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スーサイド・ツアー(第1話 闇サイトへ、ようこそ)
あらすじ
自殺願望のある者達が、闇サイトを通じて南海の孤島に集まる事に。闇サイトの主催者は、孤島で参加者全員が美食を楽しんだ後1週間後に苦しまない方法での死を約束。
にも関わらず、なぜかその前に1人ずつ殺されてゆく……。
『当サイトでは、30歳以下の自死志願者を募集しています。先着8名で打ち切りますので、お早めにご応募ください』
スマホをいじっていた時に、そんな文章が倉橋翠(くらはし
三位一体(第8話 最終話 事件の真相)
「今日は、署までありがとうございます」
都内にある全国警察本署の一室。日置は机の向かいにいる三界に声をかけた。
「任意同行と聞いて来たんですが、おれが犯人みたいですね」
三界が糊で固めたような、こわばった顔で話した。
「メモや録音をしたいんですが、刑事さんいいでしょう? 2015年に衆議院を通過した刑事訴訟法の改正で可能になったはずですが」
「さすが推理小説家だけあって、法律にはお詳しいです
三位一体(第7話 大御所作家の告白)
大阪で重石が行ったと思われる花屋を探した後、日置達は東京に戻った。彼は三界と重石が都内のパーティーで珍しく仲良さそうにしゃべってたという城間の証言が引っかかっており、会の主催者に会う段取りをつけたのだ。
主催の作家は、推理界の大御所だった。ネットで調べたが、年齢は73歳。ベレー帽を被り、白髪の混じった髭を生やした作家の画像が掲載されている。名前は五野井勉(ごのい つとむ)。本名で、筆名は使って
三位一体(第6話 おかしな服装)
その後全国警察の刑事達は証拠として押収された防犯カメラの動画のデータを、島袋に観せてもらう。最初島に到着した重石の画像から観た。彼は漁船で、丸島に到着したのだ。漁船の手配は城間がしていた。
重石だけ降ろすと漁船は丸島を去り、沖縄本島に帰還した。その後動画を時系列通り観るうち日置はおかしな点に気づいた。それは、三界の服だ。
彼は真夏なのに黒い長袖のシャツと、黒いビニール地のロング
三位一体(第5話 沖縄へ)
三界邸への訪問後、2人の刑事は沖縄行きの飛行機に乗る。
「三界さんの話を信じるなら」
正子が、小声で囁いた。
「12時半の時点で死臭がしてたから、遅くても午前10時半に殺されてたんですね」
「そうなるな。夏場は死んで死臭がするまで2から3時間が相場だから。鑑識の結果でも10時から13時の間に死んだと推定されてる。城間も10時過ぎに遺体を見つけたと話してる。別の犯人がいて城間の話が事実としても、
三位一体(第4話 三界の主張)
その後2人の刑事はマンションを出て、駐車場に戻る。次の目的は三界の家だ。彼は最近まで重石同様都内のタワマンに住んでたが多額の借金を抱えたため売り払い、埼玉県内の実家に引き払っていた。
実家は2階建ての一軒家だ。門の前に一旦正子が車を停車。運転席から降りてインターホンのボタンを彼女が押した。1分ぐらいしてから、年配の女の声が流れ出る。
「どなたです?」
「全国警察の研川です。三界学さん
三位一体(第3話 妻の言い分)
結局重石が殺された件について全国警察が再捜査する話になり、日置と正子が担当になった。彼は正子の運転で車の後ろに乗りこんだ。車は都内の世田谷にあるタワーマンションに向かう。そこには殺された重石の妻が住んでいる。
「よく、再捜査が決まりましたね」
ハンドルを握りながら正子が話した。
「容疑者の城間が人気作家だからな。彼が犯人なんてあり得ないという電話や投書やメールが警察に殺到して、上層部も世論を無
三位一体(第2話 捜査開始)
やがて昼の12時過ぎ、三界が島に自分で操縦してきたモーターボートで現れたのを、カメラの画像で確認できた。城間は東館を出て、東館の玄関を外から施錠する。そして西館に行こうとする三界の前を遮った。
「一体どうした?」
三界は多くの者を魅了する涼やかな笑顔を浮かべて質問した。俳優のような男前で、学生時代はバスケをやってた事もあり、筋肉質の体型だ。身長は190センチある。
「し、死体があった。に、西館
三位一体(第1話 殺されたミステリ作家)
あらすじ
ミステリ作家の重城三昧(おもしろざんまい)は、重石(おもいし)、城間(しろま)、三界(みかい)の男3名で結成されたグループだ。
そのうち執筆を担当する城間は沖縄県の離島で生活しており、久々にその離島で他の2人と会う事になっていた。が、東京での用事を済ませて離島に戻ると先に来ていた重石が殺されていた。
その後から三界が来て、小心者の城間の代わりに1人で死体を確認しに行った。
スーサイド・ツアー(第27話 最終話 地獄の果てに)
宇沢の両手は力強く、井村の首をぐいぐいと締め上げる。このままでは、あの世に行ってしまいそうだ。
もみあううちにいつのまにか体が反転し、井村の方があおむけになり、宇沢の方がのしかかる体勢になっていた。
その時突然鈍い音がして、井村の首をしめていた宇沢の両手が力をなくす。
宇沢の体を横に押しのけると、太い木の枝を持った翠の姿がある。
「途中でいいの見つけたから持ってきた」
誇らしげな笑みを浮
スーサイド・ツアー(第26話 殺される理由)
現れたのは、宇沢だ。井村達を船でここまで連れてきた60代の白髪の男である。その手には拳銃が握られ、筒先はこっちに向けられていた。
「やはり、あなたが犯人ね」
氷河のように冷たい口調で、翠がそう断定した。その目はまるで射るかのようで、そこから今にもビームが射出され、宇沢を殺しかねない勢いだ。
「あたし達は、あなたが漁船で帰ったと信じてたけど違ったのね。あらかじめ漁船の船長と打ち合わせて、あ
スーサイド・ツアー(第25話 解かれる謎)
翠に勧められるまま井村と妹尾は一緒に南国ビルの北口を出た。そして濠の上の橋を渡り、右手にある階段で、下に降りる。そして今度は左に曲がり、港を目指す。やがて、翠は仏像の前に立つ。
「銃は確か、この仏像がある方から撃たれてたよね」
そう話しながら、翠が仏像に手を触れた。するとそれは、彼女が大して力を入れているようには思えないのに、簡単に横へスライドしてゆく。するとその後ろから、大の大人が入れるほど
スーサイド・ツアー(第24話 推理発表)
その時またもや井村の背中に激痛が走る。
「大丈夫?」
翠が血相を変えて聞いてきた。全身が汗でびっしょりになる。
「大丈夫だ。何とか」
2人に支えられながら、どうにか南国ビルに戻った。1階にあった救急セットで翠と妹尾が背中の傷を消毒した後包帯を巻いてくれた。
そして救急セットと一緒にあった痛み止めの薬を飲んだ。
その後7階に割り当てられた井村の部屋に行き、ベッドの上に横向きで寝る。
全身
スーサイド・ツアー(第23話 衝撃)
まずびっくりしたのは、港に船がつながれていた事だ。日々野達を送り届けた漁船と同じぐらいの小さな船だ。
4人は、恐る恐るその船に近づいた。鼻を突く異臭がする。
「死臭だな」
日々野はそうつぶやくと、ポケットから出したハンカチで、自分の鼻と口を隠した。
甲板の上には、うつ伏せにたおれた男女各1名の遺体がある。ハエがたかっていた。女の方は顔と服と背格好から一美だとわかったが、男は初めて見る