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夢とうつつの間

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私、紅茶の記憶とも願望ともつかない、エッセイとも小説ともつかないなにものかたち。
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記事一覧

海の街からの手紙

 書き出しの言葉を書いては消し、書いては消ししています。久しぶり、では馴れ馴れしすぎると…

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祖父との思い出

 あなたも所帯を持つのだから、いいかげん、うちに置きっぱなしの荷物を整理して頂戴。  春…

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あなた

 あなたと普通の話がしたい。パンを買うなら何パンを買うのか、カレーパンとあんパンは外せな…

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机上の恋の話

 今から話をするのは高校一年生の時の淡い恋についてである。  私の出身高校は定時制高校が…

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Rくんの話

 そんなんじゃないよ。君と私は今の距離感が丁度いいんだよ。  初めて会ったのは、旧校舎の…

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乗り鉄というほどでもない話

 二泊程度の旅行なら、キャンバス地と言うにはもう少し毛羽が長い、アニエスベーのミニボスト…

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Tさんとのこと

 あ、この人と絶対恋に落ちる。  大学三年、自分が入るゼミが決まり、同じゼミの四年生がやっている教室に全員で顔合わせしに行った時のことだ。Tさんは長方形のロの字型テーブルの一番奥、議事長のような位置に座っていた。サラサラの真っすぐな髪、いかにも切れ者そうな光が宿る、二重の大きな裸眼の瞳。癖のない直線の眉も少し薄情そうな薄い唇も、全てがドンピシャにタイプだった。  とはいえ、三年、四年で合同ゼミをやることは滅多になかった。ゼミの教室は同じで、四年生が終わったすぐ後に三年生が