から今現在まで、徳島ヴォルティスでキャプテンをやらせて頂いている。キャプテンをやるからにはチームのことも少なからず考えるようになるのだが、とはいえ自分が良いパフォーマンスをすることを重視していた。7:3(個人:チーム)くらい。

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2018年、突然自分の範疇にない大きな壁にぶつかった。フットボール人生で初めて、チームが崩壊するのを目の当たりにしたのだ。僕は何も出来ずに ただ傍観していた。いや、傍観するしかなかったが正しいかもしれない。僕はキャプテンとして、この状況を好転させるだけの手札を何一つ持っていなかったからだ。崩壊したチームにいる僕は強烈な虚無感に包まれていた。何か事があれば解決策を思考したが、何も見つからない。

他の選手たちは、他人に責任を押し付けてその場をやりくりしていたように思う。誰一人楽しそうじゃないし充実した顔もしていないように僕の目には写った。掲げたチーム目標が達成できていないのは言うまでもない。

悩み葛藤する日々が続いたが思考を積み重ねた結果、プロになってから利己的だった自分を恥じるべき仮説が生まれる(原点回帰)。

「良いチームであるならば、個人に成果は返ってくるのではないだろうか?」

岩尾は思った。「今までにサッカーを教えてくれる人は沢山いたが『チームとは何か』『組織とは何か』を教えてくれる人はいなかったということを」

であるならば、サッカー界から飛び出す必要があるということを確信した。

毎年選手が入れ替わるのがこの世界の摂理だ。今年は選手が良くて当たり年。今年は選手が揃わなくてハズレ年。選手寿命が短いこの世界の貴重な1年を、まるでくじ引きをするみたいに過ごすのは、キャプテンとしてはナンセンスだと思った。

ならば学ぼう。どんな人と一緒になっても良いチームを作れるはずだ。そう思った。そんなシーズンを、井筒陸也(外の世界マニア)と過ごせたのが僕にとって不幸中の幸い。僕はすぐにサッカー界を飛び出して、チームとは何か、リーダーとは何か、キャプテンとは何かを探した。

すると「答え」はないが「気付き」や「選択肢」は無数にあった。この発見が今とても生きている。

「良いチームとは何か」
「良いリーダーとは何か」
「良いキャプテンとは何か」

その答えはわからないし、もしかしたらこの先ずっと見つからないかもしれない。それでも追求することに意味があるはずだ。

この問いは、もしかすると フットボールの垣根を超えて、一般社会や教育現場にも精通する部分があるのかもしれないと僕は思っている。そして、それが僕にとっていいヒントやキッカケになるのかも知れないと期待している。

「会社におけるいいリーダーとは何か」
「学校におけるいいリーダーとは何か」
「クラブにおけるいいリーダーとは何か」

もしかすると、僕が探している「いいチームとは何か」「いいキャプテンとは何か」と、それらは似て非なるモノかも知れない。でも、そこに何かヒントがありそうだ思っている。今はそれを信じて追求したい。

何だかんだそれっぽい事を言っているが、ひとりで考えていても到底わからないので、僕は「ZISO」でこの解を探したいと思う。


キャプテンとは何か。


ZISOよ、僕に教えてくれるか?


岩尾憲


NEXT TALK↓

4月21日(火)20:00〜

井筒 陸也(Criacao Shinjuku)
岩尾 憲(徳島ヴォルティス)
小林 祐三(サガン鳥栖)
山田 大記(ジュビロ磐田)

TALK#3「キャプテンとは何か」

配信URLは、ZISO Twitterからお知らせいたします。


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