見出し画像

動物病院専属飼育の仕事と新病院建設への想い

ZOOMOの動物病院チームは獣医師3人(そのうち現場の獣医師は2人)と動物病院専属飼育1人の計4人で仕事をしています。今回はあまり知られていない「動物病院専属飼育」のお話しをしようと思います。動物病院専属飼育の主な仕事は①獣医師の診察や治療の補助②入院している動物のお世話③動物に関係する事務手続きです。他にも色々ありますが、今回はこの3つを紹介します。
1. 獣医師の診察や治療の補助
基本的に飼育係が朝に動物の状態を確認して異常があれば獣医師に連絡が来て診察をします。その時に同行して動物を保定したり、治療に必要な物を渡したりしてスムーズに診察が出来るように補助をします。
また、麻酔をかけて検査や治療をしなければいけない動物もいます。何時に麻酔を何ml打ったのか、いつ目が覚めたのかを記録したり、獣医師は治療に集中しているので、その間に体温・呼吸数・心拍数などに異常がないかをみたり、獣医師の治療の手伝いをしたりします。必要なものがすぐ渡せるように物の場所を把握したり、次はこれが必要になるかもと予測して準備をしたりと、麻酔中は色んな所に目を配っています。また、麻酔下の治療は動物の命にかかわることもあるので、いつも始める時には緊張してしまいますが、この緊張感は仕事に慣れてきても無くさないようにしていきたいです。病院で麻酔をする場合は準備も片付けも楽なのですが、これが獣舎での麻酔になると必要な荷物や機器を病院から持ち出さないといけないのが本当に大変です。

【麻酔をかけて治療中のアカカンガルーのオス“秋田君”】

2.入院している動物のお世話
現在、動物病院には入院室が4つあり、動物園の動物で集中的な治療やケアが必要な個体の他に、保護された野生動物が入院をします。動物の状態に合わせて、部屋をつくり変えていきます。


【病室の室内の様子 置いてあるのはニホンザルのオス“No163”が使っていたリハビリ用のジャングルジムと起立補助具】


【病室の外の部屋の様子 保護されたハヤブサのために使用した止まり木がついています。】

印象に残っているのは2022年11月に亡くなった高齢のメスのヤギ“ゆい”です。“ゆい”は四肢が悪くて、転んでしまうと人が起こさないと立てないため常に目が行き届く病院へ入院しました。“ゆい”が転んでも痛くないように壁にお風呂マットをつけ、床もお風呂マットの上に毛布を敷き、更にシーツで床が平らになるようにして“ゆい”にとって安全で過ごしやすいような部屋になるように工夫しました。お風呂マットやシーツなどはAmazonほしい物リストで買っていただいたものです。みなさまのご支援のおかげで動物たちのケアがよりよく出来ています。本当にありがとうございます。
“ゆい”は四肢が悪いながらも補助をしながら散歩をしたり部屋でのんびりとすごしたりして落ち着いて過ごしていました。元気だった“ゆい”ですが、次第に立っていられる時間が短くなり、その後立てなくなりました。寝たままではお腹の動きが悪くなったり、床ずれが出来てしまうため服を着せたり、人が支えて立つ時間を作るようにしました。5分でも時間が出来たら“ゆい”の所へ様子を見に行ったのを思い出します。
状況によってケアの仕方を変え、“ゆい”のために出来る事を病院チームだけでなく、担当のグループみんなで考えて取り組みました。“ゆい”の状態が変わるたびに一喜一憂し、高齢動物のケアの大変さを学びました。

【葉っぱを頬張るヤギのメス“ゆい” 床ずれ防止のために服を着ています。壁は倒れた時にぶつかっても怪我をしないようにお風呂マットをつけています。】

保護された野生動物は人に慣れていません。動物にとって捕まることは死を意味するので弱っていても必死に抵抗します。そのため人と動物の距離を適切に保って治療や掃除をする必要があります。また、菌や寄生虫を持っている可能性もあるので、動物園の動物にうつさないように隔離をして消毒をしっかりする必要があります。
私はここで働くまで野生動物の保護に関わることが無かったので、知識も経験もありませんでした。初めて保護に関わって驚いたのが、鳥の保護があり受け取りに行く時に段ボールを持って行ったことです。種類によって変わりますが、鳥類の場合はバタつくと羽を痛めることもあるので身体の大きさとあまり変わらないくらいの段ボールを用意します。保護をしてすぐは部屋を暖めて、暗くするため、段ボールは意外と都合が良いケージになるのだと知りました。
また、野生動物は様々な食べ物を食べています。動物園で準備できるごはんの中で食性に合わせて栄養に偏りが無いよう用意して与えます。自分から食べてくれない場合には強制的に食べさせる事もあります。その時は正しく保定をして誤嚥しないように食べさせます。
怪我や衰弱で弱っていた動物が治療をして野生に返せるくらいに元気になってくれると本当に嬉しいです。


【保護されたチョウゲンボウ】

3.動物に関係する事務手続き
先ほど保護された動物が入院する事があると書きましたが、法律により野生鳥獣の捕獲は原則として禁止されています。ZOOMOは県や市から野生動物の治療業務をお願いされていて特別な許可を得て保護・治療をしています。治療をした動物に関する報告や、捕獲に必要な許可の申請など年に1度手続きをする必要があります。
 また、動物園では特定動物(「動物の愛護及び管理に関する法律」で定められている、人の生命・身体等に害を加えるおそれのある動物)を飼育しています。特定動物を飼育するのにも様々な手続きが必要になります。ZOOMOでは8種類の特定動物がいますが、定期的に動物の情報を報告したり、施設の検査をしたりする必要があります。また、リニューアル工事の時には施設の変更で動物が逃げたりしないか、動物と人が安全な距離を保てるかなどの条件を満たして、許可を受けなければ工事が出来ませんでした。

長くなってしまいましたが、少しだけでも動物病院専属飼育の仕事について知っていただけたら嬉しいです。
私が新しい動物病院に望むことは、病室を動物のケアが最大限に出来るような造りにしたいという事です。先ほどの病室の写真を見ていただけると分かるのですが、床や壁は冷たいコンクリートで地面は割れてガタガタしている場所もあります。新病院の病室の床や壁は柔らかい素材の物で“ゆい”のような足が悪い動物にも優しい病室があると良いなと思います。
保護動物の部屋は感染症予防のためにも出入口を2重扉の造りにしたいのと、日光が入りやすい部屋だと良いなと思います。病室は室内の部屋と外の部屋が一つになっているのですが、室内だけで飼育をすることもあります。日光を浴びる事は私たち人間だけでなく動物にとっても大切です。室内にいても日光が当たって、動物たちが気持ちよく過ごせるような病室にしたいです。
新しい動物病院が立つ場所はFARM INFOの裏の予定です。

園内の建設予定地

今の病院はお客様が立ち入ることが出来ない場所にありますが、移転をしたら動物病院の事を間近で見て、様々なことを感じてもらえる機会が増えるのではないかと思います。
動物園は自然と人、動物と人、人と人とを繋ぐ架け橋です。私たちは、動物や自然の豊かさや環境と人との関わりをみなさまに「伝える」ことを大切にしています。それがみなさまの「知る」に繋がり、動物や自然環境の保全について「考え」「行動する」に繋げていければとっても嬉しいです。

動物病院チーム 動物病院専属飼育スタッフ 早川

※新動物病院の建設寄附と動物医療費寄附のご支援方法についてのお知らせ※

動物病院チームの生の声を聴く貴重な機会です!ぜひご参加ください。

2024年1月14日(日)開催 動物病院応援ツアー