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『フットボールは必要か?』 (本記事は ZISO TALK #1のテキスト版です)

ZISOは、領域にとらわれず “フットボール” を追求するひとつのチームです。現役 Jリーガーを中心に、クラブやスポーツの垣根を越えて、多種多様なプロジェクトの組成を目指しています。

ZISO TALKは、新型コロナウイルスの影響によって、Jリーグが延期になったことを踏まえて、ローンチ前のZISOが 先行でスタートさせたメディアプロジェクトのひとつです。

本記事は ZISO TALK # 1『フットボールは必要か?』 のテキスト版です。

※ <Part 1/3>はこちら

ZISO TALK # 1 <Part 2/3>

【参加メンバー】
・井筒陸也(Criacao Shinjuku)
・小林祐三(サガン鳥栖)
・山田大記(ジュビロ磐田)
・岩尾憲(徳島ヴォルティス)

https://youtu.be/E2zn1dqZS4g?t=2853
(以下、動画 47:33〜)

コロナ禍だからこそ考えたいスポーツの価値

井筒:あらためて今日のテーマは「フットボールは必要か?」っていうところで、みなさん他に意見はありますか?

小林:そうですね。さっきも言いましたけど「スポーツの価値」というものを今この時に言われても、どうしても僕はピンとこないというか。最初にこうやって話すこともフットボールだと言っておきながら矛盾するかもしれないけど、ほとんどのアスリートは機能停止状態で「この状況が収束したらみなさんスタジアムに来てください」と言うのはちょっと違うなというふうに思っています。

 こういう時こそプレーヤーたちは、自分たちがこういうふうになった時に社会のために何もできないていないことを一旦受け入れるべき。そこを受け入れないで「今はこういう時期だから」と流してしまって、「収まったら僕たちはスタジアムで全力を尽くします」というのは違うと思う。それでいいのかもしれないけど、もう少し踏み込んで考えてほしいというか。自分にとってのフットボールがどういうものかを考えるきっかけにしてもらいたい。

 家の中でじっとしていなきゃいけないのはみんな一緒で、色々なものをSNSにあげたりする貢献の仕方もあると思うけど、もうちょっと内向きに、自分たちが人生を賭けてきたものはこういう状況で簡単に取り上げられてしまうものなんだと考えてほしい。少し言葉は乱暴ですけど、今までみたいになんとなくプレーをして、なんとなくお金もらってという考えが通用しなくなったらいいなと思いました。

井筒:やっぱり僕らは物心ついたときからフットボールが始まっているので、自分にとってフットボールが何かって考える機会がなかったなというふうに思ってる。音楽やその他のカルチャーの人たちは今、自分のやってきたものが取り上げられてどういうふうに困ってるのかとか、自分にとってそれが何なのかということをすごく考えて、しっかり言語やビジュアルに落として世の中に発信している。

そのなかで、僕らはは生まれたときからに近いくらいの感覚でフットボールをしてきて、そもそも自分にとってフットボールが何なのかを考えてこなかった。そういうところがあるんじゃないかなという話を、祐三さんとしていました。

小林:選手は選択をしていないという話もしましたね。結局、どんな職業の人でもだいたい18、19歳、もしくは大学卒業して22、23歳で選択をしています。あるいは大人になってからも職業を変えることがありますけど、この世界にはそういう形で入ってくる人がいない。色々悩んでから、やっぱりもう一回フットボールをやろうと思って25歳くらいからプロの第一線に入ってくる選手はいない。

 でも、もしそういう選手がいたら、自分にとってやっぱりフットボールが自分にとって必要だという意志や、どんな人にフットボールを届けたいかというモチベーションがあって選ぶと思います。でも実際は僕もそうですけど、ハードルの高さ的にどうしてもほとんどの人が物心付く前からプロを目指してやってきている。だから、フットボールを選んでいない人があまりにも多いかなという話はしましたね。

“みなさん、フットボールを辞める選択肢はありますか?” 井筒陸也

井筒:これ打ち合わせにない質問していいですか?(笑) みなさん、自分やフットボールのことを客観的に見ていると思んですけど、フットボールを辞める選択肢はありますか?。僕はもうJリーグを辞めたんですけど、たとえば憲くんはフットボール、Jリーグを辞めようとか、フットボールが自分にとって必要じゃないなと思う瞬間ってありますか?

岩尾:必要じゃないなと思う瞬間はないけれど、個人的にはコミュニティーをどう良くしていくかみたいなところがテーマにある。

井筒:コミュニティーというのは徳島のですか?

岩尾:そう。例えばチームなら、三十数人もいる選手たちをどうやって良くしていくのか。自分の人生もそうだし、他の選手の人生もそう。そういうことに興味があるし、好きでもある。だからチームから出なきゃだめだという感じに縛られてはいないです。

井筒:フットボールの好きなところ、嫌いなところも聞きたいと話していたんですけど、そんな中でも憲くんが思うフットボールの好きなところ、いいところはなんですか?

岩尾:めちゃくちゃ疑問なのは(フットボール選手の)雇用形態って誰が決めたんだろうってことです。僕らは個人事業主じゃないですか。でも、本当に個人事業主じゃないとだめなのかなって思っています。それがゆえに一つのチームで、一つの目標を追ってるのか、追わされてるのかちょっとわからないくらいにバラつきが生まれてしまう。

 極論、自分が結果を出せばいいみたいな人もいますけど、それじゃあチームとして勝てないと思います。(個人事業主であることが)難しくしている一つの要因なんじゃないかと考えると、その部分はちょっと嫌いなところ。

井筒:そのあたり、お二方はどうですか?

小林:いや、今まであまりそこは考えたことなかった。

井筒:やっぱり個人事業主感強いですよね。

小林:そうだね。それが当たり前というか完全に考えが凝り固まってましたね。一本取られた感はありますね(笑) 誰が決めたんですかね。ちょっとあまりここは踏み込まないほうがいいかもしれないですね(笑) 憲くんがフットボールの好きなところはどこですか?

岩尾:好きなところですか? あんまないですかね(笑)

山田:なんかみんなフットボールが嫌いな人みたいになっちゃう(笑)


永遠のテーマ、いつ辞めるのか

井筒:大記さんはフットボールを辞めようと思ったりした時ないですか?

山田:マジでないなあ。

井筒:どういうところで必要だと感じますか?

山田:まず1つはさっきの祐三さんの話を聞いて、僕はまさしく選択をせずにフットボールしかやってきてない人間だから、そこがまず一つだと思う。未だに辞めるという選択肢を持ったことがない。あとはやっぱりプレーするのが好きなのかな。色々嫌なこと、腑に落ちないこと、不公平なこととかたくさんあるけど、やっぱりやってて楽しい。「辞めるか?」って聞かれたら、間違いなく絶対やりますって言うすごくシンプルなことですね。

 フットボールをやっている理由を考えてみたけど、ちゃんと自分の中で大義名分みたいなものを見つけられなくて、結果的には感情でやってるのかなって。ちょっとZISOっぽくないかもしれないけど。

井筒:でも永遠のテーマじゃないですか? いつ辞めるのかって。言ってしまえばキリがないじゃないですか。もちろんクビになるっていうのはあると思いますけど。本当に自分にとってフットボールが必要であれば、カテゴリーを落としてでもやるっていうことだし、そうじゃないならお金がもらえるならやる、みたいな選択肢もある。そこがみんなはっきりしてないから、辞めるタイミングを迷っている。

山田:少なからず、嫌な部分はある。納得できない部分とか。どんな仕事でもそうだけど、これはちょっと納得できないと思いながらもやらなきゃいけないこととか、単純に自分が試合に出れなくて嫌な思いをするとか、負けて悔しいとか負の感情みたいなものはプレーしていれば絶対に生まれてくる。身体もどんどん動かなくなってくだろうし、プレーする喜びとか勝った時の喜びとか、選手でいられることで自分が得られるものと、自分がマイナスに感じる感情とそれを天秤にかけてマイナスが勝った瞬間が引退の時かなと思っている。今はまだわからない。

コロナ禍で訪れたアスリートの疑似引退

小林:お二人(山田、岩尾)に質問なんですけど、自分で辞めたいですか? それとも辞めさせられたいですか?

山田:絶対に自分で辞めたいです。

岩尾:考えたことないですけどねえ。どっちでもいいですね(笑) 辞めさせられるっていうのも定(さだ)め感があっていいなと思いますけどね。「お前はもうこの世界の者じゃない」って言われた感が。

井筒:今なんてまさに辞めさせられてる形じゃないですか。(新型コロナウイルスの影響で)取り上げられている形。今感じていることがそれに結構近いような気はしますね。

小林:そうですね、確かに。今これは疑似引退だからね。まだ練習しているチームはあんまりそういう感じしないかもしれないけど。今は給料ももらっているから、そこが決定的に引退とは違うところだけど、感覚的にはそういうものなんだと思います。今まさにそれを味わえて、本当に不謹慎な話ですけど、それくらいのスタンスじゃないといけないかなというふうに最近すごく考えますね。


<Part 3/3>へ続く

※この記事は、ZISOメンバーによる配信【ZISO TALK # 1「フットボールは必要か?」】の文字起こしを、編集したものです。

written by
石川遼/Ryo Ishikawa
https://twitter.com/RyoIshikaw_a

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本日 6/6 (土) 20:00〜



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