小説 中年と海、と池 その三

 吉岡君は一年の夏休み前に学校を辞めた。ゴールデンウィーク前ぐらいには不登校となり、クラスの誰もが吉岡君の存在をすぐに忘れた。どうして俺は覚えているのかと言うと、ちょいちょい家までプリントを届けていたからだ。担任はパンチパーマのおじさんで、怖い怖いと言われていて、現に怖かった。おそらく民間の会社ではパンチパーマをあてれないから教師になったのだろう。パンチパーマをあてるためにヤクザか教師を天秤にかけ教師になったくちだろう。ほんとうにくりくりのパンチパーマで今に至るまであれを超えたパンチパーマに出会ったことはない。強烈なパンチなのだが、教師の名前は思い出せない。帰りがけにパンチによばれた。
「な、その、な、頼めるか」
「はい」
「な、その、やっぱり、俺も週に一回ぐらいな、吉岡の家に行ってはいるんやけど、やっぱり、な、うん、どう考えても」
「どう考えても」
「どう考えても同世代の人間が吉岡の話きいた方がええやろ、どう考えても」
「え」
「これな、プリント、な、この一週間で各科目で使われたプリントを集めたから、あとこれ地図、すまんけど、吉岡の家これ渡しに行ってくれ、どう考えても、お前の方がええやろ」
「え、え、」
「このクラスで吉岡と話したことあるの吉仲しかおらんやろ、どう考えても」
そうだろうか、そこはわからない。出席番号が前後しているので話したことはあるが、至って簡素なことしか話していないぞ。
「更衣室の場所覚えてる」
「あ、うん」
とかだぞ。はっきり言って断りたいが、断るのは難しい。パンチの王様みたいな男に詰められて一介の高校生が
「いや、ほかにも話している奴おったでしょうに、なんか面倒くさいなあ、いやだなあ」
と言えるわけもない。メモ用紙に書かれた地図。これ大人の書いた地図かいなというようなよくわからない地図。学校から十分ぐらいで目印のパチンコ屋には着いたが、そこからがよくわからない。一軒一軒表札をみて、吉岡をみつける。でっかい家。勝手な印象だが、不登校の息子が住んでいる家に見えない。洋風、実に洋風。煙突まである。意を決してインタホーンを押し、要件を伝えると玄関が開いた。
出てきたのは吉岡君だった。
 
「ちょっとの間ここに座っていい」
「あ、別に、ああ」
「ああああ、懐かしいわあ」
「まあ、あ」
「今何してるの」
「今、今は何も、その失業者」
「ああああああ、なあ」
「はあ、あ、吉岡君は何してるん」
「ま、いろいろあってね、実家継いでさ、親父が言うにはパチンコ屋ってのはきっと先細りするからっていうて新しい事業を開拓してるところでさ、ま、忙しくてさ、たまにこうやってファミレスきて漫画買い込んで延々読むのが楽しみというか、家おったら嫁がこどもの面倒をみろとかいうてくるかさ」
「へえ」
「ちょっと話していい」
「え、ああ、全然うん」
 
 感謝されることなど何もしていない。パンチの先生が怖くてプリントを届けていただけだ。二回目か三回目かの訪問時
「な、ちょっとお菓子でも食べていけへん」
と言われた。お菓子を食べながら、たばこを吸った。たばこを吸いながらセガサターンで格闘ゲームをした。なかなあ波動拳が出なかった。実に実に実にそれだけだ。ほんとそれだけ。吉岡君は言った。
「あの時吉仲君が来てくれなかったら、俺今ごろどうなってたかわからんわ、あの時ほんま楽しかったよな」
相手がそういうのだから、わざわざ
「そうかな、別にどうも思ってないかな」
とは言わない。流れに任せると、実に生産的になことを教えてくれた。
「そや、今失業中やろ」
そういってナプキンになにやら書き始めた。
「これ、もっといて」
紙ナプキンに書かれたのはよくわからない表。
曜日と番号が書かれている。
「これ、うちの店でどの台がよくでる設定かのローテーションやから、あ、朝一に台おさえんと保証はでけへんから、朝一でおさえれたら毎日とんかつ食べれるぐらいの儲けはでるから」
確かに毎日とんかつを食べれるぐらいになった。三食とんかつでもお釣りがくるぐらいになった。もしかしたら三食、松坂牛のすき焼きを喰えるぐらいに儲けれたのかもしれないが、そこまで図々しくしてはいけない。ギブアンドテイクが世の常だとして、ギブしたことと言えばたかだか十回ぐらいプリントを持っていたことぐらいだからだ。朝からパチンコ屋に並ばなければ明人と今こうして釣りをしていないのだから、きっとパチンコ屋に並ぶ日々があってよかったんだろうと思う。思い込むことにしている。
 
 明人は汗をだらだら書きながらスイッチをしている。イカないしはタコがペンキを塗りながら前進していくゲームだという。ストリートファイターなら関心あるが、軟体生物のペンキ塗りには関心がわかない。そもそもゲームのイカやタコではなく今ここで竿をだしてイカやタコを釣ろうという気にはならないかね、明人よ。
 今まで釣れたことがないのでどういった状態を釣れたというのかわからないが、竿が重たく感じた。根がかり、どうだ。うん、え、リールを巻く、わりと重たい。しかし、リールは回る。うん、これはどうなんだ。
「明人、一応網用意しとけ」
「網って」
「そこにあるがな、それ網」
「なんか釣れたん」
「わからん、一応、うん、うん、これ、え」
「やばいやばいやばい、死体、死体、あかん、ちょお」
ちょお、と言って走り出す息子。走り出したくなる、走りだしたくはなるが、父親が走り出すわけにはいかない。
「明人、死体ちゃうから、死体ちゃうから、戻ってこい、戻ってこい」
「いやや」
「人形やから、人形、もどってこい」
「人形」
「そう、これ、網にいれて、そうそこ、もうちょっと、よしいくぞ、よっしゃ、網にあげ、網をあげて」
「重たい」
「ほんだら代われ、これ、網離すなよ網はなすなよ、よし、網もったから、ほんで竿持って、竿、持った、持ったな離すぞ、よし、ええええと、えええと、よっしゃ、おいゆっくりゆっくり」
二人の協力によって、少しだけ空気の入ったダッチワイフは陸に上がった。
「明人、受付いって人形釣ったんですけどどうしたらいいですか言うてきて」
明人はニコニコしている。早朝、明人の最寄りの駅に迎えに行った時の感じはない。七年一緒に暮らしても、そうしたものか、なんてことを思ったが、ダッチワイフは偉大だ。明人が走ってくる。その後ろには係りのおじいさん。おじいさんも走っている。ダッチワイフを釣ってしまったがばかりにおじいさんを走らせることになった。申し訳ない・
「えええええええ、これはでかいなあ、南極から流れてきたんかな」
「え」
「南極何号かやで」
「あああああ」
「いやああ」
「大将持って帰る」
「持って帰らないです」
「今月の大物賞やで、写真撮ってそのインターネットあげてええか」
「よくないです」
「あそう、ほんだらこっちで処分しとくわ、ほんまに持って帰らんでええの」
「はい、持って帰らないです」
おじいさんがぼとぼとのダッチワイフを引きずって行く。
「インターネットあげてもらおうよ」
「あほなこというな」
「なんでよ」
なんでてお前、ダッチワイフ釣ってインターネットあげて喜んでる場合やないやろ。失業してるし、消費税は高いし、福島の原発は依然燃料デブリを取り出せてないし。
「よし、釣るぞ、次は魚を釣るぞ」
「ちょっとやる気でてきたわ」
ダッチワイフでも釣れたらモチベーションになるんだね。魚を一匹は釣りたい。人生でダッチワイフしか釣ったことがない、なんて人生は恥ずかしい。小指にインパクトのあるおじさんがパトロールから戻ってきた。
「どう、ぼく、釣れてる」
「お父さんがさっき人形釣った」
「人形、どんな人形釣らはったん」
「いや、なんか妙な」
「なんか、服着てないビニールの」
いらん事言うな。
「え、なんやそれ」
「変なの」
「ほおん、ちょっと、おっちゃんが特性の餌を作ったろう」
人形のことについて喰いついてこなかったのはよかったが、アミエビが入った餌箱をがさこそしだしたのはそれまた不安なところ。
「餌を触らないでください」
とは言えない。怖いから。怖いもんね。とはいえ見ないということもできない。おじさん、クーラーボックスからジプロックに入った白い粉を取り出す。それを餌の上にばらまき交ぜ始めた。
「これはね、これは釣れるよ、この粉一袋で一万円ぐらいするねんけど、今日はサービス、これで釣れるぞ、これで、ぼく、ぼく、竿あげ、竿あげ、これ、これいれてみ。おっちゃん特性ブレンドの餌。これ、な、よっしゃ、これで竿落とし、な、よっしゃ、これでじっとしてたら十分ぐらいで大きいの釣れるわ、おっちゃん向こうに知り合いおったからちょっといってくるからな、しっかり釣っときや」
おっちゃん再びパトロールへ。そんなわけはないだろう。そんなわけはない。釣りの餌にコカインを混ぜるなんてことはないだろう。ないだろうが、混ぜてていてもおかしくないんじゃないかと思わせる何かをこの人は持っている。あのパウチが何グラムかわからないが、コカイン一袋一万円てことはないだろう。それでは安すぎるように思う。しかしもしあれがコカインだったらば。うううん、ま、別になにもないだろう。魚が陽気になるってこともないだろうし、警察が釣りの餌を調べにやってくるとも思わない。今はただダッチワイフ以外の何かが針にかかるのを待つ。
 
「とりあえずこれが今月末までの台のデータ、昼まで打たないでね、昼からは各台設定が変わるからさ、で、下の、うん、それ電話番号、また困ったら電話してきて、もう一月分のデータが欲しいでもいいからさ」
 翌日から始まるパチンコの日々。パチンコのことはまったく知らない。ほんとに知らない。よくわからない。その日該当する台に座り、レバーを少し傾けるだけ。おもしろいとかそういうのはなかった。はじめに玉が出てきたときはおもしろかったが、そういう台に座らせてもらっているのだからそりゃそうだろうとなる。不思議なもので、もういいかなとなったのだ。確実に勝てるパチンコよりも釣れるかどうかわからない、釣れたことのない釣りに時間を費やすことのほうが建設的ではないだろうか、そんなことを思いながらレバーを傾けていた。
「おじさんさ、めっちゃパチンコ強いっすよね」
「え」
「おじさん、めっちゃ強い」
パチンコ屋の客にはパチンコ屋のドレスコードがあるかのごとくどこかしら服装が似通っているものである。そんな常連客の中、一人だけパチンコの常連客らしくない服装の女の子がいた。美大生とか芸大生とか、そういう服装と言えばいいだろうか。背中から製図の紙をいれる筒を背負っている学生が着てそうな服を纏っている女の子。生きるか死ぬかでパチンコをしていない反則チートおじさんは周りをよく見る。意識を集中するもしないも三食とんかつぐらいには勝てるからね。当然数日で常連の顔を大体覚える。で、違和感を覚えるわけである。
「なんだかかわいい子が毎日パチンコ屋に通っている」
と。
そのかわいい子かから声をかけられる。
「おじさん、パチンコめっちゃ強いね」
と。
「今日隣でうっていい」
と聞いてくるし、いつものように昼前に撤収しようと席をたつと、
「お昼おごってよ」
と言ってくる。そんなうまいこと流れがやってきていいものかね。パチンコで確実に勝ちながら、美人に声をかけられる。そんなうまいことはなかなかいかない、なかなかないぞ、と心に自分に言い聞かせて、近所のとんかつ屋に行く。マルチ商法の方かもしれないぞとという覚悟を持ちながら、ビールととんかつ、目の前に美人。アムウェイかもね。
 
「きた、きた、きた」
明人がリールを巻く。
「ぼく、それアジや」
いつの間にか小指のおっちゃんが戻ってきて、明人と楽しくやっている。魚が釣れてよかった。ほんとうよかった。明人は楽しそうだ。だんだんと明人といる時間が楽しくなってきた。後は俺が魚を釣るだけだ。人間は変わる。いざその状況になればどうなるかわからない。こどもというのはうるさいだけのものだと思っていた。それが愛おしく感じるようになるのだから。あの日も魚は釣れなかった。
 
 そこから実に愉快な毎日がやってきた、となるかというと別段そんなことはなかった。わりとあっさりしたものだ。パチンコ屋で会ってとんかつを奢る。ファミレスで本を読んいたら電話がかかってきてファミレスにやってくる。ファミレスでは本を読む。彼女は携帯ゲームをするか誰かにラインを送っている。たまに話す。芸大生でも美大生でもなく三十歳の無職だと言う。
「家出娘っていう感じ」
と自分で言っていた。三十歳で家を出ている人間のことを世間では家出とは言わないような気がするが、そう言いたいのならば言えばいい。失業者と言いたい人間もいればフリーで活動していると言いたい人間もいるように。
「今どうやって生計立ててるん」
「え、仕送り」
「仕送りしてくれるんや」
「ま、家金持ちやから」
「あ、ええな」
「そうかな」
「貧乏よりははるかにええやろ」
「家が金持ちなだけで、私は貧乏やで、最近全然ユニバ行けてないし」
「庶民はユニバーサルスタジオめったに行かんで」
「いや、あれやで彼氏にだしてもらっててんで、その人とも別れたし」
彼女には彼氏または彼氏のような人間というのが七人いて、楽しくやっているそうだ。
 
 足元に二つ懐中電灯を置く。イヤホンをさしてミッシェルガンエレファントやオアシスなど吉岡君の家でゲームをしながら聴いていた音楽を聴く。そしてルアーを投げる。十二時を超えたら帰る。そして必ず魚は釣れない。
 十二時に電話がかかってきた。
「今からそっち行くね」
「あかんよ」
「なんで」
「今釣りしてるから」
「釣りしてたらなんであかんの」
「いや危ないやん」
「ええやん、行くわ」
「あかんよ」
「だってもう近くまできてるもん」
「どこ」
「図書館の近くなんやろ、もうタイムスに車いれたもん」
「わかったむかえに行くわ」
 
「最悪や靴汚れたやん」
「だから来るないうたやん」
「釣りやめて違うところで話たらよかったんちゃうん」
「そうやけど、そっちが来る言うたんやんか」
「え、なんか怒ってる」
「全然怒ってないけど」
「怒ってる人って怒ってないって言うよね」
「怒ってる人は怒ってないて言うのはわかるけど、怒ってない人も怒ってないて言うからな」
「話長い、な、釣れてるん」
「いや、だから今まで釣れたことないって」
「なんで釣ってるん」
「いや、言うたやんか、何回でも言うけどこれはいったいどれだけ釣れないが続くんやろって思ったら意地になってきたって」
「言うてたな、変なの」
「変やな」
「な、後で私もそれやっていい」
「いいけど、まあ」
「まあって」
「いや、一年近く釣れてないのに、いきなり来て釣られたらなんか悲しいな思って」
「ちっちゃいこと言うなあ」」
「ちっちゃいな」
なぜ釣りを続けたかったかというと、十時頃、魚らしきものがかかったからだ。おい、おい、これは、これは興奮状態。あともう少しというところで逃げられた。パチンコでは味わえない興奮だった。なにせ待機期間が違う。パチンコは座ったら五分ぐらいで玉がでてきた。それは玉がでてくるように吉岡君がしてくれていたから。バス釣りは一年近くルアーを投げ続けてやってきたのだ。今日は零時を超えてもするぞ、なんなら徹夜でするぞの興奮状態。
「池はまったら助けてたな」
「助けるよ」
「あのさ、びっくりせんといてや」
「何を言おうとしてるんかわからんけど内容によるやろ」
「あのさ、あのさ、赤ちゃんできたんよね」
「へええ」
「なにそれ」
「あ、おめでとう」
「うん、ありがとう」
「うん、おめでとう」
「うん、ありがとう」
「あ、祝いは今すぐでないよ、今手持ちがないから釣りにきただけやから」
「あのさ、あのさ、あのさ、結婚してくれへん」
「え、誰が」
「あんたが」
「それおかしいやろ」
「おかしいかな」
「おかしいよ」
「なんで」
「だって確実に俺のこどもじゃないやん。だって、そういうことをしてないんやから、確実に俺のこどもやないやん。だってそういうことをしてないんやから」
「うん、そやね」
「いやだからさ、なんで俺と結婚することになるん」
「かわいそうじゃない、命やねんからさ」
「そうじゃなくて、その赤ちゃんの父親と結婚するんじゃないの」
「いや、それがはっきりわからんのよねえ、七人いるし」
「そうなのかもしれないが、なんとなくわかるやろ、あの人かなあみたないあ」
「なんとなくで言うとユニバに行ってた人、でもその人とは連絡とられへんようになってるから」
「わかったようなわからんようなやな」
「結婚したくないの」
「結婚したくないわけじゃないよ」
「ふうん」
結婚したいのか。勢いしたくないわけじゃないとは言ったが、そこまで簡単な話ではない気がする。
「その七人の侍みんなに言うたん」
「ううん、吉仲君だけ」
「なんで」
「いや、なんか、他の人はなんかさ、吉仲君が一番ましやから」
「まし、まし、パチンコしかしてない人間がなんで一番ましやねん、他の奴らは何をしてるんよ、かっぱらいでもしてるんか」
「のようなもの」
「のようなもの、かっぱらいのようなものってバールのようなものみたいにいうてる場合やないで」
「なにバールのようなものって」
「そういう短編小説があるの」
「吉仲君ほんま本読むよね」
「読まんよ、働くようになったらもう読まん」
「働くん」
「ま、いつかね」
「な、釣りやらしてよ」
飲み込みが早いのだろう、一度の説明できれいにルアーを投げている。恐々恐々ルアーを投げている。
「な、これどこが楽しいの」
「わからん、楽しいとか楽しくないやなくて釣れる時を待っている感じや」
釣れようが釣れまいがどちらでもよくなる。結婚、こども、結婚、こども、そういえば実家が金持ちって言ってた、で頭が支配される。
「かりに結婚するとしてさ、そういうことはないようにするつもりやけど、はっきり言って俺のこどもではないわけやん。不安じゃないの、ニュース見ていたら血が繋がっていない親子ってさ怖くない」
「どういうこと」
「ニュース見てたら男は嫁さんの連れ子虐待ばっかりしてるやんか」
「吉仲君は大丈夫やろ」
「このさき自分がどういう人間になってるかはわからんやんか」
「多分大丈夫やで吉仲君は」
凡庸に凡庸に生きてきた。そして凡庸ができあがった。もしこれで本当に結婚したら凡庸から抜けるね、とも思うが、果たして血の繋がっていないこどもを好きになれるかどうかだよ、だいたいいお前はなんだよ、不思議女みたいに急に現れて、美大芸大の人間みたいな服装のくせしてろくすっぽ映画もみたことないっていうし
「あ、ちょっとまってやばい」
「え、巻いて巻いて、巻いて」
「うわ楽しい、釣り楽しいわ」
「慌てんと逃げられるから」
懐中電動の灯りのおかげで魚影が見える。
「どうしたらいいん」
「そのまま竿を上にあげて」
「あげるで」
陸に上がったブラックバス。これはなんか結婚するにのるしかないぞ、のるしかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?