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花宮沙羅の娘役芸は「チョコレート」みたいだなと思う。

花宮沙羅さんの娘役芸ってまるでチョコレートみたいだなと思う。

舞台から感じられるものって、実際には「視覚」「聴覚」の2つのみなんだけど、花宮沙羅さんの舞台姿からは「存在しないけど感じる」ものが多い。
実際嗅ぐような距離で見ている訳ではないのに「感じる香り」があり、お花やキャンディのような甘い可愛い香りもするし、シトラスのような爽やかさもムスクのようなアダルトな香りもする。

チョコレートって、一味に言っても色々ある。

コンビニで売っている駄菓子的なチョコレートから、GODIVAなどのブランドまで幅広い。手軽に買えるものから、あげるのも貰うのもドキドキするようなパッケージに入ったものまで。日常のちょっとした一息にも存在するし、特別な瞬間にだって存在する。

王道の甘いチョコレート。チープな駄菓子的なチョコレート。カカオ分の高いビターなチョコレート。ベリー系のものが練り込まれた甘酸っぱい味わい。ピンクの見た目が可愛い。ナッツと合わせると香ばしさと歯触りが良くなるし、オレンジピールなどの柑橘系とも相性抜群。トロっと濃厚なトリュフも好きだし、リキュールと合わせたボンボンショコラは1粒で大人の世界へ誘ってくれる。

(苦手な方もいらっしゃるだろうけど)チョコレートって幅広くみんなに愛されている。買っても貰ってもワクワクして、1粒食べれば幸せになれる。私にとってのチョコレートはそう言う存在。

そう言う意味で花宮沙羅さんの舞台姿はチョコレートの如し。

初舞台の「THE ENTERTEINAR!」でその存在を認識し、宙組生と言うご縁の元どの作品の何の役を見ても「花宮沙羅なら間違いない」と言う絶対的な信頼を寄せている。どの作品のショーにしろ芝居にしろ「沙羅ちゃんがやるんだったら絶対間違いないよね!」と言う安心感がいつだってある。

その絶大なる信頼の中で見る、秘書・マネーペニーも間違いなかった。

「MI6の優秀な女性秘書」って時点で間違いない。配役発表の時点でですよね~!感が漂ってたし、実際見てさすが花宮沙羅さんだわーと唸ってしまった。細部まで作りこまれたビジュアル(スチール写真も秀逸!)に何気ない仕草。優秀な秘書らしいてきぱきした仕事+ちゃっかりお土産をねだるチャーミングな部分もさすがっす。ちょっと甘めの声色+ハキハキと小気味いいテンポのセリフ。喜怒哀楽の表現もお手の物。舞踏会とかアルバイトの場面も一味違う。ヘアメイクが秀逸で一番に目を惹く存在感だった。彼女のアクセサリーの石は特殊な石なのかなって位キラキラしている。

彼女は下級生の頃から花宮沙羅の魅せ方を持っていたと思う。その見た目・歌声・ダンスを最大限に活かすべく、全てにおいて自分を魅せる事に長けている。優等生だからとか新公ヒロイン・エトワール経験者だからとか、そう言うのではない。根っからのエンターテイナーとしての気質と言うか、努力やセンスがいいねと言う一言では片づけられない。長所も短所も自分の特徴をちゃんと知っていなければ出来ないし、客観的な視点や冷静な部分も必要だと思う。

メイクやアクセサリーも日々研究されているのだろう。彼女のヘアメイクはいつも他とは一味違う。王道の娘役メイクもそうだけど、直近だと 「FLY WITH ME」や「MAKAZE IZM」と言った宝塚の王道のショーとは少し違った形のリサイタル。宝塚歌劇団の娘役として以上に、花宮沙羅のセルフプロデュース力を見せつけられた公演だった。FWMの時のKPOPアイドルみたいなピンクの髪色(本公演じゃ出来ない色だよね~)MAKAZE IZMでの絶妙なアクセサリーのチョイス。Tシャツの裾にシュシュ?を結んでキュッとしたシルエット。普段の娘役では見られない花宮沙羅らしさが全開だった。

一味違う自分らしさを持ち合わせながらも、本公演では娘役群舞でのスカート捌きなど王道の娘役芸を見せてくれる。身長差から来る男役に寄り添う愛らしい所作、群舞の中心メンバーとしての華やかさ、一糸乱れぬエレガントな所作の中に「花宮沙羅ですよ」と言う主張があり和の中で一味違う自分らしさを持っている。

宝塚歌劇団の娘役としての自身も大切にされているだろうし、それと同じぐらい「役として”花宮沙羅”としてどう魅せるか」を大切にしていらっしゃるのだなと思った。

私にとって、花宮沙羅さんの「宝塚歌劇団の娘役芸」と言うのはベースとなるチョコレートなのだ。

そのチョコレートに、季節によって・イベントやシチュエーションによって色んなトッピングやカカオの種類を変え、ショコラティエの手腕を発揮する。見た目でも香りでも味わいも楽しませてくれる。それが歴々の役や場面から見せてくれる「花宮沙羅さんらしさ」なのだと。ベースのチョコレートが美味しいのでどんな手を加えても大正解。箱を開けるとキラキラとした可愛い粒たちが並ぶ。見た目も味わいも兼ね備えている。

ショコラティエの手腕も間違いない。このお店間違いないよね、って言う絶対的な信頼感。それも舞台人としての信頼につながる。

私が見て来た作品の全てに、あの役の沙羅ちゃんはああだった、ショーのあの場面はこうだった、書ききれない程に色々な場面を覚えている。毎回ちゃんと覚えている。あの役で感じた甘酸っぱさ、フレッシュな味わい。あの場面から感じ取れる切なさやほろ苦さ。素顔の人懐っこい可愛い沙羅ちゃんから、頼れるかっこいいお姉さんの顔まで併せ持つ。

私にとって、舞台上の花宮沙羅さんはチョコレートのような存在の人だ。