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感情をテーブルに置いて眺める

「パスワードを3回間違えたので、ロックされます」といった文言がパネルに表示されている。一瞬立ちすくむが、「ああ、やっぱりそうなるか……」と項垂れながらマイナンバーカードを仕舞った。

住民票の写しが欲しくて、昨日の夜コンビニへ行った。マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機で印刷できる。

3年ほど前に発行してから初めて使うなあと思いつつ、懸念があった。4桁の暗証番号だ。事前にインターネットで取得方法を調べた時に必要なことを知った。えっなんだっけ。そういえばカード発行時に設定した記憶がうっすら。試しに2回打ったら、間違っているという表示。

3回誤るとロックされ、対象の支所等でパスワードの初期化と再発行をしなければならない。インターネット対応はしていない。

2回でやめて、そして翌日の朝。一縷の望みを託し、覚えのある4桁の番号を押し、冒頭に戻る。

ひっそりため息をついて、スマートフォンの再生ボタンを押した。耳に装着しっぱなしだったイヤホンからラジオが流れる。最近聴くのを再開したマヂカルラブリーのオールナイトニッポン0。口の中で頬を甘噛みして笑いをかみ殺す。

けどCM中などスキマスキマでコンビニで立ち尽くした時の悲しみとイラつきが頭をよぎる。パスワードを忘れてしまった自分が悪いが、そんな自分に対してムカついてくる。イライラと可笑しみが両立しているみたいだ。

感情が同時に立ち現れるということはなくて、どっと、多種多様に押し寄せてきているように感じるときは、一つひとつの感情が、瞬間瞬間に入れ替わり立ち替わり、忙しなく出現している。

糸が絡み合っているというより、鞄の中身がぐちゃぐちゃで欲しいものがすぐに取り出せず、かき回してしまう状態に似ていると思う。そうなると落ち着いて、一つひとつの持ち物をテーブルの上に並べてみたほうがいい。

こういうときは、多めによかったこと・うれしかったことに目を向けて落ち着きたい。

初めて、とある写真アルバムサービスを使ってみたのだけれど、その製本が無事届いた。きれいに印刷されていて、待っている間ちょっと心配だった気持ちが消えていった。

仕事の原稿を一本書き上げた。まだあるけどひとつ山場を超えた。

気になっている映画で、すばらしい追加キャスト情報が公開されて、楽しみな気持ちが増幅した。

手続きのことでふて腐れかけてしまっているけれど、そもそも暮らしたいと思った家の審査が通ったことそのものが、よろこばしいじゃないか。

そっと深呼吸をして、ぽこぽこと湧いてくる感情をテーブルに置いてみる。眺めてみる。そういうことができるようになったのはいい変化だと思うよ、と自分に言い聞かせてみる。

とりあえず窓口に行って住民票の写しを手に入れるしかない。そのあとパスワードの再設定に行こう。

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