空川億里@ミステリ、SF、ショートショート

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空川億里@ミステリ、SF、ショートショート

自作のSFとミステリとファンタジーを掲載してます。お気軽にコメントしてください。批判的な感想も歓迎です。  SFはすぐ読めるショートショートも多数載せているので、隙間時間にでも! スターのハンドルネームで人狼もやってます。

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ミスティー・ナイツ(第1話 怪盗ミスティー・ナイツ見参!)

 (あらすじ)  近未来が部隊のサスペンス・ミステリー。怪盗ミスティー・ナイツが活躍する冒険譚です。  美山誠(みやま まこと)は、都内にある自宅のソファーでそっくりかえって存分にくつろいでいた。3階まである一戸建て。どこまでもやわらかな革張りのソファーに身を沈め、手には赤いシチリア産のワインを満たしたチェコ製のグラス。  窓枠に美しい彫刻を施されたフランス窓の外には、5月の太陽に照らし出されたピーカンの青空が広がっている。すでに例の世界的な感染症は収束してから何年も経過

    • ミスティー・ナイツ(第30話 惨劇)

       美山は口笛を吹いた。 「ありがてえ」 「元々粒島はバブルの頃に成金が島ごと買って、プライベート・リゾートとして使ってたの。そこを設計した建築家のパソコンのファイルからひっぱりだしてきたってわけ。あたしの好きな建築家で、以前からファイルの内容を盗み見て、楽しんでたの。彼のデザインした建造物は、どんな男よりかっこいいし」 「そいつは結構」  美山は思わず爆笑した。 「で、そのプライベート・リゾートが何だって、悪党共の巣窟になってんだよ」 「よく言うよ。あたしらだって悪党じゃない

      • ミスティー・ナイツ(第29話 敵地潜入)

         星空がとても美しい。観てるだけで、吸いこまれそうな気がするくらい。美山はそんな夜空の下、ダイビングスーツに身を包むと、海に潜って島に向かった。   海夢と釘谷も同じ姿で一緒に泳いだ。 浜辺にたどりついた3名は暗視スコープを顔に装着した。周囲は漆黒の暗闇で、島にある建物に、わずかの明かりが見える程度だ。  聞こえるのは、浜辺に寄せる波の音だけである。どこかからひょっこり幽霊やゾンビが出てきても、おかしくないようなシチュエーションだ。  潮の臭いが鼻をくすぐる。こんな状況じゃな

        • ミスティー・ナイツ(第28話 ダーク・タイム)

          残り7名の潜水艦乗りが衣舞姫と共に島に残る。 フォルモッサが再び襲われる可能性があるので、守りを固める必要もあるし、敵の攻撃で破壊されたあちらこちらを修復する作業も残っていた。  美山はジェットヘリで本州に戻る3名の労をねぎらい、当初の約束を上回る報酬を退職金として、振りこむのを約束した。  島にあった金は全部何者かに持ち逃げされたので、東京にいる経理担当のメンバーから報酬を振りこんでもらうようスマホで手配する。  ちなみに東京の経理担当の人物は、美山がミスティー

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        ミスティー・ナイツ(第1話 怪盗ミスティー・ナイツ見参!)

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        • ミスティー・ナイツ(note創作大賞2024に応募)
          30本
        • note創作大賞2024オールカテゴリ部門応募の掌編集
          11本
        • ガタリアの図書館で
          2本
        • ショートショート集(note創作大賞2023に応募)
          40本
        • (SF小説)荒野.jp
          3本
        • (SF小説)女子会は、終わらない
          2本

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          ミスティー・ナイツ(第27話 別れの果てに)

           美山は彼女に声をかけた。愛梨が振りむく。ジェットヘリは、機銃の狙いを彼女に定める。  美山はマシンガンをヘリに向けるが、敵機の方が一瞬早く機銃を掃射し、愛梨の体を蜂の巣のように変えてしまった。  美山は激しい怒りのために叫び声をあげながら、機関銃をヘリのコクピットに撃ちこんだ。やがてキャノピーに穴が開き、爆音と共に、空中で四散した。  爆発音が、まるでけだものの最後の絶叫のように聞こえた。  美山は愛梨の名前を絶叫しながら、そばに駆けよる。ヴィーナスのように美しかった彼女の

          ミスティー・ナイツ(第27話 別れの果てに)

          ミスティー・ナイツ(第26話 反撃の行方)

           反射的に目を覚ました美山は本能的にベッドから床に転がりおち、その下にもぐりこむ。どこか遠くで銃声がする。  そう思った瞬間すぐ近くでも機関銃の恐ろしい音が鳴り響き、同時に部屋のアルミサッシが粉砕された。 (一体、誰だ? ここは、仲間しか知らない島なのに!)  そう考えるよりも、動く方が早い。美山は枕元にある暗視スコープを顔にはめた。  そして、いつもベッドの下に置いてある短機関銃МAC10、通称イングラムを手にすると、床をはいつくばるようにして、廊下に出る。 ショートマガジ

          ミスティー・ナイツ(第26話 反撃の行方)

          ミスティー・ナイツ(第25話 意外な銃声)

          「おれを人質に、身代金でも要求するのか?」 「いいや。おれ達は営利誘拐はしない主義だ。あんたを仲間が人質にとったのも、あくまで逃亡するためで、現金も王冠も手にした以上数日以内に帰ってもらう。それまでは、ここでゆっくりしてくんだな。飯は日に3度持ってくる。トイレと風呂は中にあるから、それを使え。以上だ」  それだけしゃべると、2人はそこを出ていった。頑丈そうな金属のドアは、再び外から非情な音を立てて施錠される。思わずドアを足で蹴ったが、自分のつま先が痛くなっただけだった。   

          ミスティー・ナイツ(第25話 意外な銃声)

          ミスティー・ナイツ(第24話 美しき島フォルモッサ)

           南洋の青い空を飛ぶスカイ・カーの眼前に、小さな島が見えてきた。フォルモッサである。ここは日本の領海内だが気候的には熱帯で、美山が偽名で合法的に購入したのだ。  もっとも地球温暖化ならぬ地球熱中化の影響で日本の熱帯化がじわりじわりとだが確実に、ホラー映画に登場するゴーストよろしく現実化してるので、やがては全国的にハワイみたいな気候になるかもしれなかった。  やがて島は徐々に大きく見えてくる。真っ青な大洋に浮かぶ、緑の宝石のようだった。美山の脳裏に、その島の情景が浮かぶ。どこま

          ミスティー・ナイツ(第24話 美しき島フォルモッサ)

          燃えよ剣

          今宵は、司馬遼太郎の『燃えよ剣』を課題図書にしたzoom読書会に参加しました。再読でしたが面白かったです。 新撰組の土方歳三が主人公の小説です。土方歳三の型破りな人生を堪能しました。

          ミスティー・ナイツ(第23話 人質)

          「貴様一体……」 「今からおれが、あんたの主人だ。言う通りに動いてもらう。そこにある金を全部、車に積むんだ。あんたは人質だ」 「このままで済むと思うな」  明定の腹に、どす黒い怒りがこみあげた。眼前の男を、今すぐ殺してやりたい衝動が突きあげてくる。が、現実には明定の生殺与奪を握っているのは、目の前にいるイケメンだ。  それを思うと嵐のような憤りで、気が狂いそうになる。 「お前ら早く、車を1台用意しろ」  名札に『山下』と書いてある男は、警官に向かって怒鳴った。 「おれと現金

          ミスティー・ナイツ(第23話 人質)

          ミスティー・ナイツ(第22話 予期せぬ障害)

          王冠をまんまと盗られた花宮は、世界がガラガラと崩れるような、無残な気持ちを味わっていた。これで自分がクビになるのは間違いない。よくて左遷だ。  国立美術館の保安チーフとして、一般のサラリーマンとは比べ物にならないぐらいもらっていた高い給料ともオサラバだろう。家や車のローンは一体どうなるのか。  妻子や両親に、どう釈明すればいいだろう。花宮は眼前が真っ暗になるような思いがした。穴があったら入りたいとは、今の心境こそ、物語る言葉に違いない。            *  警備員の

          ミスティー・ナイツ(第22話 予期せぬ障害)

          ミスティー・ナイツ(第21話 王冠強奪?)

          「ミスティー・ナイツってのは荒っぽいだけの強盗団だと思ってたんだが、だいぶ様子が違うようだな」 「そのへんの、野暮な盗人と一緒にされちゃあ困ります。ぼく達は紳士でね。言わば怪盗紳士です。だてに日本のアルセーヌ・ルパンとか、現代のねずみ小僧とは言われてません」  とりあえず、目ざわりな警部補はかたづいた。後は地下で活動中のメンバーが、金庫を下から掘ってくれるのを待つばかりだ。                 釘谷は工事関係者が着るような作業着を着て、美術館の防災センターで業者に

          ミスティー・ナイツ(第21話 王冠強奪?)

          ミスティー・ナイツ(第20話 計画実行は順調かと思いきや……)

          (うまくいった)  爆発し、燃えあがるビルをミラーで眺めながら、釘谷は心の中でつぶやいた。彼は車の運転を続けながら、眠らせた警備員を交番の近くにある公園のベンチに降ろした。交番には警官の姿がある。  まもなくめざめるだろうが、そうでなくても警官が介抱するだろう。釘谷は再び雲村と車に乗り、ハンドルを握るとアクセルを踏んだ。車はわざと遠回りした後で、人気のない空き地にそれを放置した。  盗難車なので、そこから足がつく可能性はない。そしてそこから今度は歩きで、広田ビルの近くにあるホ

          ミスティー・ナイツ(第20話 計画実行は順調かと思いきや……)

          ミスティー・ナイツ(第19話 いよいよ犯行予告当日!)

          どんな大船も、どこで思わぬ氷山にぶつかるかわからぬものだ。そんな彼女の胸中を知ってか知らずか、時は刻々と過ぎてゆく。 天空に浮かぶ、真夏の南国の太陽が地球の自転に伴って西に傾き、やがて夕焼けが天と地と広大な海をオレンジ色に染めあげた。  瀬戸菜は自然が見せる壮大なパノラマにうっとりとする。次にここを訪れるのは、一体いつになるだろう。今度もし来る時は、願わくば休暇の時でありたいものだ。やがて天空の神様は衣装を直した。  いつしかオレンジ色のワンピースを脱いで、

          ミスティー・ナイツ(第19話 いよいよ犯行予告当日!)

          ミスティー・ナイツ(第18話 買収成功?)

          「会社なんて、他にもあるじゃないですか。1000万あれば、しばらくは勤めなくても食ってけるでしょう。消費者金融からの借金も、それで返せるはずですし」 「何でそんな、おれのプライバシーを知ってる!?」  桐沢の声が大きくなった。物の怪でも見るような目で、こっちを見る。 「事前に調べてますから。普通の消費者金融だけじゃなく、闇金からも借りてますよね」  桐沢が、穴のあくほど海夢を見た。しばらく2人の間を、気まずい沈黙が支配した。 「我々も、プロですから。その程度の情報を調べるのは

          ミスティー・ナイツ(第18話 買収成功?)

          ミスティー・ナイツ(第17話 警備増強)

          「よしてくれよ。おれはそんなタマじゃねえ。一生、けちなこそ泥でかまわねえ。イデオロギーだの思想だの権力だの、おれには無縁な領域だ」  美山は相手の申し出を軽くいなした。  一方釘谷の方も順調だが、西園寺もうまくやってるようだ。試験運転中の太平洋縦断鉄道に乗せてもらえるようになったのである。  七月七日は美山も西園寺達の手引きで鉄道に乗りこんで、一緒に現金強奪に加わる予定を立てたのだ。色々障害はあったが、おおむねうまく進んでいる。  後の問題は王冠をいかにして盗むのか。ミスティ

          ミスティー・ナイツ(第17話 警備増強)