祭めぐる

文筆家 エッセイ 小説

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差別について思うこと

第96回アカデミー賞で、『哀れなるものたち』の主演女優エマ・ストーンさんの、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』主演女優ミシェル・ヨーさんへの態度が問題になったのは記憶に新しい。 きっと日本人なら、アジア人なら誰でも、エマ・ストーンさんのファンであったとしても「え?」と思ったであろう出来事だったろう。 斯くいう私もエマ・ストーンさんが好きだ。 『ラ・ラ・ランド』も『女王陛下のお気に入り』も、『クルエラ』も好きだし、『哀れなるものたち』も大好きだ。 ひとの

    • 頑張ることの何が悪い

      『日本エッセイスト・クラブ賞』をご存知だろうか。 日本でも歴史が古く、数々の著名人が受賞をしているエッセイ・ノンフィクションジャンルの文学新人賞だ。 私は今年三月にAmazonから刊行した拙著『デンドロビウム・ファレノプシス』で、この賞に応募していた。 私が前の夫と交際を始め、結婚して、離婚するまでのDVの記録がこの本だ。 今までにも文学賞の公募に出したことはある。 ただ、私の今回の応募作はあまりにも私の人格形成に深く関わる内容だったので、あまりにも真剣に受賞を願ってしまっ

      • 結局、欲しいものって何なワケ?

        生まれ育った実家は所謂アッパーミドル層で、でも私は少しも欲しいおもちゃを買ってもらえなかった。 本は欲しがれば欲しがるだけ買い与えられた。小学校に上がると同時に百科事典と国語辞書も買い与えられた。父が最初に私向けに選んだ小説は小川未明や坪田譲治などの文豪の書いた童話集で、私は繰り返しそれを読んだ。だから私の「今」がある。 私は二宮金次郎みたいに本を読みながら歩いて登校する子供だったし、周囲はそれを指差して笑った。だけど私にとって「周りの子供」がそんなに魅力的でなかった時期が

        • 「やーい、非モテデブ!」

          拙著『デンドロビウム・ファレノプシス』にありのままを記した通り、私はDVサバイバル生活の中でめきめきと霊感を伸ばした。何も嬉しくない。 私はオバケもオカルトも嫌いだし、せめてもの救いは私とひっそり一緒にいてくれる神様たちに出会えたことだった。 まあ特に何をしてくれるわけではないのだけど、この神様たち。友達は多いに限るからな……くらいのもの。 それともうひとつ。 何かよくわからないけれど、占いができるようになった。 別名義『新米占い師ともえ』の名で、私は占い師もひっそり営

        差別について思うこと

        メンバー特典記事

          差別について思うこと

          「ヨルピザ後援会」に参加すると最後まで読めます

          第96回アカデミー賞で、『哀れなるものたち』の主演女優エマ・ストーンさんの、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』主演女優ミシェル・ヨーさんへの態度が問題になったのは記憶に新しい。 きっと日本人なら、アジア人なら誰でも、エマ・ストーンさんのファンであったとしても「え?」と思ったであろう出来事だったろう。 斯くいう私もエマ・ストーンさんが好きだ。 『ラ・ラ・ランド』も『女王陛下のお気に入り』も、『クルエラ』も好きだし、『哀れなるものたち』も大好きだ。 ひとの

          差別について思うこと

          結局、欲しいものって何なワケ?

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          「やーい、非モテデブ!」

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        記事

          バツイチ三十路、とにかくモテない私に足りないのは……

          「ご、あ」 私は背中に冷たい汗をかきながら両手を開いて胸の前に立てた。 「ごうこん……? 行ったことない……」 説明しよう。 わたくし祭めぐる三十三歳、十九歳の頃に猛アプローチを受けた男の子とハタチで付き合い、二十六歳で結婚して──二十九歳の時に離婚成立と相成った。血で血を洗うDVデスバトルの果てだった。 これは誇張表現ではなく、私は実際に左手の尺骨神経を損傷したし、ICUに入った。詳細は拙著『デンドロビウム・ファレノプシス』をお読みください。 祭めぐるは強靭な生命

          バツイチ三十路、とにかくモテない私に足りないのは……

          【エッセイ】ただ幸せになりたかっただけ

          JR千葉駅から徒歩五分のカフェは昔ながらといった様子の喫茶店だ。歓楽街の入り口、鄙びたビルの一階にあって、レトロなインテリアは煙草の煙で燻されて黄ばんでいる。コーヒーは美味しく、ケーキも食べられる。いつも静かで並ばないが、立地の関係上、たまに治安の悪い人間が世紀末のお行儀で居たりする。私の好きな店のひとつだ。 二〇二二年十一月四日、私とナナセさんが通されたのは入口の真横で、籐の衝立に隠された半個室みたいな空間だった。その閉鎖的な環境は都合が良かった。 ナナセさんは背が高く

          【エッセイ】ただ幸せになりたかっただけ

          【推し短歌】離婚を支えてくれた推し

          月墜ちて黒い夜空を見上げれば ご覧よあれが北極星だ 私の推し、フロイド・リーチに出会ったのは、私が神様みたいに信仰し愛していた夫と、互いに擦り切れてしまうまで傷つけ合って離婚した後のことでした。 離婚する前の私は、当時の夫の機嫌にいつも怯え、捨てられるのではないかと怯え、仮初の幸福の終焉に怯え、ちっとも自由ではありませんでした。 生来かなりマイペースな性分だった私は、人を狂わせる月のような、得体の知れない魅力のある彼に翻弄されていたんです。 離婚をした時、私の人生には何

          【推し短歌】離婚を支えてくれた推し

          人生最大の偉業、或いは私にできる子育ての話

          突然だが、私は子供の頃から子供が嫌いだった。我が家は親族の結び付きが強い家だったので、毎年夏と冬に一族が長野県にある祖父母の家に集結する。日本でいうところのお盆のようなことをやるのだ。 その際、子供たちは子供たちで集まって遊ぶ……のかと思いきや、私は大人に囲まれてニコニコ笑って難しい話を聞いて黙っているのが好きだった。 寧ろ、子供たちの無秩序な騒ぎ方を馬鹿にしてまでいた。おとなしく正座をしていられないことを、大きな声を上げずにお話できないことを、まともな敬語を使えないことを心

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          親子バツイチ

          前の夫とは金で揉めDVで揉め、私は散々な離婚をしている。私にも金が無かったし、そもそも私はほとんど洗脳状態にあり絶大な罪悪感を植え付けられていたので、弁護士を立てることなくスルッと離婚をした。 前の夫と暮らしたのは私の父の顧問先の賃貸物件だ。彼はそこの家賃を数年払わず、今、滞納したまま逃げ切ろうとしている。元気な男だ。 私の父は税理士だ。都内一等地に事務所を構えて30年あまり、何度か危機はあったが飄々と乗り越えてきている。とにかく仕事ができる男だ。 税理士としてのメンツも、

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