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Dear… 第六話「Shall we?」





いつもの時間。いつもの場所。


○○)いらっしゃいま、って梅澤さん。


美波)おはよう、彼氏さん笑


○○)やめてくださいよ。


美波)いいじゃん、今は本人居ないんだし。




飛鳥)本人がどうしたの?


美波)あ、飛鳥さん?!


○○)梅澤さんが来る30分前くらいからいましたよ?


飛鳥)梅。


美波)すいません、調子乗りました…


飛鳥)おはよう、彼氏さん笑


○○)おはようございます、彼女さん笑


美波)いじらないでください〜!


いつもの3人。


付き合ったからといって特に何か変わったわけじゃない。

これまで通り、3人でただ話すだけ。


美波)お二人はもうデートとかしたんですか?


飛鳥)できるわけないでしょ。


美波)えぇ〜、すればいいじゃないですか。


飛鳥)いやだよ、文春来たらめんどくさいし。


美波)本当は行きたいんですよね?


飛鳥)う〜ん、、、




またニヤニヤしてる。この人はほんとに…



○○)別に僕はこのままで大丈夫ですよ。飛鳥さんといれるだけで嬉しいですから。


美波)ヒュ〜ヒュ〜!かっこいいよ〜、○○くん!


飛鳥)梅の前でそんなこと言うな!///


そう、相手はなんといっても国民的大女優。


そんな人とデートなんて行けるわけがない。


ここが唯一の安全地帯なのだから。

僕はそれでいい。




それでいい。



飛鳥)ごめん、明日早いから今日はもう帰るね。また明日。


○○)はい、気をつけて!


美波)頑張ってくださ〜い!


その小さい背中が見えなくなるまで、僕は飛鳥さんを見つめる。



美波)本当はデート行きたいんでしょ?


○○)え?


美波)飛鳥さんとデート、行きたいんでしょ?


○○)そりゃあもちろん行きたいですよ。でも、飛鳥さんに迷惑かけれないですから。


美波)迷惑ねぇ〜…私は、飛鳥さんがすごく行きたそうに見えたけどな〜。ほら、あの人隠すの下手だし。


○○)でも、もしそんなところを文春に撮られたら…


美波)その時はあんたがちゃんと守ってあげなよ。飛鳥さんを守れるのは、あんたしかいないよ?



誰かを守る。

そんな責任のあることを僕はできるのだろうか。


今まで逃げてばかりいた僕に…



美波)ま、なんかあったら私に頼って?できる限りのことはする。


○○)ありがとうございます。優しいですね。


美波)よく言われる笑


○○)飛鳥さんがいなかったら、好きになってました笑


美波)残念だけど私にその気はありません笑


○○)梅澤さんは彼氏とかいないんですか?





美波)…いたわよ、旦那が。


○○)え、いたって?


美波)はいはい、女の子の恋愛事情に踏み込まないの!笑


○○)え〜なんですか〜もう!


美波)ふっ、そのうちね。じゃあね!


○○)おつかれっした〜!


美波)ちゃんと誘うのよ〜!



○○)は〜い!…誘ってみる、か。



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○○)ただいま。


真夏)おかえり!ご飯できてるよ、食べる?


○○)はい、いただきます。


真夏)わかった、すぐ準備するね!



家に帰るといつも真夏さんだけ。


おとうさんは仕事に出ている。





真夏)はい、どうぞ。


○○)いただきます。


真夏)……。


頬杖をついてこちらを見る。


○○)美味しいです。


真夏)ふふ、よかった。


満面の笑みで返す。

真夏さんはいつもこう。



真夏)やっぱり最近いいことあったでしょ?


○○)え?


真夏)前よりもすごく明るくなったよ。


○○)まあ、ちょっとだけ。


真夏)え〜なになに、教えて!


○○)え〜嫌ですよ。


真夏)いいじゃん、ちょっとだけ!


○○)嫌です。


真夏)え〜意地悪。


ぷくっと頬を膨らませて怒る。


真夏)こう見えても私、相談され上手なんだよ?

○○)なんですかそれ。


真夏)相談されるのが上手いの。おとうさんとも、それで結婚したんだよ?


○○)へぇ〜。


真夏)あ、興味なさそう!ねぇ〜!


○○)ふふっ。



真夏)あっ、わら、った?


○○)え、あぁ、そうですね。




真夏)笑った…笑ったっ、、!


真夏さんは泣き出してしまった。


○○)えぇちょっと?!泣かないでくださいよ?

真夏)嬉しくて…○○くんが笑ってくれて、嬉しいの…


○○)笑うことくらいしますよ…


真夏)ごめんね、おかしいよね私…笑、うぅ…



不意に飛鳥さんの言葉を思い出した。


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飛鳥)でも、いつかは必ずやらなきゃいけない時が来る。嫌な仕事も、聞きたくないことも。

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そろそろ向き合ってもいいのかもしれない。

あのことに。


でも、もう少しだけ時間が欲しい。


○○)真夏さん。


真夏)ん?


○○)僕の両親のこと、後少しだけ待っててくれますか?


真夏)えっ…


○○)ちゃんと聞きます。でも、もう少しだけ待ってください。お願いします。


深く、頭を下げた。

今までの謝罪も込めて。



真夏)うんっ、待ってるっ、、!ずっと、待ってるからっ、!




○○)…ありがとう、おかあさん。



真夏)っ…!うぅ…


○○)ちょっと泣きすぎだよ笑


真夏)だっでぇ〜…!


○○)ふふ、これからもよろしくね、おかあさん。


真夏)うんっ、、うんっ、、、!!





僕も変わらなきゃいけない。少しずつ、少しずつ…

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真夏)すぅ…すぅ…


あれから泣きすぎて疲れてしまったのか、真夏さんは寝てしまった。



○○)さて、と…電話してみよっかな。


梅澤さんにもらった番号に電話をする。


プルルルル…


プルルルル…



…。


飛鳥)もしもし?



○○)飛鳥さん、僕です。


飛鳥)○○くん?!なんで?


○○)梅澤さんに教えてもらいました。


飛鳥)梅のやつ…どうしたの?


○○)あの、





「デートに行きませんか?」





To be continued……

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