見出し画像

せまゲー生半可集(19)~Alak 一次元囲碁

前回のせまゲーの記事はこちら。

アインシュタインタイルの記事でまたもやしばらくお留守にしておりました。

1ヶ月以上ぶりに、再開です。

チェス、三目並べ、バックギャモン、そして……

さてさて。
一次元盤面に落とし込んだ伝統ゲームをいくつか紹介しました。
チェスもありました。


三目並べもありました。


バックギャモン(って、もともと一次元盤面だけど)もありました。


さて後何があったっけ……で、囲碁(Go)です。



原作付きボードゲーム『Alak』

囲碁を一次元盤面で遊ぶボードゲーム『Alak(アラク)』は1984年に登場しました。


あくまで登場であって、ルールの考案とはちょっと異なります。
というのも、『アラク』はAlexander Keewatin Dewdney(アレキサンダー・キーワティン・デュードニー)さんが1984年に出版した、

二次元世界を舞台にしたSF小説
『Planiverse(プラニバース)』
で登場したボードゲーム

なのです。
日本語訳版『プラニバース − 二次元生物との遭遇』は1989年に工作舎が出版しました。

原作で書かれている『アラク』のルールは、
・11マスの1次元盤面を用いる。
・2人のプレイヤーがに互いに自分の色のコマを置く
◆2つの同じ石に挟まれたもう一方の連続する石は、盤面から除外する……いわゆる、囲碁での石を取る。
が、判明しています。

さて、これらのルールで遊べるか、というと色々問題があります。
たとえば「盤面の端では石を取ることができるか」「相手の石を取り除いた直後の空きマスに石を置くことができるのか」など不明な点がいくつかあります。
なにせ、小説で登場する二次元生物の文化を彩るためで用意したものなので、

テストプレイしておりません。

多分。

改良した『Alak』

さらに十数年後。
2001年にAlan Baljeu(アラン・バルジュー)さんが、ルールの不備を改善・改良したルールを考案し直しました。

ルールや戦術などまとめた記事が、サイト「Sensei's Library」内にあります。

ゲームは通常の囲碁を基礎にしつつ進行します。
そこにいくつかルールを補足しています。

【引用】
1.A player cannot fill in the last liberty of their own group.
2.Ko: If a group of more than 1 stones was just captured, you can snapback on the next move.
3.Passing: you may pass at any time, a pass may be forced if there are no legal moves.
4.Threefold repetition: results in a draw.
5.Territory: empty spaces between your own pieces (& the two edges)
6.Winning: the player with the highest score = territory + pieces on the board + pieces captured.

引用:https://senseis.xmp.net/?Alak

それぞれ訳して説明します。

1.プレイヤーは手番で、自分の石のグループの最後の空きマスに、自分の石を置くことはできない。

通常の囲碁でも起こり得る状況で、いわゆる自死です。

2.自分の石が相手に取られた直後の手番に、その空きマスに自分の石を置くことはできない。

通常の囲碁だと多少意味合いが変わるのですが、このルールを劫(こう:Ko)と呼んでいます。

3.自分の手番で、パスができます。強制的にパスとなる場合もあります。

通常の囲碁ではないルールです。強制的にパスとなる場合とは、たとえば、すべての空きマスが、1.2.のルールであげたような自分の石が置けない状況である、などです。

4.双方のプレイヤーが3回繰り返してパスをすると、そのゲームは引き分けになります。

とありますが、双方が連続してパスをするとゲームを終了し勝敗を決める、としたほうがスッキリします。

5.2つの自分の石(および盤面の端)で囲んだ空きマスを、そのプレイヤーの領地とする。

通常の囲碁とさほど変わりません。
ただし、囲んだ空きマスのあいだに相手の石があると、領地ではないのでゲーム続行です。

6.双方のプレイヤーの「領地」「盤面にある自分の石」「盤面から取り除いた相手の石」の合計の多いプレイヤーが勝利。

通常の囲碁だと「盤面にある自分の石」はカウントしません。


6路盤のプレイ例

プレイ例から『Alak(アラク)』がどのようなゲームなのか。
先のサイト「Sensei's Library」に、6路盤の例があります。
こちらを引用しつつ、ちょっと詳しく見ていきます。


上の図が、マス(石を置く箇所)が6個あるボード「6路盤」になります。
まず、先手(黒1)が真ん中よりに石を置いた初手から。

後手(白2)は、以下の図のように置くと、次番の先手(黒3)の応手で黒が勝ちます。

例えば、一番右に(白4)としても、次の黒で白の2目が取られてしまいます。
あるいは、パスをすれば黒もパスをして終了となり(黒は領土1目と盤面2目、白は盤面1目で)黒の勝ちです。

かといって、後手(白)は、以下の図のように置くと、次番の黒が白を取り、黒の勝ちにむかいます。

どうしようもないじゃないか……とお思いですが、もう1手だけ残っています。

これも黒が白石を取ってしまうのですが、実は白が勝ちます


(白4)も先手に石を取らせてから、(白6)で逆襲します(※白が直前に石をおいたマスではないので置くことができます)。

次の先手がパスをしてしまうと、白が黒を1石取り、再度のパスでまた石を取り、黒はパスしかできなくなってしまい(一番右の白石(8)は、劫で取れません)、白の勝ちとなります。


次の手番先手が石を置ける箇所は2つ。
一番右端に黒が置くと白に3石取られてしまいます。


では、もう1つの箇所に(黒7)を置くと、上の図の手順で、白が勝ちます(※下の図の(白10)はそれ以外の場所に置くと、負けます)。

以上で6路盤は後手必勝……ではなくて、こちらの初手であれば先手必勝です。

こちらは、引用サイトの一番最後に図の説明があるのでご覧ください。


締め

というわけで、『Alak(アラク)』の紹介でした。
マスの数はもっと多くなると遊び応えがあります。

『アラク』の紹介記事は他に(こちらも英語でPDFですが)「Abstract Game Magazine」13号の記事「A Family for Go」でも紹介されています。

次回もよろしくです。

では。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?