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世一の勉強部屋

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noteは本当に勉強になる。 こんな勉強部屋を少し前までわたしは知らなかった。 少しずつ増やしてゆきます。スキしてくれた人は覚悟して。 本当はキチンとお知らせとお礼をすべきところ… もっと読む
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記事一覧

小説『皆で浴衣で盆踊り 第3話』

五、芥川龍之介の幽霊  二、三日が過ぎると、天使から切腹願望や殺人願望が徐々に消えて行った。……母親を殺したい、と本気で思うなんて。日本刀で後を追うなんて。  病院の食事は、栄養はあるのかも知れないけど、見た目はコンビニ弁当と変わりはない。色んな食べ物が、仕切りのある入れ物に、ちょっとずつ盛られている。近所のいつも行ってたコンビニの弁当に絡まっていた、気持ち悪い長い髪の毛を思い出した。  天使は、食べなくなった。食べたくないのは、髪の毛のせいだと思っていた。実は、食べ

小説『皆で浴衣で盆踊り 第2話』

二、死体のモデル  天使が幼稚園に通っていた時。お母さんが帰って来なくて、暗闇にいて、バード・マンみたいに、目だけでいて、頭も身体もなくて。明かりの点け方は知ってたのに点けなかった。  ……それ以前は、おばあちゃんがいたんだ。おばあちゃんが死んじゃって、それからだ。お母さんが数日いなくなって、食べる物がなくなって、夜になって、また目だけになって、でも隣の家に助けを求めたり、一人で泣いたりしないで、ずっと座ったまま、目だけでいた。ずっと、待って待って、お母さんが帰って来

小説『皆で浴衣で盆踊り 第1話』

一、バード・マン  天使(てんし)の脳内から、先程、さよならをして出て行った酸素が、回れ右をして、ちょっと帰って来た。視界も、ちょっと晴れてきた。見慣れた保健室の天井。天井は灰色で、白い布を被ったハロウィーンの幽霊そっくりの、でっかい染みがある。そのお化けはリアルで、今にも動き出しそうだった。恐怖で、天使はぎゅうぎゅう目をつぶった。 「まあた、ぶっ倒れたんだって?」  天使が所属する美術部の顧問の先生。先生の声はどこまでも優しい。でも、ぶっ倒れたなんて、あんまりお品のいい

子供のためのオルセー美術館(71)誰の手?/動きを見る目・追求するドガとアングル

このふたつの手は誰の手? びっくり、手だけの絵! この手は、バレエの絵で有名なドガが描きました。 人はどんな表情をするのか、手や足はどういう動きをするのか。 ドガは、いつも細かいところをよく見て、とても正確にデッサンをするので有名でした。 手の表現も素晴らしかったのです。 でも、今日のこの手は、バレエのじゃないみたい。 さあ、このふたつの手はいったい誰の手でしょう。 実は、この絵の中のどこかに描かれているんです。 なんでみんながいろんな方を向いてるの?って評判に

子供のためのルーブル美術館(36)つやつや果物の秘密、実は。/ オランダ絵画ミグノンのヴァニタス

どんな生きものがいるかな? こんなところに、たくさんの果物。 ブドウにモモ、サクランボ、メロンにプラム。とうもろこしもあります。どれが好き? 青やオレンジのきれいな鳥が見えますか。 蝶々もカタツムリもいます。 あれ?でもちょっと待って! よくよく見ると、トカゲも毛虫もいるみたい。 それになんだか果物も、腐りかけています。 これじゃあ食べられない。 しげみの中に、 鳥の巣があるのに気がつきましたか? かわいい水色の卵! ところが、これも一大事!  卵を狙っている動

子供のためのオルセー美術館(61)シスレー・道を描く、たぐいまれな眼/最後まで印象派だった唯一の画家

ぶれない! 道を描き 家を描き 空を描く。 シスレーは風景の絵を描き続けました。 シスレーが描くのは風景画だけ。ほかの絵は描きません。 モネとはもう昔からの仲良しだけど、見た物を正確に形をきちんと描くシスレーは、モネとは全然違う描き方なのです。 さあ、もの静かなシスレーの世界をちょっと見にいきましょう。 ここは小さな村の丘の上 小道の両側には、果物が採れる果樹園や野菜の畑があって緑がいっぱいです。 道を描く。 がんじょうそうな手すりも、道にそって長くのびて ずう

グイド・レーニ『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』と思われていた肖像画の話

バロック期に活動したグイド・レーニが描いたとされる「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」。 ベアトリーチェ・チェンチは、ローマの貴族家庭に生まれ、父フランチェスコは暴力的かつ不道徳で家族を虐待していました。ベアトリーチェらは、父親の虐待を当局に報告しましたが、何も変わらず、その後、一家は父親を殺す計画を立てます。計画は実行され、父親は殺されましたが、一家は逮捕され、死刑が宣告されます。ローマの人々は一家の動機に同情したものの、教皇は無慈悲で、ベアトリーチェと家族は1599年に処

ブルーランプ

昔に生きた市井のひとたちの生き様に惹かれて作ったお話です。 白黒映画や、セピア色の写真のような空気感を出したくて描きました。 大人用の青年漫画として描いたので、性的な表現がございます。 それでも大丈夫という方がいましたら、よろしければご覧ください☺️ タイトル  「ブルーランプ」 46ページ作品 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!☺️ わたくしのプロフィール代わりの記事はこちらです。

小田雅久仁 「夢魔と少女」〈前篇〉

一 亡霊のほとんどは場所に憑くもので、ひとところに執着して来る日も来る日も道端に立ちつくしたり、打ち捨てられた屋敷のなかを果てもなく歩きまわったりする。人や物に憑く亡霊もいて、そういう連中はその人や物の行く先ざきにどこまでもついてゆく。いずれにしても、亡霊というやつは、自らの意思で自由に歩きまわることがない。言葉が通じるやつもいるが、空気が読めず、自分のことばかり話したがり、ろくに人の話を聞かない。かと思うと、ただただぼうっとしてひと言も口を利かないのがいたり、猛犬さながらに

使徒パウロによる布教の結晶、野蛮人の回心と改心

哲学を語りたいのですが、やはり、その後のケルト人に関して記事にしたほうがよりいい内容になると思いましたので、再び歴史の話に戻ります。 ガラテアのケルト人時は紀元前278年。ガラテアはアナトリア中北部の地域でケルト系ガリア人が定住しました。「ガリア」はギリシャ語で、ラテン語では「ガリ」と呼ばれたようです。 隣接するビテュニアの王ニコメデス1世(在位:紀元前278年~255年)からケルト人はこの地域を提供されました。 ガラテアを支配した部族は、トロクミル族、トリストボギイ族、

随想流転 「自作の作品集=高度経済成長+土曜は半ドン+大衆演劇」

随想流転「自作の作品集=高度経済成長+土曜は半ドン+大衆演劇」  さて、エセー集『あゝ ! なんてエモーショナルないかさま師』。24時間のダウンロード数がご覧頂けるように11件も頂いた。出来過ぎの数字だろう。あのクオリティーである。ダウンロードせずに読むことも出来るからして、多分ダウンロード数は少ないものと感じていたところ、ふたを開けてみりゃ、24時間、過去イチのダウンロード数。  この数字を前にして、益々「丁寧に喜んでいただけるものを創らなくては……」イカサマではなく心か

【エッセイ#29】 黒の妄想 -画家ゴヤの力について

幻想とひとえに言っても、様々なレベルがあります。この世の外のものを幻視してしまったかのような奇想もあれば、もっと人間くさい、激しい思い込みや思いつきに満ちた、妄想のレベルのものもあります。 18世紀末に活躍した画家フランシスコ=ゴヤは、しばしば幻想的な作品を描いたものの、多くはどちらかというと「妄想」に近い幻想でした。そして、それはこの時代ではかなり珍しく、今でも観る者の胸を打つ驚くべき作品となっています。 ゴヤは1746年スペイン生まれ。画家を志して当時の美術アカ

No.1062 二人の夫

約3,000篇もの彼の詩のほとんどは、短い詩です。その詩集『秋の瞳』(1925年)の中の10番目に次の詩があります。青空文庫で読ませてもらいました。 その詩集『秋の瞳』は、重吉が読者に宛てたこんな「序」から始まります。 その心の詩人・八木重吉(1898年~1927年)は、1922年(大正11年)に島田登美(17歳)と結婚。その4年後の昭和2年に重吉は結核のため29歳の若さで亡くなりました。 2人の子女、桃子と陽二をもうけましたが、1937年(昭和12年)に桃子(14歳

医者はなんのためにあるのか(ブラックジャック展より)人はなんのためにいるのだろう。

提出した目標シートを書き直すこと、2度目。定量的にと言われても、目標が会社全体へのコンプライアンスの「意識付け」にあるものだから、数値化出来ない。 「法令遵守の意識を育てるための認識教育を行い、定期的に試験する」と書いて了承をもらったが、 自主性を育成し、伸び伸びと活躍してもらうための土台としての法令遵守への意識付けは、試験結果で見えるものではない。 自分で書きながら、組織の中で評価をもらうための目標となってしまったことが、虚しくなった。 ……………… 働いていると、人ってな