醒めるまで延命治療

「夢みたい。」
私は幸せな時こう言う。
「なにそれ。」
そう言うと彼は笑いながら、ちっともわからなそうな顔をしている。
「夢だよ。夢なんだよ。わからない?」
「わからん。」
「とにかく夢なの。夢の中だよ。幸せなの。」
「そっかぁ。」

彼は気づけない。
彼は私といる限り夢の中にはいけない。
それは彼が本当に私を求めているわけではないから。
彼が求めている人は他にいるから。
それを私は知ってるけど知らないフリ。
まだ、少しだけ延命治療。
少しだけ夢をみていたいの。
まだみさせて、醒めるまで。

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