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ふみのわ

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文芸部「ふみのわ」の文芸集です。 顧問のわたし、文(ふみ)先生が定期的に課題 "ぶんげぇむ" を出しますので、部員の皆さんはしっかりと課題に取り組んでくださいね! もちろん部員で… もっと読む
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第7回文芸課題"ぶんげぇむ"まとめ

みなさんお久しぶりです!文(ふみ)先生です。 相変わらずスローな更新でごめんなさい・・・!部員のみなさんはいかがお過ごしでしょうか? 今回もかなり時間があいてしまったのですが、遅ればせながら文芸部『ふみのわ』による文芸課題、"ぶんげぇむ"、第7回をまとめさせていただきます🌿 ▼前回、第6回目のまとめはこちらから さっそく第7回文芸課題“ぶんげぇむ”についてまとめていきます! 第7回文芸課題“ぶんげぇむ”お題についてまずはお題について振り返っていきましょう。 ◆お題

【小説】Stay Youth Forever

「全部無駄だったな」 最後の歌詞は確かそうだった。高校時代の友人たちに連れられて来たライブハウスでその歌詞を歌っていたのは、また別の高校時代の友人であるアイツだった。 ライブの事はよく覚えていない。興味がないと言うより、見ていられなかった。音響だけはキッチリと整えられたその空間で鳴り響いていた音楽は、アイツを含めた今も変わらないメンバーが、高校時代に文化祭で演奏していた音楽と何ら変わりはなかったからだ。 楽器よりも声の通らないボーカルのアイツをはじめ、演奏に一生懸命で下

【小説】置かれた場所で咲きなさい ~勇者一行の日常

「全部無駄だったな」  思わずこぼれた俺のつぶやきに対し、傍らを歩く賢者が、 「人生に無駄なことなんか一つもありませんよ、勇者殿。失敗も遠回りも、すべてはあなたを成長させ、いつか輝かせるための、貴重な礎……。『あの日、あんな経験をしてよかった』と思える日が、きっと来ます」 と、さわやかに答えた。  もし両手が空いていたら、俺はいら立ちのあまり髪をかきむしっていたことだろう。 「なんか良い感じにまとめようとしてんじゃねーよ。何日も準備してドラゴンに挑んだのに一瞬で負けた

第8回文芸課題"ぶんげぇむ"発表します

お久しぶりです。文(ふみ)先生です。みなさん、先生がいない間も創作活動に励んでいましたか? 大変長らくお待たせいたしました・・・!相変わらずスローペースにはなりますが、文芸部『ふみのわ』の活動を再開します。 さっそく第8回目の課題を発表しますね♪ ◆お題:無駄からはじまる物語 ◆執筆ルール:  ・物語の一文目が「全部無駄だったな」のセリフからはじまる作品を作ってください。  ・小説/エッセイ/詩 などの形式・ジャンルは問いません。  例)「全部無駄だったな」彼は私に向か

ある命の記録

 「全部無駄だったな」  自分の部屋の本棚の前に立ち、彼はつぶやいた。  本棚には、物理学の書物が並んでいた。  そのうちの一冊、英文の学術雑誌を取り出すと、彼はそれをめくった。  彼は、修士課程までの六年間、物理学を専攻してきた。  その最後の年、英語で執筆した論文が、国際的な学術雑誌に採用された。  快挙だと、研究室は賑わった。  指導教授は、彼が博士課程に進学することを期待していた。  しかし彼はその道を選ばなかった。いや、正確には、選べなかった。  経済的な理由か

無駄を幸せに変えるために【無駄からはじまる物語】

“第8回ぶんげぇむ”参加作品のため、お題にそった記事ですが、内容は体験に基づく実話です。 =========================== 「全部無駄だったな」そうとしか思えなかった。夫の死後の悲しみのあとに襲ってきたのはどうにもならない虚無感だった。 これから背負わなければならない大荷物のことを想像するだけで重みと虚しさに押し潰されそうでいっしょに消えてしまいたくなった。 大荷物とは、夫の夢だった建築中のカスタムホームのことだ。 子どもたちが大人になりそれぞ

第6回文芸課題"ぶんげぇむ"まとめ

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 更新がスローになってしまい本当にごめんなさい・・・!そして同時に、部員や仮入部員の皆様からTwitterやコメントなどで温かいお言葉をいただき、本当にありがとうございました😭 今後もスローペースではありますが徐々に活動再開予定ですので、ゆるりと楽しみにしていただければと思います! さてかなり時間があいてしまったのですが、文芸部『ふみのわ』による文芸課題、"ぶんげぇむ"、第6回をまとめさせていただきます🌿 ▼前回、第5回目のまと

【小説】Oxymoron(オクシモロン)

梅雨。薄暗い体育館に幽閉されていたからか、雨上がりの夕暮れはこの世のものとは思えないほど美しく見えた。 僕は今日のホームルームを終えた後、一人で図書室へ向かう階段を登った。 一つ階が増える度に人の気配がなくなり、遂に誰もいなくなった五階に図書室があった。ドアを開けると、中には誰もいなかった。そして、窓から見える夕暮れの美しさにつられるように窓際の席に座った。 一人の時間が好きだった僕は、毎日ここで呼吸をすることができた。 参考書を開いて勉強をするフリをして、それを手元

明&暗のラスベガス

✎“ぶんげぇむ”✐ 参加作品 課題:「落ちる」「闇」「路地裏」 キーワードを見た瞬間に書くことが決まってしまう、憑依のパワー。 今回、浮かんだのはラスベガス! その昔、憧れの旅行先だった。ときを経て、その感覚がどう変性したかを記してみたい。 子どもたちが巣立ってからは、夫婦でよく旅をした。休暇型の旅は別として、旅の目的地は夫の出張先がほとんどだった。亡き夫は年に数回、各地で開かれる学術的な会議に出席する機会があった。おかげで米国内外問わず、出張先は旅先だった。 出張

第7回文芸課題"ぶんげぇむ"発表します

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 前回、第6回ぶんげぇむでは、『電信柱』『あだ名』『運命』『未来』『カラフル』を課題のキーワードとさせていただきました! ぶんげぇむ開始以降初めて、文字数の上限が10,000文字(!)、原稿用紙にして最大25枚分までOKとしました。 締め切りも普段より1週間長く設定しましたが、超大作・力作が続々と届きましたよ〜✨ ふみ先生と章子先生の都合が合わず第6回の顧問会議は遅れているのですが、待っている間にも課題を出して欲しい!という声も

桜が咲いている

 中学校からの帰り道、友達と時々「荷物持ち」をした。  ジャンケンをして、負けた人が、次の電信柱までみんなの鞄を持って歩く。  私はひとりで帰るときにも、次の電信柱……次の電信柱……というふうに、電信柱を見ながら歩いた。退屈しのぎだったのだろうか。今思うとよくわからない。  そんなよくわからないことを、大人になってからもやっている。  七年前に通りすぎた電信柱は「係長」。今は「課長」という次の電信柱を見ながら歩いている。  「課長」という電信柱まで歩いたら、今度は「次長」

第6回文芸課題"ぶんげぇむ"発表します

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 前回第5回ぶんげぇむでは、『ミモザ』『図書館』『ふたり』をキーワードに、色々なテイストの作品が集まりました! 今回のぶんげぇむは、これまでとはいくつか異なる点を用意しました……!変わったのは、「キーワードの数」「文字数の上限」「締め切り」です✨ いつもよりも余裕を持ってご準備いただけると思いますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね!もちろん、はじめての方もお気軽にご参加いただけます♪ さてお待たせいたしました!文芸部『ふみの

第5回文芸課題"ぶんげぇむ"まとめ

みなさんこんにちは。文(ふみ)先生です。 文芸部『ふみのわ』による文芸課題、"ぶんげぇむ"、第5回目となる今回は、6作品が集まりました! ▼前回、第4回目のまとめはこちらから 第5回文芸課題を提出いただいた部員・仮入部員のみなさん、ありがとうございました! 今回は、初めて、文字数の下限を1,000文字に設定してみました。今後も文字数を変更したり、思い切って長編などもやってみたいと思っているので、楽しみにしていてくださいね♪ さっそく、第5回文芸課題"ぶんげぇむ"につ

ミモザ

 図書室へ向かう制服の列。  私の足取りは重くて、心は落ち着かなかった。  「シーッ。静かに。」  先生は、制服たちを絨毯の上に座らせると、大きなテーブルにもたれかかった。先生の背から朝の光が差していた。  「今月のアクティヴィティの時間は、みなさんに図書室で研究をしてもらいます。自分で決めたテーマについて、ここにある本を自由に使って調べてください。」  制服は仲良しグループでかたまりながら、本棚が立ち並ぶほうへと歩いていった。  私は一人、何について調べてよいかわからない