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#noteで小説を書く人 | 久藤あかり

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小説・絵本、物語、文字の個展です。ゆっくり、お話の世界を楽しんでみませんか?
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小説を書くコツ 素直に綴ることなのかな 色も飾りもつけずに まずは原稿用紙10枚くらい 試しに書いてみる 恥ずかしくて穴を掘って 入りたくなるような文 それを過ぎて だんだん作品になっていくのかな?

電車に乗って会いに行く

遠くにいる恋人の家に行く。 さてみなさんは、旅行の荷造り得意でしょうか? わたしは大の苦手で、必要なものしか入れていないはずなのに、リュックはどんどん大きくなっていく。 出発の日。 ずっしりとしたリュックと、貴重品を入れたショルダーバッグと手土産を持って、よたよたと最寄駅へ向かう。 リュックが重すぎて、まるで大きな甲羅を背負っているみたい。 ほんと、なんでこんなに重たいんだろう? 亀仙人の修行にこんなやつあった気がする。 わたしはブルマの立ち位置のほうがいいんだけど。

人に傷つけられた作家が書けなくなるのは当然なんだよ 人を嫌いになった人間がどうやって人のために面白いものを書けばいいっていんだ 順序が違うだろ 傷を癒して人をもう一度信じられるようになってから、それからやっと書くんだろ

レモンの木漏れ日(回文)

大概せこい。個性がいた。 たいがいせこいこせいがいた 求愛ハウス栽培。刺す、奪い合う雪。 きゅうあいはうすさいばい さす うばいあうゆき 対面。薄ら暗すぎて、無敵すら暮らす運命だ。 たいめん うすらぐらすぎて むてきすらくらすうんめいだ 肉のみ余酔。アンタが花壇愛す黄泉の国。 にくのみよすい あんたがかだん あいすよみのくに 余談の尾鰭も、木漏れ日を呑んだよ。 よだんのおひれも こもれびをのんだよ

ツツジ

夜明けが訪れ、眠れずにベッドから起き上がるしかなかった。今日もまた忙しい一日が待っている。最近、日々ほぼ同じです。もう眠れないことを悟り、バスルームで冷たい水で顔を洗います。よし、頭もおきました。キッチンに足を運び、ハチミツ紅茶を淹れる。その色合いは深みに満ちていて、口に含むとその味わいは優しい。 美しい朝日を眺めたい。手にはコップを持って、庭の椅子に身を預ける。冷たい空気が私の頬をなでるが、それは気にせずに。庭を眺めながら、目に飛び込んでくる光景に感動する。それは星空の名

ことばと花と|詩

なにかが生まれてくるときは ないしょにしておきましょう 話すと ことだま が逃げるから 蝶々みたいな軽い翅で そうでなくても そよ風で吹きさらわれそうな 幽かな《気配》だもの (ことばにすると変わってしまうから  どうぞ私を書かないで) ...そんなふうに お願いされてしまうけれど でも、つかまえたくて書いてみる だけど時には 蝶々をおさめる ことばの籠を編む手を休めて 声のない花にでもなったみたいに 静かに 静かに 蝶々を花びらに休ませたまま ただ ただ

ラブレターと爆弾

手紙を書くのって、案外難しいね。もう5回も書き直しているよ。君がこれを読んでいるということは、この手紙は書くことに成功した貴重な一枚ということになるね。どうか最後まで読んでほしいな。 僕と君が離れ離れになってしまってから、もう1ヶ月近くが経つね。隔離されている場所というのは、どんな場所なのかな。清潔で、やさしい人がいて、おいしいご飯が出てくる場所だといいな。そうでなきゃ、僕は君を手放してしまったことを、後悔してもし尽せないよ。 なにもかも、ナノマシンのせいだ。僕はそう思う

感謝

最高の人生の見つけ方を観た。 「人生に喜びを見つけたか」 「他者に喜びを与えたか」 という言葉にイエスと言える生き方を したいと思う。 私は最期の日がいつなのか分かっても その日に特別なことをしたくない。 空が綺麗だと感じたり 自分を大切に思ってくれる人に感謝したり 「普通」といわれていることに感謝する。

午前二時の魔法│詩

赤いソファに並んだ二人 音楽の話しで一日が暮れてゆく スピーカーから流れるものとは裏腹に 静かな時間がゆっくりと過ぎて 時計は見ないようにする二人 明日のことなど今は忘れていたいから この部屋の時間が止まるまで 世界が小さくなる魔法をかけたよ 二つのスピーカーに挟まれて待つ 擦り切れるほど聴いた名盤たち 小さな部屋に満ちた 優しいコーヒーの香り まだ何もおきない二人の午前二時 2024/5/25

なにもかもが透明な│詩

少し錆びたバイクの ヘッドライトに映る美しい青の空 瞬きとともに呼吸と時間が止まる 僕らの頭上の木々や白雲が 嘘や偽りなくすべて映し出される 苫小牧の夜明けの光 小樽の運河の灯 札幌の作り込まれた街のカタチ 移り変わる光とともに日常が 流れて消えて透けていく 富良野の緑の風 稚内の日暮れの藍 網走の枯れた海 走る風に煽られ飛ばされる 身体に纏わりついた幾重もの衣 釧路の湿った霧 根室の侘しい波しぶき 十勝の冷たい山肌 なにもない空っぽの人を乗せ 軽々と道を駆ける

[詩]流れ星

すべては変わってしまう、と気づいた時 僕は冷たい奴になった 大切な人が次の瞬間いなくなっても 夜通し泣いて、泣いて、泣き尽くして 空が明るくなって、僕はまた、すました顔してる  いつか訪れる終わりが今だっただけ ぽっかりできた日向にとり残されたマグカップ コーヒーはすっかり冷めている 冷めた僕が強くて好きだった きみに 失うことが怖いと気づかされた時 僕の心は暖かさを知った お揃いのマグカップは買わなかった あなたが隣にいた証をどこにも、ない きみの目と僕の目が交

魔法日記をつける

そういうわけで、君は魔法使いの弟子入りをしたいということだけれど、まず君は魔法という言葉をどんな風に捉えているんだろう。 目に見えない力で何かを叶えることだったり、奇跡を起こすようなことだろうか。この世界のことに正解はないから、どんなものだっていいんだ。 もし僕から一つヒントを出すなら、魔法とは「思うように心を変容させる技術」というように定義される。その心とは、自分のものでも、他人のものでもいい。 例えば、自分のことを好きになれば人に好かれるとか、お金持ちにはお金持ちの

夢でまた逢えたら~18年一緒に育った猫リリの話~

昨日、こんな夢を見た。 私は、ぼんやりと実家のベランダでひなたぼっこをしている。 ぽかぽか陽気で少し眠かった。 夢の中で眠いって何だかおかしいけど、眠かった。 ごろんと転がると一匹の猫が私の顔に近づいてきた。 しっぽが私の顔に触れてくすぐったかった。 私は猫を自分の胸元に抱き寄せた。 猫は抵抗もせず、私の胸元にちんまり落ち着いた。 リリだった。 リリの大きな黒目は私をきょとんと見つめていた。 「リリ……?」 リリは頷くように、あごをぺったり私の胸元にのせ

#46[300字]6月,夏の作品を書いてみない?,8Links[短文挑戦中]

申し送りが終わって、委員会のあと。事務課に呼び止められて立ち止まる。ここでいいかしら?とエレベーターの前で彼女の話を聞いた。ちょっと、降りようか。薄暗い外来の待合室の小さなテーブルで、少しだけ話し、連絡先を渡した。階にあがり、今日は少し落ち着いてる? とよぎった瞬間。 「で、で、でたーー!!」 ナースステーションにもう一人の珍客が。 彼はめいっぱい足音を立てず、声も立てず、身振り手振りで、その慌てようを全身で現しながら駆け寄ってきた。 「今度はなあに?」 「しゅ、主任