【ホラー小説】 あじゅなみ様 ♯2『母(ナオコ)の場合』
娘は金魚を認識できないようだった。
それに気がついたのは、娘がようやく話せるようになって、おぼつかないものの会話が成り立つようになってからである。
「口をパクパクさせているのー」
「そうねぇ、かわいいわねぇ」
私は最初、金魚のことを言っているのだと思っていた。ダイニングテーブルの客席の前には水槽があり、そこには金魚がいたのだ。夫のタケヒコが買ってきたもので、赤色の立派な金魚である。
これを、娘は仕切りに『あじゅなみ様』と呼んでいた。
一度、あまりにも現実離れした話をする娘に、