これが私…ではなかった話
私にとって、人混みはいつだって歩きにくかった。
まるで私など存在していないかのように、目の前を横切る人、真正面から近づいてくる人がいるから。
そのたびに、私は立ち止まり、横にそれ、行きたい方へ真っすぐ進めた試しがない。
夫は、いつだって行きたい方へ真っ直ぐ進んでいく。その背中を追いかけながら、自分との違いにため息が出る。
私が真っすぐ進めないのは、存在感が薄いから。
周りの人の目にうつらない、いないことにされてしまう。
自分はそういう人間なんだ。
仕方ない。
そんな自分に対