見出し画像

「ライター入門、校正入門、ずっと入門。」書籍発売記念スペシャル

「書くこと」「読んでもらうこと」をあらためて考えるべく、さまざまなジャンルの書き手の方々をお迎えして2021年に行われたこのイベント。好評のうちに2022年に書籍化され、2023年4月からめでたく2ndシーズンが始まることになりました!
これを記念して、2022年11月に行われた書籍化記念スペシャル回の模様をダイジェストでお届けします。

思いっきり校正ミス

張江 みなさん、お久しぶりです!2021年に月イチで開催していたトークイベントの「ライター入門、校正入門、ずっと入門。」がこの度書籍化されまして、出版記念で帰ってまいりました。私は司会を務めます、ライターの張江です。

中嶋 このイベントを主催しています、校正専門会社「聚珍社」の中嶋泰です。

一色 1回目から全部ゲストで出演させてもらってます、XOXO EXTREMEの一色萌です。

中嶋 当初(2021年1月)はレギュラーでお呼びする予定じゃなかったんですが、初回に出ていただいたらあまりにもジャストフィットだったので。

一色 ずっと出るなんて想像してませんでした(笑)。

張江 今回は書籍にも登場しているゲストの方々に再び来ていただきました。どうぞ!

岸野 編集者・ライターの岸野恵加です。前に呼んでもらったときは音楽ナタリーの副編集長という肩書だったんですけど、現在はフリーランスで活動しています。

榊 出版社リットーミュージックの音楽エンタメサイト「耳マン」編集部から参りました、榊と申します。よろしくお願いします!

絵恋 地下アイドルの絵恋ちゃんです!

張江 以前は「エッセイの名手」ということで絵恋ちゃんからお話を伺ったんですが、あれ以来1年くらいエッセイ連載が更新されていませんよね……?

絵恋 今日のオファーも、張江さんからすごく気を遣った文章が来て。「書いてみたいことがあれば、その話をしてください」って(笑)。優しい人は悲しませちゃいけないので、出演させていただきました。書かないうちに担当の編集者さんもいなくなっちゃったんですよね。

張江 このイベントをきっかけにエッセイを書くかなとも思ったんですよ。

絵恋 自分でも「今日までに書いてくれよ〜!」って祈ってたんですよ。でも、切りが悪いかなって。来年からのほうがいいかなと思ったんです。

※無事、2023年1月から更新されています。
https://rooftop1976.com/column/eren/

張江 しかし、こうやって書籍になったものを読み返すと、なかなか面白い本ですよね。

一色 この本の校正は中嶋さんがやられたんですか?

中嶋 僕と、版元である扶桑社の方と二人でやりました。

張江 奥付に私の名前も載せてもらってるんですけど、ローマ字表記が「HIROSHI HARIE」になってるんです。正しくは「KOUJI」なんですよ。思いっきり校正ミスが(笑)。

中嶋 油断してました(笑)。
  あと、著者が校正を兼ねてはダメですね。最後まで気持ちが持ちませんでした。

張江 とはいえ、本を出すのは初めてなので感慨深いです。

一色 私もこれが初めてです。

絵恋 (一色を見ながら)私はありますよ。

張江 先輩風だ(笑)。

中嶋 デザインは僕と張江さんの共通の知り合いである勅使川原さんに頼んだんですが、シンプルゆえに難しいと言ってました。帯にはロフトヘブンさんのご厚意でいただいた「ロフト大賞受賞」と書かせてもらってます。

張江 色味といい、雑貨屋のロフトと間違って手に取る人がいそうですよね。

中嶋 一人でもそういう人がいれば、ありがとうございました!ですよ(笑)。

張江 榊さんは書籍の編集も担当されていますが、帯の文言はどうやって決めるんですか?

榊 自分の場合だと、もっと情報を詰め込んじゃいますね。個人的に、本の帯って大きく分けると3種類くらいあると思っていて、著名人からコメントをもらうもの、書籍の内容が一言で伝わる惹句が書いてあるもの、この本のように何かの賞を受賞したことや、「映画化」「アニメ化」などをアピールするもの、という感じなのかなって。

※惹句(じゃっく):うたい文句。キャッチ フレーズ。

中嶋 榊さんと同じ回にゲストでお呼びした講談社の髙垣さんからも「帯は売上を左右しますよ」とアドバイスをいただきました。

榊 自分はウェブと書籍両方の編集をしているんですが、紙の本を作るって、やっぱり特別で、すごく楽しいなって感じるんです。なので、気合が入ってついギミックを入れたくなってしまって(笑)。例えば、掟ポルシェさんの本(『男の!ヤバすぎバイト列伝』)では掟さんの全裸写真を表紙にして、大事な部分は帯で隠すとか。でか美ちゃんの自伝(『桃色の半生!〜仲井優希がぱいぱいでか美になるまで〜』)では、浜崎あゆみさんオマージュの髪ブラをやってもらって、帯は半透明にしてちょっと透ける感じにしたり。

張江 帯を取ると見えちゃうデザインが多いですね。

榊 そういうのが好きなんですよ(笑)。こういうことが出来ることが本の面白いところですね。

中嶋 まさにWebだとできない、紙ならではの文化です。

榊 気になったんですけど、この本は書店だとどのコーナーに置かれるんですか?

中嶋 全くわからないです(笑)。

張江 Amazonだと教育とか言語学とかのランキングに入ってますけど、「そうなの?」って感じもします。この本はどこから読み始めてもいいし、細かく章立てされてるので、ジャンルはいわゆる「トイレ本」でいいんじゃないでしょうか。

絵恋ちゃん、小説家になる?

張江 初回は私と中嶋さん、一色さんの3人でやりました。本格的にスタートしたのは岸野さんとデイリーポータルZ編集部の古賀さんをお呼びした2回目からでした。

岸野 事前情報が何もなかった回ですからね(笑)。

中嶋 でも、あの回をやって、「これはいけるかもしれない!」と思いました。

張江 ナタリーとデイリーの媒体としての違いが面白かったですよね。ナタリーは客観的な事実しか書かないポリシーだから、校正も厳密に行っていて、一方デイリーは主観しかないという。
※(DPZももちろん情報は正確です!)
と、2022年12月18日。古賀さんからツイートをいただきました。

中嶋 表記も積極的にゆらしてますからね。

一色 「納豆を一万回混ぜるんだ!」という強い気持ちが伝わってきます(笑)。

張江 岸野さんはWebを中心にお仕事されてますけど、個人ではZINEも作られてます。

一色 私もいただいて読んだんですけど、すごく素敵で読み応えがあります。

岸野 Webと紙だと全然違うんですよね。文字数に制限があるから、文章がページをまたがないように文末を変えなくちゃいけなかったり。そういうのが新鮮で楽しいです。

中嶋 こういったレイアウトのことで読みやすさがすごく変わってきますからね。

張江 この本も、自分の書いた原稿が最終的にどういったかたちになるのか楽しみでした。

一色 私も自分の文章が校正されるのも初めてだったので、どうなるのかすごく気になりました。

中嶋 一色さんは自分の原文と見比べるのも面白いかもしれないですね。

岸野 私、もう何ヶ所か誤字を発見しちゃったんですよね(笑)。

一色 ほんとですか!?(笑)ちゃんと誤字を見つけられるか、テキストとしても使えますね。

中嶋 「校正入門」というタイトルですから。校正者を目指す人はぜひ探してください(笑)。もし第二版になったら修正します。

張江 最近は日記も書いてますよね。

岸野 有休消化中に「こんなにゆっくり文章を書けるのは今だけかもしれない」と思って書き始めました。せっかくの休みなのに、また書いてるっていう(笑)。友だち限定でインスタに公開してるんで、100人くらいしか読んでないんですけど。

絵恋 100人も友だちがいるんですか!?すごいですね……。

中嶋 自分で作るZINEだと締切も自分で設定しないといけないから、見極めが大変じゃないですか?

岸野 インタビュー主体の本なので、原稿を書いて相手から戻ってきたら終わりということにしてます。確かに、自分一人で書くエッセイとかだと、延々と手を加えてしまいそう。

絵恋 (キリッとした顔で)そう、だから私は書けないんですよ。

張江 例えば編集さんがつきっきりで、「絵恋ちゃんが書けるまで帰りません!」と隣りにいてくれたらどうですか?

絵恋 それは……書けますね。甘えてるだけなので。

中嶋 ちゃんと締切がないとなかなか書けないですよね。

張江 書きたいことはいろいろあるとおっしゃってましたね。

絵恋 そうなんですよ、今日(このイベントに)出るからコラムのメモを読み返したら、めちゃくちゃいっぱい書いてあって。「なら書けよ!」と思いました。

張江 岸野さんのように何もなくても書きたい欲求が湧いてくる人はすごいです。榊さんはそういう欲求ありますか?

榊 私はあまりないですね。自分で書くよりも、「この人にこういうことを書いてもらったら面白そうだな」とか「あの人にこれを撮ってほしいな」みたいなことを考えるのが好きなので。日々、架空の本を想像して、それをかたちにしているっていうか。

張江 まさに編集者的ですね。

榊 絵恋ちゃんさんは、小説書いてみたらどうですか?

絵恋 え、小説ですか?

榊 すごく向いてると思うんですよ。

絵恋 じゃあ、書きます!

(会場爆笑&拍手)

絵恋 全然想像できないけど(笑)。コラムは、日常のしょうもないことをドラマチックに表現してみようと思って書いてるんです。

張江 まさにそれが小説じゃないですか。

絵恋 これ小説だったのかー。自分の才能が怖い。

中嶋 絵恋ちゃんと榊さんのお二人は、トークイベント中に「自分は天才かも」とおっしゃったという共通点があります。書籍の170ページと185ページに天才発言が収録されてます(笑)。

絵恋 おー!(榊に向かって)組みましょう!

張江 すごくいいタッグになりそうですよ。ちょうど担当の編集さんがいないですし。

絵恋 そうですね。いなくなっちゃった担当の方から最後に来たメールに、「絵恋ちゃんの本を出すのが夢でした」って書いてありました。

張江 悲しすぎる!(笑)

榊 身の回りのエピソードを広げられるということは、本当に小説に向いてると思うんですよ。

絵恋 確かに、他の人のツイートを読んで、私ならもっと上手く書けると思うことはありますね。「私なら70リツイートくらいいけるな」って。

榊 ツイートが上手いということが、文章を短くまとめちゃう癖に繋がってるのかもしれないですね。

張江 最近ツイッターはキナ臭いですから。もしかしたら終わっちゃうかもしれないし。

絵恋 ツイッターなくなったら一日15時間くらい暇になりますよ。

張江 その時間で小説を執筆していただいて。

榊 締切になったらライブ会場まで行きますよ!(笑)

張江 榊さんは掟さんのイベント会場までよく行ってましたよね?

榊 掟さんは原稿が遅れるとメールしても電話しても出てくれなくなるので、イベント会場に行くしかないんです。そこに行くと、各媒体の掟さんの担当編集さんがたくさん集まってるという(笑)。

一色 手塚治虫先生みたい(笑)。

絵恋 ライブに来られちゃったら、オケ流しながらステージ上で書くしかないですね。

同じ話を書いてもいい?

張江 一色さんも小説書いてみたらどうですか?

一色 えー!予想外な。

中嶋 戦隊モノのコラムも有りましたけど。

一色 そうなんです、あれは媒体自体がなくなってしまって。続いていれば全部の戦隊について書きたかったんですけど。……実は絵恋ちゃんよりも更新してないコラムがあるんです。

絵恋 えー!仲間じゃん!(ニコニコ)

張江 なんで止まってるんですか?

一色 それは、締切がないというか……。

絵恋 甘えですね。

張江 今日のイベントには甘えが二人いる(笑)。

一色 書きたいことはあるんですけどね。書かなきゃと思いつつ。

張江 こうなってくると、書きたいことはみんなあるってことですよね。書くか書かないかということになってくる。

一色 Twitterで出来事を小出しに書いちゃうのがいけないのかなと思うんです。

絵恋 あー、わかります!

榊 壇蜜さんも「(言葉を)無駄撃ちしちゃダメよ」みたいなことを仰ってました。それも一理あるかもしれませんね。プロモーションにも必要なので、必ずしもTwitterが無駄だとは思いませんけど。

絵恋 トークイベントに出過ぎてて、「このエピソード、イベントで話したからもう書けない」とかも思っちゃうんですよね。

一色 めちゃくちゃわかります……!

絵恋 「すごく面白い話だからイベントで話すのもったいないな」と思いながら話したりしてます(笑)。

張江 でも、そのイベントを100万人が観てるわけじゃないですからね。同じ話を何回してもいいと思うんですよ。喋るのと書くのでも違いますし。音楽のライブだって、さもさっき作ったような顔で昔の曲を何回も演奏するじゃないですか。それでやってる方も聴いてる方も楽しいわけですし。

榊 ツアーを全通する人がいますもんね。

絵恋 そうなんですかね?(客席のオタに向かって)いい?同じ話でもいい?

(オタうなずく)

絵恋 わざわざイベントに来てくれるから、そこでしか知れない話を聞きたいのかなって思っちゃう。

榊 さすがのサービス精神ですね。

張江 私もトークイベントで毎回してる話がありますけど、話し始めただけで笑うお客さんいますよ。めちゃくちゃ辛いラーメンを食べた話なんですけど……

(お客さんの一人が爆笑)

絵恋 ほんとだ!めちゃくちゃ笑ってる!

岸野 もう古典落語だ(笑)。

絵恋 私も沖縄でバスツアーをやったときに……

(オタク爆笑)

絵恋 私にもできました(笑)。

中嶋 何回も話すうちに洗練されますからね。喋り慣れてくると面白くなるんですよ。

張江 聴いてる方も「待ってました!」となりますからね。文章でも「この人またこの話、書いてるよ」っていう面白さもあると思うんです。

絵恋 勇気が出てきました!

つまらない文章も新聞も読もう

張江 配信をご覧の方から「読みやすい文章を書くにあたって気をつけていることはありますか?」と質問が来てます。

岸野 この書籍にも書いてましたけど、書いた原稿を音読するのは私もやってますよ。読んでみることで句読点の位置を確かめたり。

中嶋 すごく重要ですよね。音読して長いと思ったら文章を分けたほうがいいですし。

張江 あとは文末が重複しないようにしたりだとか。

岸野 体言止めが多すぎるとリズムが悪くなるんで、現在形や過去形をちりばめるといい感じになるとか。

中嶋 一色さんも音読するって言ってましたね。

一色 そうですね。必ず読むんですけど、早口で肺活量があるからか、一文が結局すごく長くなっちゃうんです(笑)。

張江 文章に限らずですけど、つまらないものもたくさん摂取して「なぜつまらないのか」を考えるのも重要だと思うんですよね。いい文章はうっとりして「いいなあ」で終わっちゃうこともあるんですけど、つまらない理由のほうが冷静に探せるというか。音楽でもそうだと思います。

一色 なるほど。でも、私は他のグループのライブを観てても、めったにつまらないとは思わないんですよね。

絵恋 えっ!私は世の中の大半つまらないですよ。

一色 うわー、憧れる……。

絵恋 「なんでこんなにつまんないんだろう。この人ダメなんだな」って思ってます。

張江 根源的な人格否定だ(笑)。

絵恋 私にも自信がない日があるんですよ。そんなときに他の人のライブを観に行かせてもらうと、「やっぱり私は面白いな」と元気をもらって帰りますね。「地下アイドル界に私は必要だわ」って思う。

張江 「私が辞めたら業界の質が下がる!」という使命感ですね。

絵恋 でも、悪影響かなとも思うんですよ。「これくらいなら出来そうだ」と思ってみんな私に憧れるんですけど、なれないから。悪いなって。

張江 他人の人生を狂わせちゃうなと。あれ、何の話でしたっけ?

榊 読みやすい文章ですよ(笑)。新聞を読むのもいいですよね。やっぱりとてもお手本になる文章なので。記者ハンドブックの閉じ開きも、おそらく新聞に則ってますよね。ベーシックな表記だし、簡潔で無駄がない文章だなと思います。

岸野 修飾をなるべくなくして短い文章にするのも大事ですよね。

絵恋 就職?

張江 いえ、文章の修飾です。「なるべく働かない」ってことじゃないです。

絵恋 なーんだ。

中嶋 読みやすいっていうのは、見慣れてるということだったりするんですね。普段みなさんが新聞や雑誌で触れている文章の表記が、一番読みやすいんです。それが記者ハンドブックに書いてあると。

張江 文章は自由に書いていいけど、指標はちゃんとあると知っておくことも大事ですよね。

一色 最近は新聞を読む人も減っているので、そうなるとそこも変わってくるんですか?

中嶋 でも新聞のオンライン版もありますから。それも元の新聞の表記に準拠しているので、変わらないと思います。「ライター入門、校正入門、ずっと入門。」は面白い話はもちろん、意外と文章を書くにあたっての大事な話もいろいろ載っているので、ぜひ読んでみてください。

2ndシーズンは4月27日(木)スタート!

2ndシーズンの幕開けはいつもの3人で書籍を校正しながら、あらためて校正とは、書くこととは、考えていきます。
会場チケット↓

配信チケット↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?