文体の舵をとれ 第三章 文の長さと複雑な構文 その1

 お勉強のお時間だオラァ!!
言葉頭を「お」で繋げたが多分これは頭韻ではない。いやどうだろう。でもリズムが生まれていないので僕的には違う。形式だけなぞっても効果が生まれてなきゃ意味がないってこった。そういうものを書いてしまうと独りよがりと呼ばれる。
 「作品」とはやはり他者の目に晒し、その他者の目で汲み取ってもらうものなので、我々はいついかなるときも客観視を怠ってはならない。見られている、ということを常に意識しろ。表現者なんて自意識過剰なくらいで丁度いいぞ。わかったら自撮りヤクザになっとけ。僕の趣味は自撮りである。そしてだいたいの自撮りをしないやつらより文章が上手い。我が暴論に倣え。
 ……え? ぜんぜん上手く見えない? マジ? ならばキミは僕より上手いので僕の上から僕に暴論を吐いても良い。キミの暴論に従ってやるよ。


 さて、今回『複雑な構文』というだけあって、これまでの章から比べると高度な話になっている。どう高度なのかを説明すること自体面倒なくらい高度なので手元の文舵を読め。どうせこんな記事を読むやつは手元に文舵持ってんだろ?? ……? 持ってないの? 今すぐ買ってこいよ。まあいいや。とにかくこの章からどれだけ高度な話になったかって、これがファミコンのマリオだったなら迷いなく笛使ってステージ飛ばしてるくらいかな。しかーし、僕らがやっていることは練習であり自ら滝中に身を置くハードな修行なので、むしろ喜んで枷やら重りやらを両手脚にはめてかなきゃならない。俺たちはいつだってピッコロさんであるべきなのだ。おら、気を高めろ。いくぞ。さあ問題文だ。


 なんじゃいその指定。15字前後とかぶっつぶつじゃん。アメリカのヌードルかよ。フォークで掬って食うやつですね。ゴリラズの女の子メンバーじゃないよ。あ、この前なんだけどね、あれよ、駅前でギャル男、前時代からタイムスリップしてきたガングロ金髪の、そんなギャル男見かけたんです。そいつがとにかくめちゃくちゃゴリラズのボーカルみたいな、あのゾンビみたいな面構えしてた。
 はーーーい。どうでもよーーー。そんなことより書くぞ。まあね、なんつかね、こんくらいはよんゆうで書けますよ。よんゆう。


 よんゆうだけど、ま、まあ、先に浦桐くんの見とくか。いやいやいや、断じて参考に、とかじゃないぞ。

 この部屋で暮らし始めて三週間が経った。沙耶子さんの部屋がよく見えるマンション。沙耶子さんは朝八時に家を出る。休日の日中は、カーテンを開けている。着替えの時ですら彼女は無防備だ。沙耶子さんのそんなところも何と可愛らしいことか。火曜と土曜は燃えるゴミの日だ。先週の火曜、沙耶子さんのゴミの中から使用済みの生理用品を見つけた。僕はそれら一つ一つをジップロックに入れて保存した。もちろん、ルナルナというアプリもダウンロードした。沙耶子さんの生理周期を僕は把握する。沙耶子さん本人以外で、このことを知っているのは僕だけだと思うと興奮した。今日は土曜日、燃えるゴミの日だ。今日も沙耶子さんのゴミをバレないように忍び寄り、そっと回収する。

 設定のクセが強すぎてアタマ持ってかれて参考にならねえ!!! ルナルナ入れるのになーにが「もちろん」なのか。本人だけが当たり前だと思っていそうなところに「もちろん」と据え、読者との溝を深めている。キモいですね。正しくキモくて良いです。僕の考えた‪「アニメドラえもんを視聴中、画面にしずかちゃんが登場するたびに、にやにやと剥いた前歯でイクラをゆっくり一粒ずつ噛むおじさん」‬とキモ王決定戦で当たってバチバチにバトったほうがい。いや、いいです。そんなとこ膨らませなくても、すべて忘れましょう。そして僕も書きましょう。

 胸に突き立てるそれは誓いじゃない。手を伸ばして奪い合うそれは心じゃない。次々に落ちていく空影は花弁じゃない。まばゆい光が人々の目を焼く。――それは比喩なんかじゃない。足下を掬われ飲みこまれる。――それも比喩なんかじゃない。あれはナイフあれは食料あれは戦闘機。いまやこの世界のすべてが人殺しの種で、あの雲が散ったって何処も晴れやせず、倒壊したのは建物だけじゃなく正義の在り様で、両親も親友もいずこかへ消えた。見渡せどもう知った顔などない。いずれ私もそうなるのだろう。私は――いや私たちはもう直に終わる。当たり前のようにこの国ごと終わるのだ。別の文化を持ち別の国に住まう、同じ人間の手で終わらせられるのだ。


 なるほどね。さすがですねゼンメツさん。なにがさすがなのか全然わかりませんけどね。というか15文字前後の「前後」として含まれる範疇とは?? だいぶ超えてるのもあるけど。まあいいでしょう。いいのです。あんだけのインパクトで攻めてきたキモの流れに乗っからなかっただけで十分に凄い。よく流した。これはもう坊主の境地。まあ次のがムズそうだから次頑張ろうね。じゃあね。またね。


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