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『フットボールは必要か?』 (本記事は ZISO TALK #1のテキスト版です)

ZISOは、領域にとらわれず “フットボール” を追求するひとつのチームです。現役 Jリーガーを中心に、クラブやスポーツの垣根を越えて、多種多様なプロジェクトの組成を目指しています。

ZISO TALKは、新型コロナウイルスの影響によって、Jリーグが延期になったことを踏まえて、ローンチ前のZISOが 先行でスタートさせたメディアプロジェクトのひとつです。

本記事は ZISO TALK # 1『フットボールは必要か?』 のテキスト版です。


ZISO TALK # 1 <Part 3/3>

https://youtu.be/E2zn1dqZS4g
(以下、動画1:02:35〜)

【参加メンバー】
・井筒陸也(Criacao Shinjuku)
・小林祐三(サガン鳥栖)
・山田大記(ジュビロ磐田)
・岩尾憲(徳島ヴォルティス)


地域とつながるフットボール

井筒:質問も拾っていきましょうか。「サッカー(フットボール)経験者ではないけど、愛するクラブがあるのとないのとでは人生の色が全然違う。クラブを愛するのもフットボールの根源的な面白さがあるから愛している」。いいですね、こういうの。

山田:むしろそういうところだよね。フットボールが発展してきたのって。そもそもプレーする喜びよりも、応援する人の力でフットボールが発展している気がする。

井筒:こういう時に、より感じますよね。ジュビロだとツイッターとかで、地域の人向けに色々な取り組みしてますよね。

山田:一応やってはいるけど、やっぱりもっとできることあるなとは思う。黄金期があったからうちはすごくたくさんのサポーターが付いてくれていて、ありがたいことに本当に支えようと思ってくれてる人がたくさんいる。

 でもたくさんの地域の人が困っているときに、クラブがそれを救済するネットワークを持てているかというと持ててない。やっぱりまだ地域とちゃんと繋がれてない。本当の意味で根づいてはいないんだなというのはすごく感じています。

井筒:徳島はどうですか? 徳島はまだ練習も止まっていないですけど。(※配信日は2020年4月12日)

岩尾:でも山田が言ったのと少し被るけど、こういう緊急事態になる前からもっとできることがあったなというのはすごく感じています。そうしたなかでこうやって自粛ムードが広がるとなおさら無力というか。ローカルだからこそ地域に対して、フットボール以外のところで選手に何ができるのかというところが問われているのに、なかなかアクションを起こせないっていうのは悔しい。

YouTubeチャンネルで選手たちがアクションを起こすみたいなことはやっていて、それも一ついいことだと思いますけど、より地域目線があったらいいなと日々思っている。磐田は飲食店のPRとかしてたよね。

山田:鹿島アントラーズはホームページを作って、鹿島の紹介とかをしている。結構早い段階からクラブの人とも、そういうの作ったほうがいいって話をしてたんだけど、結果的にはハッシュタグを付けて発信するくらいに留まっていて、しっかりとプラットフォームを作れているかというと全然作れてない。さっき岩尾が言ったみたいに、こういう時に問われると文脈でいくと、全然機能しきれていないかな。

 クラブにも地域に対して何かしたい思いはあるんだろうけど、やっぱり土台が作りきれていない。本来なら地域の中で、クラブを通してスポンサーなりサポーターなり地域の人が繋がる場所であるべきなんだけど、そういうちゃんとしたプラットフォームになれてないから、こういう有事のセーフティーネットに転用できない。その課題感はすごく感じている。

最初に「フットボールは必要か?」のところで、人によって引き出しにきている価値が違うっていう話をしたけど、クラブはそういう色々な価値を提供できなきゃいけない。今はまだクラブが「試合を観にきてください。頑張って試合に勝ちます」という価値ばかりを全面に出そうとしている。もっと色々な価値の出し方があるはずなんだけど、追求できてないのかなとすごく感じています。

ZISOの共通認識「夢は持てなくてもいいよ」

井筒:それぞれの所属クラブで全力を尽くすというところは大前提として、そんななかで「ZISOだからできることはありますか?」という切れ味のある質問もきています。

山田:それはステートメントを作り上げるところで、僕らそこに関してはめちゃくちゃ明確になってない? それって僕ら(がZISOだからできること)でいいのかな? 僕がZISOを通してじゃないとできないことって意味なのか、ZISOだから社会に対してできることっていうこと?

小林:社会に、じゃない?これは。

井筒:こういう事態なので少し話はずれるかもしれないですけど、「夢は持てなくてもいいよ」という共通認識は僕らの中にあるじゃないですか。

小林:ありますね。

井筒:これは説明が必要かもしれないですけど、Jリーガーは誰もが夢を追いかけて諦めずに頑張ってやってきて、フットボールが大好きで、悩みなく憧れの舞台でプレーしてますってイメージがあるかもしてないですけど、実際は「全員が全員そんなわけねえ」というのが、ある意味で僕らが集った理由なんです。そういうのもまずはフットボール界に発信していきたい。そういう人たちがいるってことを僕が1年目とかに知ることができていたら、勇気をもらえたなと思っている。「全員が全員そうじゃないんだ」というのは知りたかった。

 ZISO立ち上げ当初のニュアンスで言うと「夢を持たなくてもうまくいかなくてもそんなの当たり前、Jリーガーもそうじゃないよ」ということは伝えたいと思っていた。僕らもこういうコロナのご時世に何をしていいのかわからないし、モヤモヤしてるんだよって伝えることは価値なのかなと思いました。

夢ハラスメント

小林:ちょっと異様なまでに「キラキラしてなきゃいけない」と思われているところがあるからね。「選手はこうあるべき。夢の職業だから」とか。あれ言われるのすごくきつい(笑)。

 小学校とか中学校、高校に行って「夢を持つことの大事さを語ってください」と言われるのも僕はきつくて。僕は「夢を持って、それに向かって進んでいけ」みたいなやつを「夢ハラスメント」と呼んでいます。それはいいんですよ。夢を持った時点でほとんどは進めるじゃないですか。

 でも夢を持てない子のほうが多いし、自分が何したいかとか何が好きなのかって案外難しい。それが持てること前提で話されても、そういうのがなくて苦しんでる学生とかのほうが多いと思うんですよ。そうした時に、さっきの話に戻りますけど、幼少期に知らず識らずのうちに選んでたものが夢となり、もちろん僕も夢がプロ選手だったので夢を持ってやってましたけど、それは本当に稀なパターンで、ほとんどの人がそうじゃないので、夢が持てなくても「それが普通だから」ということを伝えていきたい。

うまくいかなくてもそれが普通(大多数)。実際、フットボール選手になってみたものの、今まで夢に向かって進んできたから夢を持たなきゃいけないんじゃないかって最初にすごく思っちゃったけど、でもうまく(夢を)持てなくて苦しむという過程は他の仕事の人や学生たちとも一緒だと思う。そういうことはここで声を大にして言いたいなと思います。ここにいるみんなは、悩んでこじらせてるメンバーだと思っているので(笑)

井筒:「向き合ってる」メンバーです(笑)

山田:でもそれも一つですよね。祐三さんからしたら、成功していると思っていた人の実感が、実際はそうじゃなかったという話とか、僕も全く同じ経験を(している)。ドイツにいるときに岡崎さんとか長友さんに会いに行った時に全く同じことを感じた。自分からしたらめちゃくちゃ成功している人が全然そうじゃなくて、めちゃくちゃ苦しんでて「そうなんだ、やっぱり。自分から見たら成功している人も実際はそうじゃないんだな」というのにすごく勇気づけられた。

 僕らは一応夢を叶えた人って見てもらえる立場にいるから、逆に僕らがもがいているところとかを見てもらって、何かしら感じてもらえたりっていうのはあるかもしれない。あとは単純に一緒に話したいですよね。今質問してくれた人がどういう意図で話をしてくれたのかわからないけど、すごくいい質問だなと思って、その人とかにも入ってもらって(話したい)。

 僕らは結局、選手の立場からしか「フットボールは必要か?」をディスカッションできてない。サポーターなり色々な角度から見ている人と話したい。それでお互いに学び合えたり共有できるものとかがきっとあると思うから、それってZISOでできそうなものであり、ZISOでしかできないかもしれないなと思いました。

小林:やりたいですね、それも。

山田:やりたいですよね。入ってほしいな。

岩尾:今パッと客観的に見てみたら、すごく葛藤してめちゃくちゃネガティブなところから悩み苦しんでる人たちに見えたんですけど、でも僕ら的にはそれすら楽しんでいる節がありますよね。そこは見ている人が勘違いしてたら嫌だなと思っている。

 その課題が出た時に、ここにいるメンバーでこうやって話すのも、本を読むのも、誰かに会うのも、その過程を楽しんで、本当の答えかはわからないけど何となくそれらしいものを見つけたときの喜びみたいなものがあるじゃないですか。そこが僕は楽しい。めちゃくちゃ葛藤集団みたいになっちゃってますけど(笑)

井筒:昨日、祐三さんとも話してましたけど、課題があることは人生を豊かにすると思っているんですけど、フットボールをやっていると課題は圧倒的に誰かから与えられるものなんですよね。試合を用意されて「はい、戦ってください」「勝ってください」みたいな。そのために自分がどういうふうにやるのかを悩むと思うんですけど、それは常に与えられるもの。そうじゃなくて、自分で課題を発見して取り組んでいくことは楽しいですよね。

小林:そういうこともまさに領域を跨いでやっていくということですね。


※この記事は、ZISOメンバーによる配信【ZISO TALK # 1「フットボールは必要か?」】の文字起こしを、編集したものです。

written by
石川遼/Ryo Ishikawa

https://twitter.com/RyoIshikaw_a

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