Dear… 第一話「僕の母は、」
「君のお母さんはね、すごく、すごく…」
○○)ハッ!はぁはぁ…
夢を見た。
思い出したくない
だけど、続きが気になる夢を。
??)入るよ〜?
○○)は〜い。
??)おはよう、よく眠れた?
○○)おはようございます、真夏さん。ちゃんと眠れました。
真夏)よかった〜、ご飯できてるから食べちゃいな?
○○)はい、ありがとうございます。
僕に微笑みかけるこの人は秋元真夏。
僕のおかあさん。
血は繋がっていないからおかあさん。
○○)おはようございます、おとうさん。
○○ちち)おはよう、○○くん。
おとうさんと挨拶を交わす。
おはよう、ただそれだけ。
○○)いただきます。
真夏さんが作るご飯はとても美味しい。
本当の母の味を知らない。
だからこれは、ははの味。
○○ちち)本当にいつも綺麗に食べるね笑、君のお母さんも…
○○)その話はいいです。ご馳走様でした。
○○ちち)そうだよね、ごめんね。
真夏)……。
まただ、またやってしまった。
おとうさんはなにも悪くないのに。
悪いのは、僕を捨てたあいつらなのに…
○○)行ってきます…
真夏)いってらっしゃい!
○○ちち)頑張ってきて!
……。
……。
真夏)あなた…
○○ちち)うん、分かってるよ…でも、いつかは話さないと…
真夏)そうよね…
-----
A.M.1時
○○)いらっしゃいませ〜…
陽気な機械音楽が鳴る方に見向きもせず、近くに置いてある雑誌に目を向けながら声を出す。
「女優齋藤飛鳥、主演女優賞受賞!」
興味はないが、他にやることもないので仕方がない。
この時間に来る客はろくな奴がいない。
深夜のコンビニなどそんなものだ。
ここでバイトを始めて、もう5年が経つ。
高校を卒業して特に目標なんてなかった僕は、たまたま求人募集していたこの店で働き始めた。
だから、やる気なんてあるはずがない。
??)お願いしま〜す…
○○)お預かりしま〜す…
帽子を深く被った女性が商品を差し出した。
ピッ、ピッ
○○)お会計810円になりま〜す。
??)はい。
○○)ちょうどお預かりします。ありがとうございました〜…
??)……。
○○)あ、あの、お客様?どうされました?
なぜだかじっと見られている、あ、レシートか。
○○)申し訳ございません、こちらレシートです。
??)……スラスラ
ん、レシートの裏に何か書き始めた?やっぱり、この時間帯は変な人しか来ないな。
??)……サッ
○○)え、あ、いらなかったですか?
??)……スタスタスタ
○○)あ、ありがとうございました〜…
なんだったんだ?レシートに何か書いたと思ったら、僕に差し出して何も言わず出ていった。
今まででもトップに入るくらい変な人だ。
○○)なんて書いたんだ…「また来ます」?口で言えばいいのに…
そう思ってレシートをゴミ箱へ捨てた。
??)また変な人に好かれたわね笑
○○)あ、梅澤さん。いたんですね。
美波)おじゃましてま〜す笑
梅澤美波さん。
この店によく来る常連さんで、いつも誰もいない店内で2人で話す時間が、気楽でいい。
美波)それにしてもあんたも懲りないよねぇ、さっさと就職すればいいのに。
○○)特にやりたいことないんで。お預かりしま〜す。
ピッ、
美波)もういっそのことここの店長にでもなっちゃえば?笑
ピッ、
○○)いやですよ笑、めんどくさそうですし。
ピッ、
美波)まあ確かにあんたには荷が重いか笑
ピッ、
○○)ま、そんなとこっすかね。1060円で〜す。
美波)私もこの時間が好きだから別にいいけどさ。はいよ。
○○)それはどうも〜。ちょうどお預かりで〜す。
美波)はいこれ、私の奢り。
そう言って梅澤さんはブラックの缶コーヒーを手渡した。
○○)あれ、なんでブラックなんですか?
美波)んー、なんとなく?笑あ、そうだ。スラスラ…
○○)ん?
美波)はいこれ。
○○)えーっと、「あんたもそろそろ大人になりなさい」?な、なんですかこれ!
美波)言葉の通りよ笑、じゃあね〜!
○○)あ、ちょっと!もう…苦っ。
ブラックコーヒーは、苦手だ。
美波)ふっ、面白くなりそうね。この店も、○○くんも。
To be continued……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?