カタンで学ぶ、ユーザビリティに関する10のヒューリスティクス

ヤコブ・ニールセン氏が提唱する「ユーザビリティに関する10のヒューリスティクス」という概念があります。ヒューリスティクスとは、「ざっくりとした答えを導きだすための公式」みたいな意味です。

これらが達成されているかどうかで、そのシステムが使いやすいかどうかが分かるというものです。ユーザビリティのチェックリストとして広く知られています。

主にWEBページや機械の操作パネルなどのインターフェースで利用されているようですが、ボードゲームのデザインにも応用できそうです。

そこで今回は、世界一売れているであろうボードゲーム『カタン』を参考に、これを学んでいきます。カタンを選んだ理由は、世界中で売れているゲームならつまり、世界中で遊びやすいようにデザインされていると考えたためです。

『カタン』のイメージ。画像は販売元のジーピーより引用

1.システムの状態がわかるようにする

ユーザーが画面を見れば、現在どういう状態なのかを分かるようにしましょう、ということです。エラーが出ているなら何らかの方法でそれを知らせ、ユーザーが次に取るべきアクションを促します。

カタンは最初に勝利点10点を獲得したプレイヤーが勝ちなので、「知るべき状態」とは、「誰がどのくらい勝利点をもっているのか」かと思います。そしてそれは、盤上を見渡せば簡単に分かります。

例外として発展カードに書かれたポイントは見えません。ですが場にあっても使用されないので、他のプレイヤーには何となく察しがつきます。このように、カタンでは各プレイヤーの状況がそこそこ分かりやすいため、プレイヤーは誰に対してどういうアクションを起こせばいいのかの判断がしやすくなっています。

2.現実世界にマッチしたシステムを作る

たとえばWEBサイトに表示されている言葉がhtmlだと、読みにくそうです。ユーザーが読みやすい、慣れた言葉や概念で表現しましょうということです。

カタンのルールブックが現地の言葉に翻訳されていることは言うまでもありません。特筆すべきは、コンポーネントが特定の言語に依存していない点です。

資源の産出場所を決定するパネルはアルファベットと数字で書かれており、資源と建築レートを説明するプレートはイラストで描かれています。最大騎士力・最長交易路というボーナスや盗賊のルールなどの例外はありますが、覚えるのは難しくはありません。

極端な話、僕は今から突然ドイツやサウジアラビアの人とカタンをやれ、と言われても大丈夫です。これは1プレイ30分以上かかるゲームとしては異例ではないでしょうか。カタンのコンポーネントは、全世界的に「理解しやすく」つくられていると言えるでしょう。

3.ユーザーに操作の主導権と自由を与える

ユーザーは操作を間違えたりするものなので、簡単にやり直しが効くようにしよう、ということです。

この点においては、カタンだけでなくボードゲームはたいてい問題ありません。取り返しのつかない操作というものはあまりありません。誤って引いたカードは戻せばいいし、時間があるなら最初からやりなおせば誰も困りません。

4.一貫性を保ち標準に倣う

用語や状況や動作に対して、他のアプリケーションと異なるUIを採用してはならない。つまり、ボタンのデザインなのに、押すのではなくドラッグさせるみたいなUIにするなということです。

カタンにはそういう特殊な動作や奇妙な因果関係はありません。サイコロは振って出た数字を利用するし、麦畑からは麦が産出します。ボードゲームのよくある動作や、現実の法則が採用されています。このように、プレイヤーが「ピンとくる」ようなデザインがなされていることも、人気の理由かと思います。

5.エラーを防止する

間違いが起こった時にリカバリをするよりも、そもそも間違いが起こらないほうがいいということです。

先に話したように、カタンのコンポーネントには文字が少なく、それが「誤解」が生まれる余地を減らすのに貢献していると思います。文字があると個々人によって解釈の差が生じるかもしれませんが、イラストであればその危険性は減少します。

ただまったく別角度で一点言うなら、ジーピー社が国内で販売しているカタンの箱は収納性がいまいちです…しっかり仕切られていないので、箱を持ち運ぶと中身がシェイクされてしまいます。対策をしていないと小さなコンポーネントがバラバラになってしまい、紛失するリスクがあります。僕は百円ショップで買ったビニール袋に種類別に分けるようにしています。

6.思い出させるのではなく認識させる

するべき動作や選択肢は目に見える形で示し、ユーザーに何かを思い出すという負担をかけないようにしましょうということです。選択肢が3つなら、入力フォームはテキストボックスじゃなくてラジオボタンにしたほうがいいって感じです。

カタンでは、プレイヤーが手持ちの資源を用いてできることが、各人に配られたプレートにイラストで描いてあります。それを見れば自分ができることはわかります。ただ、プレイ全体の流れ自体など、ある程度のルールは頭のなかで理解する必要があります。

ちなみにこれを達成できているボードゲームとしては『スティッキー』があります。こちらは3歳児だとしても、見るだけでルールを理解して遊べます。

7.柔軟性と効率性を持たせる

作業を効率化できる仕組みを用意しよう、ただし初心者にそれを強制しないようにしよう、ということです。ある動作をおこなうのに、ショートカットキーを使うと便利だけど、必ずしも使わなくていいよという状態をつくることでしょう。

カタンにおいては、ルール説明のプレートは慣れれば慣れるほど要らなくなってきます。また、交渉して各自の資源を交換することができるルールがあるのですが、個人的には熟達してくると交渉をあまりしなくなる気がします。交渉というシステムはショートカットされることがあるのです。

どんなに熟達したインターネットの使い手であろうと、ログイン画面自体を避けては通ることはできません。ですがアナログゲームではルールにのっとっている以上、プレイヤーがそれを行わないというやり方でショートカットが可能です。

8.最小限の美しいデザインにする

システムとユーザーの対話の中に関係のない不必要な情報や、紛らわしい情報を入れないようにしようということです。

カタンのコンポーネントはこの点において非常に優れており、何かと別の何かを混同することがほぼありません。マップのタイルと枠組み、各プレイヤーの開拓地コマ、などなど…それぞれがハッキリ違うものでつくられています。

一点だけ要望を言うなら、資源と発展カードの裏面デザインを別にしてくれたら最高です。しかしゲーム中、それらは裏表逆に使用するので、間違えることはありえないと言っていいでしょう。

9.ユーザーがエラーを認識し、診断し、回復できるようにする

エラーメッセージはわかりやすく表示して、エラーが出ていると伝えるだけではなく、解決策を提示するようにしようということです。

カタンはアナログゲームなので、これについては実装されていません。ですがルールを覚えている他プレイヤーがこの代替装置として機能するのではないでしょうか。間違っていたら誰かが指摘してくれます。アナログゲームにおいては、他プレイヤーは競争相手であり、エラー表示機能なのです。

10.ヘルプや説明書を用意する

何かあったとき、参照してするべきことがわかるヘルプを用意しておきましょうということです。

ボードゲームには普通なら説明書がついているので問題ないかと思います。カタンの説明書は写真がふんだんに使われ、初心者向けの手引きも載っているのでだいぶ親切かと思います。ただ、基本的な流れの部分以外はFAQにするなどしてまとめたほうがよさそうです。

やや脱線しますが、カタンくらい有名なボードゲームであれば、有志をつのって説明書のリデザインコンペなどやればいいのになと思います。

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というわけで、ユーザビリティに関する10のヒューリスティクスを、カタンというボードゲームにこじつけながら見ていきました。遊んだことがない方は、機会をつくってぜひ触れてみていただけるとうれしいです。

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