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#SF小説が好き

SF小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

急上昇の記事一覧

伊藤なむあひ「鹵」

◆作品紹介  馬無山(うまなしやま、馬に乗らなくても登れることからその名がつけられた山)が噴火し、補修者(ぶっ壊れてしまった世界を補修する者たち)も、オルタナ力士(ぶっ壊れた世界に順応して生きる者の総称)も皆、黒焦げ骨付き肉と化した。つまりジ・エンド(おしまい)だ。神が不在(いない)のだから仕方がない。じゃあ、マチ子は? マチ子は肉全般が嫌いだった。が、嫌いな食べ物を食べることで魂がより高いレベルに達する(実際、鳩にちくわをやるおばさんは鳩の魂をそうしているわけで……)こと

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石の歌う森(第6回)~星は風にそよぐ イシアス篇~

「わあ、素敵なお家!」 セシルは歓声を上げた。興奮して思わず自分でもびっくりするような大きな声が出てしまい、恥ずかしくなって口を押さえた。  視界に入るどの大樹も、広いバルコニーまで備えたツリーハウスを腕に抱いている。まるで物語の世界のようで、セシルは胸を踊らせた。  セシルの声を聞きつけて、目の前の家の人がバルコニーへ出てきた。カイトさんがさっと右手を挙げて合図すると、その人はうなずいて家に入っていった。セシルが怪しい者ではないことを、合図で知らせてくれたのだろう。 「こっ

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文庫版「三体(Ⅰ)」 ―読書感想文

中国SFの隆盛が伝えられて久しいですが、中でも傑作と名高いのがこの「三体」だと思います。っと言いますか、もはや「中国SF」として括ってしまうのも勿体ないっ! 2024年6月現在、文庫版としては「三体Ⅱ 暗黒森林」までが発行されています(読了済みです)が、まずは物語の始まりになる「三体」について感想を残したいと思います。 読了後の第一感久しぶりに「ザ・SF」を読んだな〜という感じです! 10代で初めてグレッグ・イーガンの「ディアスポラ」や「順列都市」を読んだ時のような、「??

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第74話「無数の因果」

  *  ――世界は再生する――。   *  ――たとえ、これが夢だとしても……。  ……意識が、覚醒していく――。 「――チハヤ、朝だよ」 「んっ、んーっ……誰?」 「チトセだよ、忘れてるわけないよね?」 「チトセ……?」 「ユリミチ・チトセ……一卵性双生児の双子でチハヤの兄だよ」 「あれっ? チトセって男だったっけ?」 「はあっ? 頭おかしくなった? 百合道千斗星だよっ! 百合道千刃弥くん?」  目を凝らす……オレと瓜二つな男の娘が目の前にいる。

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神様?のおはなし㉓

↓シリーズはこちらから そして、とうとう家には夫婦二人きりになる日が来た。 下の子の時は少し慣れて、笑顔で送り出すことができた。  二人きり。 何を話せばいいのだろうか。 静かに、テレビの音が響いている。 「長かったね。子育て楽しかった?」と聞かれた。 「楽しかった。色んな事が。ありがとう。」と伝えた。 顔を見ると泣いていた。 一緒に泣いた。 なんとなくの喪失感を涙で洗い流して、ゆっくり明日から何をしようか考えた。 一生会えない訳では無いのだから。 少しずつこ

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【解読不可能の推理】迷宮百年の睡魔

 『女王の百年密室』からかなり時間が経過して読了。  『wシリーズ』と『wwシリーズ』を既に読んでいると、舞台になった場所やミチルやロイディがどうなったのか知っているので、切ない気持ちにもなります。そして絶対的な力は実は「操られている」という事実。  殺人事件のトリックですが、正直読者が解読するのは不可能。過去の世界から新しい世界に小説が移動するような、もっと言えば生まれ変わるような感覚に陥ります。  百年シリーズは「赤目姫の潮解」で終わりますが、生まれ変わった内容でど

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文学トリマー【毎週ショートショートnote】

俺は文学トリマー。持ち込まれた文章の余分な部分を削り、より読みやすく見た目も美しく仕上げる仕事だ。 依頼者の指定により、文章を読む対象者好みになるように仕上げている。 もちろん自分の名前が表に出ることはない。 作品の重要な部分を担っているが影に潜んでいるのもクールだろ? とはいえ、最近は依頼が減っている。 物書きが減っているわけではなく、むしろKindleなど自分で出版する人が増えている時代だ。 新たな顧客を探すため俺は文学フリマ東京38の会場に訪れた。 二千を超えるブース

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第72話「最後の切り札」

  *  ――オレは宇宙の中を漂っていた。  目の前にいるのは、真の敵。  薔薇世界の住人が真に倒すべき敵であると認識していたオレだが、それは違う。  新人類という存在は、オレたち花人類を利用して新たな宇宙をつくろうとしていた。  でも、その必要はなかった。  なぜなら新人類はオレたち花人類を騙していたからだ。  宇宙をつくるということはミクロコスモスである人間をすべて内包するマクロコスモスに拡張するということになる。 「一は全、全は一」という宇宙のあり方を示

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【短編SF小説】生命ロボット

 筆者の幼馴染の一人は機械いじりが好きで、車の故障を直す仕事では飽き足らず、ついに工場を設けて日々発明に明け暮れるようになった。昔から特に仲が良いというわけではないのだが、節目節目に呼びつけられ、発明を見せられる。彼の発明は独創的なものが多く、全く売れない。売れたとしてもマッドサイエンティストが参考として高値で買っていくくらいだ。  この前なんか、体を一秒だけ時間を巻き戻す銃というのを作っていた。一発撃つと一秒待たないと二発目が打てないという仕様のためか、若返ることは出来ない

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第71話「創造神なる新人類――スカイ・コスモス・ワールドエンド(世終空《ヨツイ・ソラ》)」

  *  ――クライマックスは、これからだ。 「リーダン、転移を頼む。新人類のもとへ行く空想の箱は存在するんだろ? その空想の箱で転移してくれ。そうしなければ、おまえたちに命はない。無限の攻撃が、おまえたちを襲うだろうな」 「俺が、それに従うと?」 「だったら無理やり、その空想の箱を奪うだけだ。そして、オレたちは新人類のもとへ行き、新たな世界を創造する」 「俺が……俺たち薔薇世界の人間が生き残るためには、その方法しか存在しないんだな?」 「そうだ。無駄口を叩いてい

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第75話(終)「LSD――リリーサイド・ディメンション《Lily Side Dimension》」

  *  ――オレは今、最終エリア――魔王城の中で魔物との戦闘をおこなっている。 「うらあああああぁぁぁぁぁぁ!!」  魔王城に潜む目の前の魔物――スライム、ゴブリン、ドラゴン……。  多種多様な怪物たちがオレに襲いかかってくる。  オレは魔物たちに向けて手を構える。 「はあああああぁぁぁぁぁぁ!!」  空想力。  フラワーデバイス・オンライン《Flower Device Online》に存在するプレイヤーをまとう力である。 「ピギイイイイイィィィィィィッ!

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第70話「LSD――超越」

  *  ――本番は、ここからだ。  アリエルがいなかったら、この戦いには負けていた。  アリエルの心器である風玉の指輪が破壊され、五闇の指輪によって修復されなければ、オレが風帝の意識に飲み込まれることはなかったし、無限ループの経験値アップをおこなうことができなかった。  なにより、オレはアリエルを選ぶ運命は過去も未来も変わらなかったという事実を知って、点と点が線によってつながる感覚がオレの中に芽生えた。  過去も未来も存在しないんだ。  そこに現実があるだけだ。

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第69話「無限の輪廻」

  *  ――本題は、ここからだ。  アリエルは断罪の壁で戦闘している銃士たちの後ろにいた。 「わたしは風のエルフです。なにもできないわけがない。今までウィンダさまにされたこと……それはわたしの力を制御するためのもの。つまり、ウィンダさまはわたしに嫉妬していたのです。それを知らずにわたしは……自分を信じ切れなかった。――わたしはチハヤお姉さまに教えてもらったのです。わたしはわたしを信じていいんだって! だから、わたしは呪縛の鎖を解き放してみせます!! チハヤお姉さまとの

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今こそ読もう。SF小説はコスパ最高のリスキリング。

リスキリングで、搾取されてませんか?リスキリング、って最近よく耳にしますよね。 試しに「リスキリング おすすめ」で検索するとこんなリストが出てきます。 ITスキル マーケティングスキル データ分析 情報セキュリティ コミュニケーションスキル 英語スキル 確かにこんなスキル持ってたらいいですね。 でも何となく違和感もあります。 「こんな職種にはこんなスキル」みたいなものがパッケージング化されて、労働者を企業へ売り込むための下処理をされているような感じがするんで

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第73話「世界の夜明け」

  *  ――麻薬であるLSDを大量に飲まされた後遺症によって、すべての感覚があいまいになり、自我を保てなくなった遊里道千早。  それが遊里道千早の反逆へとつながり、世界分割心器――百合の世界を生み出し、男と女の性別を持つ者を分割するに至った。  それが百合世界の歴史に記された百合暦XX年の記録である。  その記録は時間とともに湾曲していき、やがてリリア――遊里道千早のおこなってきたことが素晴らしいと言われるようになったのは、ある意味、洗脳と同じであることに気づいたの

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【SF小説】兵器物語 -序 - 新宿アリーナ ③

5.煉獄の塔  終わった……  不確定フィールドからの脱出を阻まれ、完全に閉じ込められたのだ。  都庁本庁舎の壁面にめり込んだまま、僕は迫ってくる敵の巨大クーガーを見下ろしていた。よく見ると、その腕は付属肢も含めて六本ある。まるで二本足で立つクモの怪物だ。こいつは本当に見た通りの生物機械なのだろうか。  僕にはまだ、敵が不確定フィールドの効果でいびつに巨大化したクーガーに見えていた。  強力そうな鉤爪と、付属肢が支えるこれまた巨大な多目的機能弾発射装置をひけらかす

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LSD《リリーサイド・ディメンション》第62話「白百合の玉」

  *  ――薔薇の牢獄により、閉鎖された空間に閉じ込められたオレたちは抵抗する力を失っていた。  薔薇の鞭によって手足を拘束されるオレは心器である白百合の短剣複数本を使って鞭を切ろうとするが――。 「――薔薇の短剣」  リーダンが開錠する心器である薔薇の短剣により、白百合の短剣の攻撃を防御する。 「そのまま、動くなよ」  リーダンがオレに近づいてくる。 「チハヤっ! 逃げてっ! チハヤっ!!」 「万里奈、おれとの戦いに集中しろ。おれから逃げるな」 「くっ…

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書きかけて飽きた小説の出だし

宇宙!コロニー! バイオ!メカ! 変身!戦闘! そして…おいも屋さん!? 世は宇宙の時代。 人々は母なる星、地球を見限り宇宙へと旅立った。親元を離れる独り立ちの時代だ。 巨大な筒の内側に地球を模した環境を作り出し、そこに住む人々は今日も地球に居た時と同じ生活を続けている。 せっかく地球を出たのに、やることは地球の模倣。なにやってんのって感じだが、これがここの人々の生活だ。 ここは第4宇宙コロニーの52ブロック。コロニー中心部の栄えた場所からはほど遠い場所に、田舎のような

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AIはフィクションで真実を語るのか?[Halcination_paradox]

「生成AIの回答には時々ウソが混じる」ということを説明する際に「Halcination」という言葉が使われます。「ウソ」と「ウソをつく行為」の両方に使われます。詳しいことは専門サイトにお任せするとして、それを逆手にとってみたというのがこの小説。つまり、 AIと架空の話をすると真実が混じるのか? ということです。結果については、皆さんがご判断下さい。 「AIのやつ、上手くトンデモ話に合わせてる~」と思われるのか、それとも「マジレスしちゃってるよ~」と思われるのか。。  そこに

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2024年5月24日 「生きている」店を残すには

カレンダーを見て驚きました。 「おいおいおい」と声が出ます。 なんたって、あと1週間もすれば、5月の末日です。 気づけば1年の半分にリーチがかかっているというわけです。 「月日は百代の過客にして、行き交う人もまた旅人なり」とはよく言ったものです。 昨年の今頃とは、ずいぶん変化した地点にいるような気分です。 自分も、他人も少しずつ、でも確実に変わって行っています。 この変化は止められないのだな、という言葉が頭に浮かぶことが多くなりました。 子どもの頃から当たり前のようにあった日

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