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単語脳には優しい言葉で





「さよなら、おっさん。」







NewsPicksが2018年に日経新聞に掲載したこの広告をご存しだろうか?

奇しくも3年後の今にこそぶっ刺さりそうなこのコピーは、

世の中の変化に対して、見て見ぬふりをする。
能書きを並べて、言い訳ばかりする。
試そうともせず、すぐに「できない」とか言う。

そんなこの国の凝り固まった価値観やルールを「おっさん」と定義し、社会と経済と個人の価値観をアップデートする決意表明として作られた。

ここでいう「おっさん」とは年齢のことではありません。マインドセットや価値観のことです。
古い価値観やシステムに拘泥し、新しい変化を受け入れない。
自分の利害のことばかり考え、未来のことを真剣に考えない。
フェアネスへの意識が弱く、弱い立場にある人に対し威張る。
そうした「おっさん的価値観」が牛耳る日本社会、日本経済と決別しようというメッセージこそが、「さよなら、おっさん。」なのです。

この広告に対して、以下のような批判記事が書かれている。

おっさんの定義もいろいろあるが、仮に年齢層で見て、40~50代を「おっさん」だとしよう。この年齢層の男性はどのくらいいるのかというと、約1750万人である。この莫大な人数に対して「さよなら」というのは、傲慢極まりない乱暴な意見である。働き盛りの、社会を動かしている層を切り捨てるというのか。

そもそもこのコピーでは、「おっさん」とは価値観の話だと定義されている。しかし、このコピーを見た人のうち一定数の人にそれは伝わらない。

結果、「おっさん」というインパクトの強い単語に反応し自分の存在を否定されたように感じた「おっさん世代」から、

「社会のために汗水たらして働く中高年層を侮辱するな」
「年長者を敬え」

というような批判が湧き、大炎上した。

「古い価値観に固執せず、新しい変化を受け入れよう」
「自分の利害ではなく、社会のことを、未来のことを優先しよう」
「言い訳をせず、挑戦しよう」

上記のようなことを言って、不快感を示す人はいないだろう。
それはそうだ、当たり前だと思うだろう。

そう、このコピーに不快感を感じた人は、この広告の文脈ではなく、「おっさん」という単語に強い不快感を感じている。


単語脳と文脈脳

人間には、物事を単語で理解する単語脳タイプと、文脈で理解する文脈脳タイプがいる。

Youtuberの「rの住人ピエロ」氏はそう唱える。

単語脳タイプの人は、強い単語に過敏に反応し、意識を持っていかれる傾向がある。

例えば連日の報道で言えば、

酒類提供禁止 20時以降 自粛破り 4000人 医療崩壊 有観客 副作用

上記のような単語がニュースの見出しやTwitterの急上昇ワードに載っているのを見て、強く心揺さぶられた経験のある人は、単語脳タイプである可能性が高い。


一方、文脈脳タイプの人は、どれだけ過激な言葉が入っていても、エビデンスがあり、ロジックが通っていれば納得する。

連日の報道に対し、

「緊急事態宣言による効果はどれだけあったのか」
「飲食店が主な感染源であるエビデンスはあるのか」
「五輪開催が安全とは何の根拠で言ってるのか」「ワクチンの副作用が出る比率のデータはあるのか」

こんな疑問を持っている人は文脈脳である可能性が高い。

文脈脳は、先入観なく物事の本質を捉えることができる。
しかし、単語脳タイプの大勢の人に意見を訴求することはできない。

単語脳を煽る人達

文脈脳の中には、好んで過激な言葉を使うことで、単語脳を煽り注目を集める人も多い。

例えば、最近大人気の「ひろゆき」氏は、「無能」「頭悪い」という強い言葉で煽ったり、
「それってあなたの感想ですよね?」
「なんだろう...嘘つくのやめてもらっていいすか?」
と相手の主張の論理的矛盾を見抜き、強い言葉で返す。
対峙した単語脳タイプの人達は、たちまち平静さを失い自滅していく。

最初の「さよなら、おっさん。」も、明らかに単語脳を刺激することを最初から分かった上で、そのインパクトの強さを利用するためにあえて選ばれた言葉だと言える。
最初から、賛否両論起こって盛り上がることを見越した広告というわけだ。

そう考えると、政府が「酒類提供禁止」「20時以降外出自粛」というような、根拠のよくわからない政策を行っているのも、そういう強い言葉に強い印象を感じる単語脳の人に強く働きかけ、行動を抑止するためではないかと思えてくる。
目的を理解しようとせず、強い言葉に単語通りに従って行動を決める人が世の中のマジョリティを占めることを政府は知っているのではないだろうか。
しかし、20時以降は外出自粛だから仕事を早く終わりましょうと言って、わざわざ混雑する帰宅ラッシュ時間に帰ろうとする人や、緊急事態宣言中は自粛しないといけないから、発令直前に駆け込みで遊びに行ったり、解除された途端に街へ繰り出す人など、意図を理解せずに履き違えた行動を取る人を増やしているのは困りものだが。
そしてもちろん文脈脳の人からは意味がわからないため、痛烈に批判される。


単語脳には、優しい言葉で

SNSでの炎上を起こしているのは多くが単語脳タイプだ。

政治家や著名人やインフルエンサーの失言などが度々大きく問題化されるが、これらは強烈な「単語」を使うことで単語脳を刺激したことに起因する事が多い。

その結果、単語脳の人達のヘイトを買い、「言葉狩り」が行われる。
そのため、特にパブリックな場で発言するときは、文脈問わず、言葉選びには最大限気を遣わなければならない。
刺激の強い言葉を使っていないか、捉え方次第で、意図しない意味を持つ可能性のある言葉になっていないか、SNSに投稿する前に、見直してみることを強く薦める。

あなたの発信の受け手の中には、常に単語脳タイプがいることを忘れてはならない。

自分が単語脳だと思う人へ

単語脳タイプの人は、世の中には単語脳タイプの性質を悪用しようとする例がたくさん存在することをまず認識すべきだ。

PV数を稼ぐために単語脳を刺激する強い言葉を掻い摘み、文脈から切り離してキャッチーな見出しにして、単語脳の感情を動かしリアクションを得ようとするのは、メディアの常套手段だ。

「何なの。何が安心安全だ。上級国民は何でもしてよいのか」「参加者みな頭おかしいぞ。3人以下でやれ。マスク着けて飲み食いしろ。屋外またはウェブでやれ」と激怒の声や、一般国民と同様のルールでの開催を求める声が上がった。

例えば、上記パーティーは飲食なしで、ソーシャルディスタンスを保って行われたという。つまり、「マスクつけて飲み食い」すらなかった。

バッハ会長への不満が元々溢れていたことは紛れもない事実だが、それに便乗し、「国民怒り爆発」「自粛破り加速」という単語で怒りの感情を煽って、引用RTなどで記事を拡散してもらおうと目論んでいるとも言える。

何かの情報を受信する際には、自分の中の単語脳と文脈脳を意識することが大切だ。
自分は今、単語に反応していると思ったら、一次情報を調べてみたり、根拠に注目してみることだ。
そうしないと、事実と異なることや、誰かの策略に感情を左右され、無駄な軋轢を生んだり、心が疲弊してしまうことになりかねないのだ。

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