プラットフォームビジネスの構造を理解する
米国の映画見放題サービス、ムービーパスが、見放題を撤回して月3回までに変更しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33883720X00C18A8000000/
使い放題サービスは、収入とコストのバランスが肝です。ムービーパスの問題は、鑑賞者からムービーパスに支払われる会費が「会員数」に比例するのに対し、映画館に払うコストは「鑑賞回数」に比例するという点ではないかと思います。収入とコストの伸び方にミスマッチがあることが弱点かと。
これを克服するには、ミスマッチを解消すれば良いことになります。例えば、会員が1回映画を見るごとにポップコーンやドリンクなど付随売上が上がる場合があるので、その一定割合を手数料としてムービーパスがもらうようにする。
もう一つは、この記事にあるように、見放題ではなくチケット代の割引方式にすれば映画館にチケット売上が毎回立つ。その何%かをムービーパスがもらう方法。これにより収入とコストの伸びがマッチしてサステナブルになると思います。
ここにダイナミックプライシングを入れて、人気の映画は割引率を小さく、空いている映画は割引を大きくすると、映画館側も空いている座席を有効にマネタイズできるようになります。映画館としては空席のまま上映するくらいなら定価よりも安い価格で(極端な話、鑑賞者が1人増えるごとに増えるコスト=限界費用=より高ければいくらでも)座席を販売するインセンティブがあります。
以下の本にも、スポーツジムの使い放題サービス「クラスパス」というものが出てきますが、ほぼ同じ構造を持っています。
ムービーパスやクラスパスは映画館やスポーツジムの「空席在庫」と、利用したい人をマッチさせる二面プラットフォームと言えます。空席の供給が多いと会員が集まり、会員が多いと参加する映画館やジムが増える、というフィードバック効果があります。
二面プラットフォームの両サイドにどのようにコストを負担してもらうかは様々なパターンがあり、一方を無料にして反対側に全額負担させたり、一方のコストをマイナスにする(ポイントなどのインセンティブを与える)というケースすらあります。この辺りの話は以下の本に詳しく書かれています。
こうした構造を持つビジネスはますます増えているので、プラットフォームビジネスの構造を理解しておくことは重要だと思います。