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夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。
なんかさー、と彼が言った。
夜のアイスの時間。青いベンチと我ら二人。
「書いててさ」
「うん」
「どう書いても誰かを傷つけるよなぁって思って」
「うん」
「モヤってた」
「ふむ」
「いつきそーゆーのなさそうだけど」
いや、めっちゃある。けど。あるけども。
「ないな」
「でしょ」
「そもそも無理じゃろ」
これは本音だ。
「華やかな学園生活を描けば陰鬱な高校生を傷つけるし、親子愛を描けば毒
あ、それは資源ごみです。
「どーせさ、TikTokで”泣ける”だの”エモい”だのデーハーでミーハーなサムネで15秒でよーやくされてポチらせて5分で流し読みされて中古にポンよ、ついでにネットで”安っぽい”って書かれてトドメじゃ」
ふてる彼女と手元の新刊。
「虚しい商売だぜ」と自分の小説を放り投げた。「何ヶ月かけたと思ってんじゃ、15秒で要約しやがって」
なんでこんなに機嫌が悪いかというと、本の帯である。
薄っぺらいコ
雪の絵で自転車で夏のキャンパス
雪の絵を見て思い出すのが夏の記憶ってどう思うよ。
「フォローしとるイラストレーターさんのな、絵を見たんよ。雪の夕方、下校中の高校生が傘を下ろす絵」
それ見て大学の時のこと思い出したんよ。それも真夏。なぜに??って思うじゃろ。今が夏だからにせよ、雪の絵で?って思うじゃろ。
「無駄に広いキャンパスでな。夏休みじゃったけど研究室でレポート書いてたんよ。センセーおるからうちは通ってた。すぐ聞けるし。
いつぞやの原稿用紙に生を感じる(後)
「あお、これ見たじゃろ」
ぴらぴらと原稿用紙をつまんでいた。
「あ、ごめん。キッチンにあったからつい」
「いや、怒っとらん」
「ん?」
「あお、うちの小説3本読んだって言いよったけど、どれ?」
僕はタイトルを3つ言った。
「その組み合わせはやばいの」
「全然書き方違うよね」
「それがうちのやり方」
「2人いるかと思ったよ」
「どっちもどれもうち」
「言ってることは似てるけど、文体が全然違う