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下書きお焚き上げ②「地に足着いたライラックの夢路・新人公演」

なんか知らんけど小難しいワードをドラマティックな曲に載せて歌う。客席も置いてけぼりになりそうな勢いで鉄道建設に情熱を注ぐ彩風咲奈様。散々振り回されていたけど結局お兄ちゃん!!ってなった次男どないやねんと思ったり、五男が亡くなって腹違いの弟が鉄工所にいた!ってwwwとか、ツッコミどころ満載ではあったけど、最終的にちょっと面白くなってきたライラックの夢路。

その新人公演は、大きく演出が変わった訳ではなかったのに、何故かとても地に足が付いたものになっていた。

主演の紀城ゆりや君は、真ん中に立つ圧倒的なオーラや求心力があるタイプではないけれども、地に足ついた安心感のあるお芝居が出来る人。

宙組ファンかつ愛海ひかるちゃんが大好きだった私は、ついお姉ちゃんの面影を追ってしまうのだが、男役時代のお姉ちゃんとは全く違う個性の持ち主だった。パリピと優等生みたいな(笑)ショーでのキラキラ感や笑うと姉妹だな~ぐらいには思うけれども。

本公演を見た印象、彩風咲奈様におかれましては何せあの顔あの見た目ゆえ鉄道建設について熱く語られても、どこか浮き足だったファンタジーな印象があって。私でもいやいや兄上無茶ですわ!って突っ込みたくなる。紀城君が歌い上げる鉄道へのソレは、プロジェクトXさながらで熱い思いは理解出来た。そんなこむずかしい説明ソングはイルカは知性がある〜くらいにゆるふわな方がいいねんと思った(突っ込んではいけない夢路)

咲さんとは顔形が全く違うし(寄せるならば華世京の方が寄せられそう)自分に似合うメイクを頑張ったんだと思う。でも目の辺りは咲様を意識してるのかな?と言う微笑ましさもあった。

新人公演の主演が必ずしもトップスターになる訳ではないけれども。組にとって劇団にとって「ポテンシャルを秘めた逸材」を見つけ出すと言う意味で紀城君が抜擢されて良かった。

紀城ゆりやと言う男役は間違いなく雪組の記憶に残る男役になる。

あの作品・あの役、紀城ゆりやがいたからよかった、紀城ゆりやが居るから安心するよね。ファンも演出家の先生もそう思うだろう。そんな頼もしい存在になる。明るい未来を感じる主演でした。


ヒロインは同期の音彩唯ちゃん。ただし彼女はもう3度目のヒロイン。蒼穹の昴に引き続き見て、ストルーエンセも見た。だからこそ言いたい。

彼女「新人」じゃないんだわ...(笑)

役作り云々じゃないのよ。溢れんばかりのスターのオーラだったのよ。いい意味で新人公演じゃないのよ。相手役の紀城君がどうとかじゃない。多分、このオーラを受け止められる男役なんて新公学年に居ないんよ。縣さんとか朝美さんレベルなの。それぐらい違う次元にいらっしゃる。あなたの舞台はメジャーリーグですみたいな。もう新人公演の場でない。別次元のステージにいらっしゃるのだ。

短期間でスポンジが水を吸いこむような勢いで、輝くオーラを纏うとてつもないスターだ。もううっすらと大きな羽根が見えている。何も心配する事はない、ただひたすらにスターへの階段を登って欲しいし、そしてその日が来る事を楽しみにしている自分が居た。

はじめての新公主演とは...と、度肝を抜かれた蒼穹の昴を経て2番手さんの役はさすが新公主演経験者は頼れるぅ〜!となった華世京君。朝美さんとはまた違う美しさと繊細さがあって好きなお芝居だったな。

新人公演ってね、本役さんの役作り・個性に寄せる事も正解だし、自分オリジナルの役を作り出す事も正解。聖海由侑さんはそのどちらの良い所も持ち合わせたさすが新公の長の期の人だなと言う説得力。和希そらの持つ良さと聖海さんの持ち味が近いものがあったのかな。この人が長の期の長で良かった。蒼穹の昴の一禾あおさんもそうだったけれども、頼れるアニキ感はお芝居でも挨拶でもにじみ出ていた。

紀城君の感極まった挨拶を温かい目で見守るお父さんのような聖海さん(と、夢白ちゃん)が良かったな。トップ娘役・夢白あやさんはしれ~っと貴婦人の役を楽しまれていて何よりでした。トップ娘役が新公に出るって楽しいよね。

五男・ヨーゼフの瞳月りく君。瞳月りく君の母性を擽るきゅんとした見た目が大好きなんです私。もうね、本役以上に儚くて...末っ子感全開で愛されていたんだなぁと。だから歌いながら楽しそうにしていたり、亡くなって悲しみに明け暮れる周りの人達の演技ごとダイレクトに伝わって来た。愛されていたんだね、ヨーゼフ。

野々花ひまりさんのお芝居も大好きなんだけど、ディートリンデの幼稚さや自己中心性を感じられたのは愛陽みちさんのお芝居だった。

ディートリンデってなかなかエグいよね、そしてエグい描写なのに余りにもサラっと描かれ過ぎじゃない?(突っ込んではいけない夢路)

エリーゼを暗殺しようとする理由だって余りにも幼稚だし、借金の肩代わりを理由に大佐に暗殺を依頼する腹黒さ。フランツに諫められ未遂に終わったのはいいけれども、フランツの配慮からハインドリッヒとエリーゼには知らされていない。もちろん自分の命が狙われているなんて知らないエリーゼは「ジュエリーを買い取ってくれた人よ!」とみんなに紹介する。最初ちょっと気まずそうな顔で出てくるのに、ケロっとしてるやん?

愛陽みちさんのお芝居を通して、よりクッキリとディートリンデ像が見えたのは良かった。が、しかしだよ…そんなえげつない描写さらっと入れてくるなよ~謝先生、いろんなエピソードを入れたかったんだろうけどさ。描き方によっては面白い役どころなのにただのサイコパスやんかー。

美穂圭子様の魔女・アーシャを演じたのは104期の千早真央さん。宙組ファン的には水音志保ちゃんの妹なんだけど、お姉ちゃんとはまた全然違う個性の娘役さん。地に足着いた大人っぽい印象。美穂さんの説得力をそのままにとてもいいお芝居をされていたな。彼女が要所要所出てくる事で場面が引き締まる。どちらかと言うと大人の役を求められそうだけど、彼女なら相応の演技力を見せてくれそうで楽しみ。酒場の女将とかやったらいいと思います。