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NPOの組織づくりに役立つ5つのコミュニティ特性と4種のリーダシップ~スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。から学ぶ~

このnoteはスタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。を参考に書いています。

本書P84から、

日本で最も自殺の少ない街から学ぶ都市のデザイン

という章があります。

日本で最も自殺の少ない町である徳島県旧海部町のお話で、自殺の危険を抑制するコミュニティの特性と住民気質について研究した結果をもとに記載された内容で、とても勉強になります。

自殺を予防する5つの因子

その中でP86-P87に5つの自殺予防因子が挙げられていました。

1.多様性の重視
海部町の昔からある相互扶助組織には、よそ者、新参者、女性の加入を拒まず、多様な人々の参加を歓迎している。また、加入しない選択した人にも不利益をこうむらない。他地域の相互扶助組織では、地縁血縁を重んじて排他的な結束を固守しているのとは対照的です。

2.本質的な人物評価
年齢に関係なくのアイデアや能力が見込まれれば町の重役に抜擢したり、不祥事を起こした人も一度の目は許し、挽回のチャンスを与える。など一度の失敗が孫子の代まで忘れてもらえない他地域とは真逆です。

3.自己肯定感、有能感の醸成
一律に高度な目標を掲げてむやみに叱咤激励するのではなく、人間の能力は千差万別であることを認めたうえで、それぞれのアプローチで貢献することを求めています。

4.緊密すぎない、ゆるやかな紐帯
立ち話程度、あいさつ程度の付き合いをしている比率が高く、あっさりしたつながりを維持している。コミュニティが緊密であるほど、援助を求めることに抵抗が強まる研究結果があり、よりゆるやかな関係が維持されているコミュニティのほうが、弱音を吐くという行為が促されやすいそうです。

5.適切な援助希求行動
海部町は最もうつ病の受診率が高く、しかも軽症の段階で受診する人が多い特徴がある。うつに対するタブー視の度合いも高くありません。

こうしたことに加えて、車が通れない路地が多くベンチが点在している地形上の特徴があり、無意識に他愛ない会話を交わせるようになっていて、そこで困りごとの小出しが習慣化していたそうです。

NPOの組織づくりはどんなコミュニティをつくっていくか

この章は地域づくりのお話ですが、NPOの組織づくりにも役立つことだと感じました。

こんな状態の組織をこれまで見てきました。

  • 昔から運営に関わっている人だけで意思決定をして、若い人のアイデアを「それは昔にとっくにやって結果はでなかったわ」と一蹴する

  • 中途で入ったひとにいきなり難易度の高い仕事を割り振ってお手並み拝見をしてメンタルを病ませる

  • 職員同士の濃いつながりを求め、距離感を持とうとする人を薄情者としてはぶったり、評価を下げる

  • うつ状態の人を「あの人はもう終わりだ」と見限って要職からはずしたり、前職でうつ病だった人を雇わないように人事に指示する。

こうした組織は閉塞感がただよっていて、私から様々な情報提供をしても、なんだかんだいって拒否します。そして、担当者が辞めて伴走支援終了となるのがよくあるパターンです。

組織の雰囲気づくりに、今回挙げた5つのことはとても役立ちます。もっとリアルな表現をすると以下のことができるといいなと思います。

  • 理事を多様性のある構成にする

  • お手並み拝見をせずに組織を挙げてバックアップする(本人のみにまるなげしない)

  • 団体のビジョンの理解度と、関係性の濃淡を同一視しない

  • 過去・現在、うつ状態の人を能力ない人としてレッテルをはらない

そんなこと当たり前じゃないか。と思うかもしれませんが、第三者的に組織に入ると、その当たり前ができていなくて、あーあと思うことが多いです。

次に、P95から始まる

市民主導の地域創生を牽引する4種のリーダーシップ~雲南市のまちづくりを支える「土・火・水・風」の人

を見ていきましょう。

島根県雲南市は2020年時点で高齢化率40.1%と25年後の日本を先取りした状態でした。雲南市では2004年の町村合併を機に住民が主体となって地域づくりを行う自治の取り組みが始まりました。そこから活動が発展し、行政、住民、民間セクターが連携した多くの実践で成果を上げてきました。

詳しくは本書で読んで頂きたいのですが、取り組みとしてNPO業界では以前から話題になっていて、コミュニティナースの取り組みや、NPO法人おっちラボの活動をご存知の方も多いと思います。

4種のリーダシップ

私がNPOの組織づくりに役立つなと思ったのは、タイトルの副題にある4種のリーダシップのお話です。

スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。
P99から抜粋

それぞれの人は以下のように定義されていました。

1.土:コミュニティに根を下ろし、実践をする主体(実践者)
2.火:コミュニティを牽引し、切り拓いていく主体(指導者)
3.水:潤滑油となり、実践の伴走をしていく主体(調整者、中間支援者)
4.風:コミュニティの外部から新しい視座や知恵、資源を提供する主体(旅人、異端者)

スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。
P99-P100から抜粋

そして、挑戦の失敗の多くがリーダシップの欠如によっておきており、4種のリーダシップのバランスがとれると成果につながることを以下のように示唆しています。

ある地域では、「風」が革新的な取り組みを始めたものの、「土」の人との関係性が十分に耕されておらず、さらに調整役が不在であることで、効果の乏しい短期間の事業で終わってしまうこともあった。またある地域では、「土」と「風」の人はいたが、リスクをとって方針を示し意思決定を促す人が出てこず、検討段階のみで終わることもあった。(中略)雲南では「土」と「風」に加え、コミュニティを牽引する「火」、地域の潤滑油となる「水」がいた。

スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。P98-P99から抜粋

この4種のリーダシップは1人が1つではなく、複数を担う場合も多いそうです。私が伴走支援で経験した団体さんを思い浮かべながら以下のようなことを感じました。

火と風の代表さんの場合

NPO運営では、事業を始めた代表さんが「火の人」であることが多いです。ビジョンやミッションを持ち、コンセプト化することで多くの「土の人」の仲間を集めて行動にうつしていきます。

それに加えて独自の情報発信や、広報や寄付集めなどを積極的にする人は「風の人」の特徴も併せ持ちます。外部との関係性の中で新しいアイデアや機会を得ていきます。

火と風の代表さんはカリスマ性がありますが、外に開いているので、運営を担う土の人と対立する可能性があります。

この場合は、土を耕すことが大事で、代表さんと職員さんの思いが交わるような関わりを増やすことが伴走支援の方向性になります。私は「水の人」の特性を出して、かちこちの土を癒やして少し元気になってもらい、進む勇気を持ってもらうことが最初にやることになります。

火と水の代表さんの場合

現場の「土の人」の苦労や悩みを理解し、深い共感をして一緒に活動をしている場合があります。現場の葛藤や衝突を調整することに心を砕くといった「水の人」の特性があります。

火と水の代表さんは、職員さんから好かれますが、外に開いていないので、助成金申請が難しかったり、新しいアイデアがなかなか活かせず、発展や継続が難しくなりがちです。

この場合は、代表さんと職員さんの対話は十分されていることが多いので、私は「風の人」として新しいアイデアをお伝えしたり、助成金申請のお手伝いをすることで、うまくまわるようになります。

伴走支援者が発揮するリーダシップ

こう考えると、伴走支援者にもタイプがあると感じました。私は「風の人」と「水の人」の特性を持ち、団体さんに合わせてそれを使っていきます。

一方、何かしらの起業を経て伴走支援者になられた方、「火の人」の気質が強くなりがちなので代表さんのコーチ役として事業設計にアドバイスをしたり、「風の人」として事業に役立つ人脈や機会の提供を行います。

団体さんの特性と伴走支援者の特性がうまく組み合うと、足りないところを補いながら団体の成長につなげることができます。

さいごに

今回のnoteでは、書籍:スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビュー:コミュニティの声を聞く。を参考に、NPOの組織づくりに役立つ5つのコミュニティ特性と4種のリーダシップについて扱っていきました。

うちの団体ではどんなコミュニティ特性があるかな・・・

うちの団体の4種のリーダシップのバランスはどうかな・・・

こんなことが頭に浮かんできたのではないでしょうか。もし、風や水のリーダシップが我が団体では足りないなと思った団体さんは、是非ご連絡ください。

公式LINEとホームページからお問い合わせをお待ちしております。

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