見出し画像

インドは中国を越えるのか?

「中国に対抗できるのはインドだ!」

インドに駐在していた同僚が力説していたので以前調査を行いました。最近また新興国ブームなので少しアップデートします。

しかし、だいぶ前のBRICSって時に痛い目に有ったインドなので

中国を抑えて覇権国となれるのか、そのポテンシャルをヒトモノカネで観ていきます。

ヒト

今や当たり前にいますが、インド人のCEOがICT業界には多数います。古くはサンマイクロシステムズの共同創業者ビノッド・コースラさんが有名でした。この方も後で述べるIIT デリー校から留学しMBA 、初代CEOです。今だとグーグルのスンダル·ピチャイさん、マイクロソフトのサトヤ·ナデラさん、NOKIAのラシーブ·スーリさん、マスターカードのアシェイ·ハンガさん、アドビのシャンタヌ·ナラヤンさん、ペプシコのインドラ·ヌーイさんなどのトップが該当します。

インドがこの分野で凄い理由は色々考察されていて

・職業選択の自由が制限されるヒンズー教が8割を占めるので、その軛から離れたICTに押し寄せた若者が今ではトップまで上り詰めた。

・二桁の掛け算を日本の九九のように空で暗じる。

・英語でやり取りが可能な人が多いのでプログラム言語に取っつきやすい。

・世界に冠するインド工科大学IITへ物凄い受験戦争を勝ち残った優秀な人材が行くから。この中でもアメリカに留学し戻らず就職したのがICT業界だった。

日本と比較した時、何よりの違いは若い人口が多いことと、それがICTに集まったこと

これにつきるのでしょうね

以前どれだけ若者が多いのか調べた結果を載せておきます。

2040年の中印 人口比較を行っています。

要約すると、中国に比べてインドは二十年後も若年層が多い事が分かりました。

逆に退職済みの60才以上の人数は中国の方が格段に多く、今の日本のような人口比率であることを図表から読み取ります。

日本はというと十代の人口より犬や猫などのペットの方が多い、代替する社会でお先真っ暗です。

戻って

中国は海亀が鬼のように起業するのでインド国内と比較すると大きな差があるように感じます。

モノ

下に書くように知財の出願件数はそれほど多くないのでこれからの国であることは間違い無しです。

もともとアメリカとの時差を利用してICTの業務委託を受けることから始まりY2K の桁数問題で需給動向が逼迫し業務が拡大。先行して大きくなったICT企業は、

SWITCH

と呼ばれSatyam,Wipro,Infosys,TCS, Infosys, Cognizant,HCL Technologiesの頭文字です。

米GAFAや中国BATHに該当するインドの代表的な企業の名前です。

馴染みが無いので書こうと思ったら既にキレイにまとまっていました。


この中のCognizantを例にとるとIT業務コンサルティングから運用までの一括契約するチェンナイの会社です。

ピンキリのピンの人材はここいらに入ります。その中でもトップオブトップの人が留学してアメリカでひと花咲かせるというのがインドの人材流動性のようですね。

ちなみにBRICSが流行った時はジャガー·ランドローバーを買収したタタやアルセロールと経営統合したミッタルが持て囃されました。

脱線しますが、ミッタルさんはインド北西部のラージャスターン州チュル県にあるサードゥルプルという小さな町からカルカッタに引っ越しした転校生です。

また、タタさんのご先祖はシリアからの移民だそうで、祖父の時代にムンバイに移った外者です。さらにタタ一族はゾロアスター教を信仰し、勤勉で社会貢献を重視する教えを忠実に守っていると言われています。

スティーブ・ジョブズさんや元日産のカルロス・ゴーンさんもシリアに縁のある人ですね。

また、南アフリカ出身のイーロンマスクさんや、グーグルのセルゲイブリンさん、日本の孫正義さんをみても世界的な企業の創業者はルーツも多様化していますね。


BRICSの頃から中国だと阿里巴巴とテンセントが出始めます。

この二大企業が唾をつけた企業がその後も凄いです。日本なんて目じゃないです。

インドのスタートアップにはスナップディールやワン97、オラなども有ります。

カネ

インドはまだまだ金融機能が脆弱です。これからなのでアメリカなどのVC が入っています。

ウォルマートが8割を持つフリップカートがIPOとかやってましたので、これからインドがますます注目されると思います。但し大きい図体なので上場はインドではなくニューヨークかな?

印中国対立激化のなか、下記のようにこれまで中国からの投資が大きかったので心配では有ります。

のように中国企業が国内飽和気味なので資本を周辺一帯の国々にまで入れています。

 情報というか知財

知財的な話を少しだけ

下記の特許行政年次報告書2020本編掲載図表ダウンロードしました。


1-1-16図 五庁における特許出願件数の推移

中国独り勝ちです。インドはこの表のゼロ近辺を這ってます。

画像1

余りにインドの数が見えないので昨年のデータを抜き出します。

国別の昨年度特許出願件数

画像2

特許じゃなく意匠だともう少し拮抗するかと観てみます。

インドを含む国別の昨年度意匠出願件数

多い順番に並べ立てました。

これは更に中国だけ別の競技をしているような状況です。他の国は桁数が違います。

画像3

もしかしたら最近だけかもと

1-1-57図 主要国・機関における意匠出願件数の推移にインド・インドネシア追加

経年でもインドは少ないですのでこれから、これからの話です。

画像4

また、商標をあげても、汗をかいてないので訴訟をみました。靴のルブタン、あの赤い靴底は著名と認めたりしています。

日本に関わるものとして、スズキモーターとスズキ インディア リミテッドの差し止め裁判が有名です。もちろん日本のスズキが現地の著名商標を侵害している会社を訴えた事件です。四半世紀使ったから有効だとの主張に対して、商標の使用それ自体が不誠実だとデリー高等裁判所は判決しています。

まとめ インドは中国を越える発達を遂げられるのか?

インドは政治が弱いと言うか、喧々諤々の交渉ばかりで前に進まないイメージが有りました。

二十年前にマギル大学、上智大学主催のEMBA の運営バイトをした事があり管理職インド人とガッツリ付き合いました。

生徒さんたちは数ヶ月で国を跨ぐ移動を行うのですが、インド人のミンツバーグ教授のお力でインド系の方々の多さ、姦しさが有りました。

その時のイメージが強すぎて、聞き取れないインド訛りの英語でマシンガンのように交渉する姿しか思い浮かばないんです。

でも、最近のグローバル企業トップはビチャイさんやナデラさんを見ても物腰柔らかなので変わって来ているのかもしれません。

また、政治もモディさんがトップになってから目に見えて物事が動く雰囲気が有ります。

それでも十億を越える人口、南北に広い領土一筋縄にはいかず中国を追い越すのは、まだまだ先のことなのは自明だと思います。

特許庁が、もといインドだと特許局が四ヶ所有ります。

画像5

画像6

なお点線は元の地図。深い意味は無いので予めごめんなさい。

インドの人口も2040年時点で 男性8.2億人、女性 7.6億人の15億人と想定されています。

五ヶ所の商標局で均等に見ても、1つで三億人をカバーしないといけません。これだけでアメリカ合衆国の人口よりも多いんです。

これだけ居るなら上澄みの優秀な人材は凄いのも納得です。

トップは洗練されてもその下の人材は未だマシンガントークのようです。

これは駐在員に聞いても、採用試験では喋った事なんて信じられないからやる気だけを見ている!とか言う始末。

まさにこれからですね。

インドは中国と揉めていますが、強い中国アプリの代替を狙っています。

中国のやった電子版万里の長城を、領土紛争からインドが発令しました。中国アプリは大市場から閉め出されています。ここから何か新しいモノが始まるかもしれない?

まだまだ中国の尾っぽは遥か先なのだ。


書いてたら思い出というか愚痴。

未だに覚えて居るのが、裏方で参加した宴会の席で、インドに葉書を送りたいから、切手を買ってきてというお願いというか、恫喝。

幾らかなんて分からず田舎の郵便局で局員さんとあたふたしたのは今でも苦い思い出。やっとのことで買ってきて、ありがとうって言われたけど、切手代は未だに回収出来ずです。高いとか言われてもねぇ。その当時も稼いでたんだからいつか返して下さいね。



以下は知財担当者向けの参考情報

2020年11月より、インド特許庁データベースInPASS( https://ipindiaservices.gov.in/publicsearch )上で審査官への割り当て状況を確認できるようになりました。

以下、HPによると

◆インドとのPPHのメリット

 2018年8月時点で、インド特許庁は、審査請求から1回目の審査結果(FA)の通知まで約4.5年、最終審査結果まで約7.2年要していますが、PPH申請を行うと、PPH申請からFAの通知までの期間が12月以下に、最終審査結果(特許査定等)の通知までの期間が18月以下になることが見込まれます。

InPASS上の割り当て状況の確認方法については以下もあわせてご参照ください。

 https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/document/japan_india_highway/inpass.pdf



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?